

「日本の伝統×最新技術」で日本を代表するブランドに。goyemonの2人が考える“はたらくWell-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

今回紹介するのは、高校の同級生だった大西藍さんと武内賢太さんが2018年に結成したプロダクトデザインチーム「goyemon(ごゑもん)」です。「日本の伝統×最新技術」をコンセプトにプロダクトを展開しており、クラウドファンディングを通じて累計1億円以上の資金を集め、Makuake of the year 2019 GOLD賞を受賞しました。
「A BATHING APE®」「Snow Peak」「White Mountaineering」といった大手ブランドとのコラボレーションも実現。2025年には大阪・関西万博日本館のユニフォームにも起用されました。
無名からクラファン1億円突破まで、どうやって道を切り開いたのか? 革新的なプロダクトを生み出す2人の“はたらくWell-being”を聞きました。
【武内さん】1993年生まれ。東京都立工芸高校マシンクラフト科を卒業後、東京工芸大学芸術学部へ進学。卒業後はコイズミ照明株式会社商品部にて、企画・デザインに携わる
【大西さん】1993年生まれ。東京都立工芸高校マシンクラフト科卒業後、日本大学芸術学部デザイン学科へ進学。卒業後は家業であるデザイン企画会社で企画・製造・販売に携わる
大西 藍さん Instagram
武内 賢太さん Instagram
東京・渋谷。「日本の伝統×最新技術」でプロダクトを生み出すgoyemon
取材は、東京・渋谷にあるオフィス兼店舗にて。写真は、電子レンジ対応の切子グラス「Fuwan-浮碗-」

田邉
渋谷の店舗にお伺いしていますが、素敵な商品ばかりですね!まずは、goyemonがどういったブランドなのか教えてください。

賢太さん
goyemonは、「日本の伝統×最新技術」を融合させたオリジナルプロダクトを展開しているブランドです。

藍さん
代表的なのは、昔からある雪駄に現代のスニーカーの機能を掛け合わせた「unda-雲駄-」。
ほかにも、電子レンジ対応の切子グラス「Fuwan-浮碗-」など日本の伝統的な機能美を生かしつつ、現代のライフスタイルに合うかたちで商品をつくっています。
壁一面に、goyemonの代表的なプロダクト「unda-雲駄-」が並ぶ

田邉
雪駄といえば昔の伝統的な履物のイメージでしたが、ここまでオシャレになるんですね!

賢太さん
「unda-雲駄-」はスニーカーソールを組み合わせているので、ジーンズやTシャツといったカジュアルなファッションにも馴染むようにデザインされています。

田邉
これならサンダル感覚で普段から履けそうです!
コンペ受賞歴なし。無名の僕らだから辿り着いた「日本の伝統」

田邉
「日本の伝統×最新技術」がコンセプトとのことですが、なぜ「日本の伝統」だったんですか?

賢太さん
goyemon立ち上げのきっかけにもつながるので、僕と藍ちゃんの出会いから話しますね。
僕らはもともと、東京都立工芸高校のマシンクラフト科で出会いました。お互いモノづくりが好きで、3年間同じクラス。関心のあることも似ていたので、毎日のように一緒に過ごしていて。卒業後は大学、就職と別々の道に進みましたが、ずっと連絡は取り合っていました。
COO・コンセプターの武内 賢太(たけうち けんた)さん

藍さん
Appleの新製品が発売されたときとか、お互い「これは!」と思ったプロダクトを見るたびに「よくない?」とか「もっとこうしたらよさそう」って。
僕は武内と出会ったときから、自分にはない才能を持っていると感じていたので「いつかは一緒にモノづくりに携わりたい」って狙っていたんです(笑)。
CEO・クリエイティブディレクターの大西 藍(おおにし あい)さん

藍さん
ただ、当時の僕らはデザインコンペの受賞歴もなければ、認知度もありません。いきなり自己資金を投じて販売するのはハードルもリスクも高い。

賢太さん
そこで藍ちゃんから「クラファン使ってモノづくりにチャレンジしてみるのはどうかな?」と言われたんです。

藍さん
以前から、クラファンのプロジェクトやプロダクトが好きでチェックしていて。
その提案を受けた2018年当時、多くの支援を集めていた分野が日本の伝統製品でした。

賢太さん
高校がモノづくり系なので伝統製品の素晴らしさは知っていましたが、あらためて調べてみると、伝統製品には「必ず理由のあるデザイン」が施されていることを知って感動したんです。
たとえば、雪駄には左右の概念がないんですよ。

田邉
え? 靴なのに、左右がない?

賢太さん
はい、どっちを履いてもいい。それは、あえて左右を入れ替えて履くことで、靴底が均等に減って長く使えるようにするためなんですね。

田邉
へえ~! たしかにそれだと、履き癖が偏らないです!

