経営層が行う年間100回の「対話会」で社員の心に火を灯す。「人財のAGC」が取り組む“はたらくWell-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
総合素材メーカーとして世界をリードするAGC株式会社。「素材の会社」として有名ですが、実は「人財のAGC」を掲げるほど、はたらく人にフォーカスした組織開発をしているのをご存じでしょうか。
今回、AGC株式会社のデジタル・イノベーション推進部でプロフェッショナル・ファシリテーターを務める磯村幸太さんに、AGC株式会社が社員の“はたらくWell-being”を実現するためにどんな取り組みをしているのか聞きました。
2011年入社。システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。多くの製品が世界シェアNo.1、2であること、創業の精神や社員の雰囲気からチャレンジする姿勢を感じたことで、入社を決めた。生産管理や国内営業、新規事業立ち上げ、DX推進、組織開発など、幅広い業務で多様な経験を積む。「はたらくWell-beingAWARDS2025」組織・団体部門を受賞。
年間100回行われるCEOの「対話会」!? AGCが対話を大切にするワケ
田邉
本日はよろしくお願いします! 早速ですが、磯村さんの「プロフェッショナル・ファシリテーター」という役職がとても気になりました。
磯村さん
よろしくお願いいたします! 確かに、なかなかほかの会社では見かけない役職かもしれないですね。
AGC株式会社デジタル・イノベーション推進部でプロフェッショナル・ファシリテーターを務める磯村幸太さん
田邉
どんなお仕事をしていらっしゃるのですか?
磯村さん
デジタル・イノベーション推進部という部署で、社内のDXの推進とともに仕事のあり方、やり方をも変革をしていこうというプロジェクトを推進しています。
その一環として、前社長が就任した2015年からCEOをはじめとした組織のトップ層が各拠点を回って、社員と直接対話する「対話会」の進行をしています。
私は専門職として、会のファシリテーターを任されているんです。実はこの対話会、CEOだけで年間100回を超えるほど盛んなんですよ!
田邉
ええ、年間100回も…!
磯村さん
手前味噌ですが、すごい回数ですよね。
田邉
わざわざCEOが拠点に行き、しかもファシリテーターという役職を設けてまで対話を重んじるのはなぜなんでしょうか?
磯村さん
AGCは1907年の創立以来、時代に合わせた新しい素材を世の中に提供し続けてきました。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実は素材の開発には10〜15年という長い月日が必要です。先行きが見えないなかで「これが世の中で必要になる」「これは将来需要がなくなる」という予測を立てることが難しいという事業の特性があります。
田邉
未来は誰にもわからないですもんね…。
磯村さん
そんな事業形態でも、それぞれの社員が個々の関心や興味を活かしてチャレンジをすることで、いつの時代も新しい素材を世の中に提供できるようになるだろうと私たちは考えています。
チャレンジの火種になるのは、社員一人ひとりの「エンゲージメント」。それを高める活動の一環として、CEO自ら現場に赴いて対話をしているんですよ。
AGCのカルチャーを語りつくした、2日間の「鎌倉合宿」
磯村さん
そういえば、対話会が発展して2019年に決行した「鎌倉合宿」もとても印象深いですね。
田邉
合宿! 対話会で、合宿までしたんですか!?
磯村さん
そうなんです。対話会が始まって3年がたった2018年は、前社長の任期の折り返しのタイミングでした。最初はこの活動にピンときていない社員が多かったものの、徐々に対話会の意義が浸透し始め、ポジティブな空気が流れ始めていました。
しかし前社長の任期が残りわずかになるにつれて、社員たちの間で「経営トップが変わると、前向きなチャレンジを応援する空気から、過去の空気に戻ってしまうのではないか?」と不安の声が上がるようになったんです。
田邉
せっかくいいムードだったのに、逆戻りしたらもったいないですね…。
磯村さん
そこで「この変革を一過性で終わらせてはいけない」と考える若手有志が集まり、社内のポジティブな雰囲気をキープするためにはどんなことができるか、話し合いが行われたんです。
そこで発案されたのが、イベントのジャックでした。
田邉
ジャック!? どういうことですか?