賢太さん
そんなふうに、使う人の生活に合わせて長く使えるデザインになっていて。「この魅力をもっと伝えたい!」と思うようになりました。
とはいえ、今はライフスタイルや価値観が変わっていますから、「この伝統製品がいいよ!」だけでは魅力は伝わらない。
そこで、今の暮らしにあったかたちで伝統製品を再構築する「日本の伝統×最新技術」というコンセプトが生まれ、「unda-雲駄-」が生まれました。
仕事を楽しむためには「好き」だけじゃダメ。「好き×〇〇〇」

田邉
結果としてクラファンが成功を収め独立されましたが、不安や迷いはありませんでしたか?

藍さん
僕はなかったですね。両親が会社を営んでいたこともあって、自分の人生設計のなかに自然と“起業”があったんです。


賢太さん
僕は正直、不安でした(笑)。でも、信頼している藍ちゃんが「goyemonとしてやっていこう」と言ってくれたから決心できましたね。
クラファンに至るまで藍ちゃんとコンセプトを練って、プロダクトを何にするか、とにかく夢中で向き合ってきた。だからもし失敗したとしても、それすら楽しめるなって思いましたし、その気持ちは今も変わっていません。

田邉
「失敗すら楽しめる」と思えるほど、仕事に熱中できるんですね。

賢太さん
そうですね。僕らは仕事において、「遊びに本気になる」ことを大切にしています。
出会ったときからお互いモノづくりが好きで、「こんなプロダクトどう!?」ってアイデアを出し合うのも楽しかった。でも高校生のときはあくまで「遊び」だったんですよね。
ただ、仕事になった今でも、根っこにある気持ちは「遊び」のときとほとんど変わりません。藍ちゃんとするモノづくりが好きだし、だから納得いくまでアイデアを考え続けるし、デザインだって洗練させ続ける。よりよいプロダクトにするために、2人で議論し続けられるんです。

田邉
「遊び」に本気になることが、結果として「仕事」に本気になることにつながっている。

賢太さん
まさにです。よく後輩から、「同じように独立したいけど迷っている」と相談をもらうことがあるんですね。それは、熱中できることはあっても、「仕事にする方法がわからない」って悩んでいることが多いんです。
仕事はお金を稼ぐ方法の1つだから、「お金を稼げるほどのスキルじゃない」とか「お金をもらえるほどプロフェッショナルじゃない」という考えが不安につながるんだと思います。


賢太さん
社会人になるとどうしても、自分のキャリアと「仕事の内容」は切り離せないけれど、僕はいったん「仕事」という枠組みを置いて、自分自身が何万時間でも熱中できることや、ただ好きなことを考えてみるのがいいと思うんですよね。
それから、その熱中できること・好きなことで人の役に立つにはどうするかを考える。そうすると好きなことだから、必然的に仕事は楽しくなるし、苦役じゃなくなると思っています。

藍さん
たしかに。ビジネスって需要と供給だから、自分本位な「好き」だけじゃ自己満足だよね。「好きなことを仕事にする」というよりは、「好きで、人の役に立つことを仕事にする」って感じ。

田邉
そう思うと、好きで人の役に立てる「モノづくり」に熱中できていることが、お2人にとっての“はたらくWell-being”なんですね。でも、お2人のように、熱中できるものを見つけるにはどうしたらいいですかね…

藍さん
実際にやってみることですよね。
気になること、興味あることをまずはやってみる。最初は真似でもいいからどんどんやってみて、「楽しい!」と思えたら続ければいいし、「違うな」と思えば別のことをすればいい。


藍さん
それから、できるだけ早く着手すること。それは、今が一番若くて今が一番早いから。
たとえば年齢を重ねるとリスクを取りづらくなったり、新しいことへのハードルが高くなったりしますよね。動き出すなら一番若い今がチャンス。挑戦の最適解は、いつだって“今”だと思いますね。
「goyemonに行くために、日本に行きたい」と思われるブランドに

田邉
大阪・関西万博日本館のユニフォームに起用され、2025年7月には台湾でのPOPUPもされました。今後の展望を教えてください。

賢太さん
僕の最終目標は、月や火星にgoyemonのショップをつくることです(笑)。
でも最近気づいたのは、宇宙一のブランドを目指すなら、まず日本を代表するブランドにならなきゃいけないということ。海外の人が「goyemonに行くために日本に行きたい」と思えるくらいの存在を目指したいですね。


田邉
ベンチマークしているブランドや企業はあるのでしょうか?

賢太さん
AppleやNIKEの動向はよく追っていますね。

藍さん
あとはTeslaも。プロダクト自体が素晴らしいのはもちろんですが、顧客がブランドのコンセプトに共感していますよね。

賢太さん
だね。企業理念に共感したユーザーが購入するイメージがある。
企業理念って、そこではたらく人が共感するものだと思っていたんですけど、世界的なブランドは、企業理念に共感したユーザーがプロダクトを身につけている。

田邉
たしかに、はたらくだけでなく、購買にもつながっています。

藍さん
僕らはクラファンからスタートしたこともあって、雪駄屋さんだと思われがちですが、そもそも「日本の伝統×最新技術」というコンセプトがあってプロダクトが生まれています。
今あるプロダクト以外にも、今後もさまざまな商品を企画しているので、楽しみにしてもらえたらうれしいですね。

<取材・文=田邉 なつほ(株式会社声音)>
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