磯村さん
当時、CEO、CFO、CTOの経営層が若手社員に向けてチャレンジを鼓舞する、年に一度の大きなイベントがあったのですが、逆に若手社員が経営層に向けて「チャレンジしていける組織をどう考えているのか」と問いかけるイベントに変えたんです。
イベントはとても好評で、「社員がチャレンジできる組織について考えよう」という機運がさらに高まりました。
そしてその会をきっかけに、より深い対話を目的として2日間の「鎌倉“対話”合宿」を実施することになったのです。
田邉
どんな方が参加されたのですか?
磯村さん
年齢、性別、部署を横断した社員が50人ほど集まり、当時のCEO、CTO、CFOとAGCのカルチャーについてとことん対話しました。
田邉
経営層と2日間かけて対話するなんて、なかなかないですよね!
磯村さん
参加者みんなが真剣にAGCのカルチャーに向き合い、活発に対話が交わされましたね。
鎌倉合宿は対話会における、エポックメイキングな出来事だったように感じます。
挑戦の言語化にコミュニティづくり…チャレンジを具現化する仕組みづくりを徹底
田邉
磯村さんはファシリテーターとして数多くの対話会に参加していますが、会を実施すると現場にはどんな変化があると感じますか?
磯村さん
対話をすることで相互理解が生まれて、信頼関係が築かれるように感じます。
たとえば、直接会って対話したことのあるCEOが発表する経営戦略と、会ったことも話したこともないCEOが発表する経営戦略だと、受け手側が受ける印象はきっと異なるはず。
信頼関係が築かれることで、メッセージの浸透具合が変わったように感じますね。
「会ったことのないCEOよりも、対話して信頼関係が築けたCEOから聞く話のほうが、心に沁みますよね」
田邉
確かに社員の立場から考えると、対話をしたことのあるCEOから発せられるメッセージのほうが自分事として受けとめやすい気がします。
磯村さん
もう1つのメリットは、対話を通して自分のチャレンジしたいことを言語化することで、それが具現化しやすくなる点にあります。
「この拠点をこんな風に改善したい」「こんなチャレンジをしてみたい」という漠然とした思いを言葉にすることで、イメージが具現化し、社員の主体的なチャレンジが促進されるんです。
田邉
言葉にするだけで、一気に「やってみたい」という気持ちがムクムク湧いてきそう!
磯村さん
私たちは対話会でチャレンジに手を挙げた人を、CNAやその他有志団体につないで、実際の行動をサポートするような動きもしています。
田邉
「CNA」ってなんですか?
磯村さん
組織を横断した年間1万人以上が参加する有志のコミュニティ活動「CNA(Cross-divisionalNetworkActivity)」のことです。
予算を設け、興味のある分野の勉強会を自主的に開催したり、各拠点の見学会を実施したりもしています。
田邉
社員の自主的なチャレンジへのサポートが徹底されているんですね。
磯村さん
CNAなどの社員の自主的な動きが、経営に反映される事例もあるんですよ!
磯村さん
たとえば「素材のテロワールプロジェクト」は、とあるメンバーの「土地土地の異なる砂を使って、さまざまな表情を持つその土地独自の価値あるガラスをつくり上げてみては?」という発想から始まった有志活動です。
昨今、サーキュラーエコノミーに対する企業への要請が高まっていくなかで、土地ごとのガラスを生産し、その土地で循環させる取り組みに社内的な注目が集まり、「素材のテロワールプロジェクト」が「ガラスの循環プロジェクト」へ発展して、経営企画のサステナビリティ推進部の取組みとなったんです。
田邉
自分のチャレンジが経営を動かす可能性があるとは…! 社員の“はたらくWell-being”につながりそうですね。
最後にAGCさんの今後の展望を教えてください!
磯村さん
社員のはたらきがいのスコアは改善傾向にありますが、まだまだグローバル企業の平均と同等です。結果に甘んじず、よりスコアを伸ばして、“はたらくWell-being”を向上させていくことが目標です。
その結果、社員の内発的動機が高まり、事業そのものが社員のエンゲージメントによって支えられるような組織にできればと考えています。
パーソルホールディングス株式会社では、はたらくことを通じてその人自身が感じる幸せや満足感―“はたらくWell-being”を体現し、その先にある笑顔を社会のチカラに変えた方を表彰する『はたらくWell-being AWARDS by PERSOL』を毎年開催しています。
2025年は「ビジネス・行政部門」「スポーツ・エンタメ部門」「組織・団体部門」「新たな働き方部門」「FR(Future Generations Relations)部門」の5部門で、15名の受賞者・組織の表彰が決定したとのことです。
<取材=田邉なつほ/文=市川みさき>
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