企業インタビュー
「学生時代のあの青春は、社会人になっても続けられる?」Z世代・あくびちゃんが考える“はたらくWell-being”とは
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

今回紹介するのは、一般社団法人若者キャリア支援協会の代表理事、“あくびちゃん”こと岩﨑聖奈さんです。“Z世代のキャリア観の翻訳家”として、若者のリアルな声を社会に届け、企業や組織につなげるのが一般社団法人若者キャリア支援協会(以下:JYC)であり、彼女の仕事です。
岩﨑さんは自身の活動について「現実社会で主人公になる方法を探しています」と話します。一見、夢物語のようにも聞こえるこの言葉には、「誰もが主人公として生きられる世界をつくりたい」という、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現への強い願いが込められています。
「社会人になったら、青春は終わりなの?」
学生時代は夢中になれることがあったのに、社会人になってからは「仕方ない」と諦めたり、「やりがいが見つからない」と感じたりしたことがある人も多いはず。
実際、どのように企業や行政、教育機関と連携し、“はたらきがいのある文化”をつくろうとしているのか。Z世代当事者でもある岩﨑さんの“はたらくWell-being”を聞きました。
1998年大阪生まれ。甲南大学マネジメント創造学部に在学中、100周年栄誉特待生に選ばれる。株式会社インタースペース入社後、新人賞・部門賞受賞。2025年一般社団法人日本若者キャリア支援協会を立ち上げ、Z世代のキャリア観を社会へ広げるべく、法人向け採用・育成サポート事業のほか、イベントや企画、誰もが主人公として輝けるZ世代コミュニティ『onStage』を運営。東京ドームでの日本最大級となるZ世代キャリアフェス開催を目指し活動中。人生を豊かにする三足の草鞋として、ほかにもボードゲーム制作チーム「ライデア」として#あざとカルタ #ファンサキラー などを制作、新しい自分の一面に出会える機会をつくる
学生時代のあの青春って、社会人になったら終わらせないといけないの?

廣田
若者向けのキャリア支援をお仕事にされていますが、岩﨑さんご自身はおいくつなんですか?

あくびちゃん
26歳です! 未だに学生と見間違えられます(笑)。
この容姿や年齢のおかげもあって高校生やZ世代に親しまれやすいので、よりリアルな声を聞ける強みでもありますね。
「あくびちゃん」という愛称があるので、ぜひ呼んでください!
え、いいんですか! ではさっそく…

廣田
あくびちゃんが代表を務めるJYCとは、一体どんな事業をされているのでしょうか?

あくびちゃん
大きくは3つの事業があります。
1つは、法人向けサポート事業。Z世代から集めた本音やキャリア観をもとに、企業の採用・育成・制度づくりを支援しています。
2つめはZ世代向け事業。同世代の悩みを話せる機会や、安心してキャリア相談ができるコミュニティを運営しています。
3つめはJYC HUB事業と言って、20代が中心となる若者団体・若者企業がリアルイベントを通して交流し合えるプラットフォームを運営しています。
現在は、30の若者団体・若者企業が登録しています。3つの事業で、50以上の団体・企業さまとお取引、協働しているんです。

廣田
2025年1月の立ち上げからまだ1年も経っていませんが、すでにたくさんの方とのつながりがあるんですね。

あくびちゃん
対象となる若者とJYCの運営メンバーが同世代という点でも、信頼を寄せていただいていますね。これまでZ世代を含む10代〜30代の若者、述べ5,000人以上のキャリアサポートをしてきました。

廣田
5,000人! キャリアサポートというと、どんなことをしているんですか?

あくびちゃん
コミュニティやJYC HUB事業では、主に学生団体に向けて、自分のキャリアを考えるイベントを開催しています。
たとえば、Z世代が抱える悩みの1つに、従来のキャリアの枠組みのなかに自分の希望するキャリアがない、といった悩みがあります。最近では、「教育に関わりたいけど教員になりたいわけじゃない」といった声がありました。
同じ悩みを持つ若者は意外と多いので、教員以外のかたちで教育に携わっている社会人をゲストに迎えてトークイベントを企画しました。また、高校からお声掛けいただき、大学生や社会人のリアルな声や話を聞ける場を提供したこともあります。
実は先日、こうした活動が評価されて、大阪・関西万博のキャリアイベントに令和流の生き方のロールモデルとして選出され、登壇してきました!
大阪・関西万博の様子:前列左から2番目にいるのが、代表理事を務める岩﨑聖奈さん

廣田
万博のキャリアイベントに登壇!? まさにZ世代の代表とも言えますね!
ところで、なぜJYCを立ち上げたんですか?

あくびちゃん
私自身、学生から社会人になる過程で「もっと自分らしく輝けるはたらき方ってあるんじゃないか?」と考えるようになったことがきっかけです。
というのも、大学時代はアニメの主人公のようにキラキラしていた友人や、夢を持って活動していた憧れの先輩たちが、社会人になった途端に変わってしまったように感じたんです。

廣田
変わってしまった?

あくびちゃん
会社のなかで理想のはたらき方ができていないのか、会うたびに仕事の愚痴や昔の思い出話ばかりするようになったな、と感じて。そういう人に限って、「今の仕事は、やりがいのある仕事だよ」と自分に言い聞かせるように話す姿も…
そんな友達や先輩を見る度に苦しくなっていったんです。

廣田
その感じ、わかる気がします。

あくびちゃん
実際、私も新卒入社のときは「社会人としてはたらこう」と学生からスイッチを入れ替えました。その結果、社内の新人賞や部門賞を受賞し、いわゆる“優秀な社員”にはなれたと思います。
でも、そこまで一直線にはたらいてみても何かが足りない。学園祭前に夢中になるような、あの学生時代の青春は社会人になったらもうないのかな…と悲しくなりました。
でも、学生時代が人生のピークだなんて、やっぱりもったいないじゃないですか!


あくびちゃん
私は学生時代から「主人公オタク」で、現実社会にいる“キラキラした主人公みたいな人”との出会いを求め、社外の面白そうなプロジェクトや異業種の人が集まる交流会に参加してきました。
気づけば、社会に31業界あるといわれる仕事のうち、27業界に交友関係が広がっていましたね。

廣田
すごい。ほぼコンプリートする勢いじゃないですか!

あくびちゃん
そのつながりを通して、自分の能力を活かしてキラキラはたらいている人達がいることを知っていたから、友人や先輩にも「あなたの輝ける生き方、ほかにもあるよ!」って伝えたくなったんです。

廣田
それで、Z世代に特化した若者キャリア支援に。

あくびちゃん
はい。対象者と自分が同世代だからこそ、彼らの本音やキャリア観を社会や企業に届けてマッチさせる“翻訳家”になれると思ったんです。
24時間を、どう生きる? 主人公マインドが生みだす“はたらくWell-being”

廣田
やりたいことも明確で行動力もある。あくびちゃんこそ主人公気質のような人に見えますが、それは昔からですか?

あくびちゃん
いいえ! 私、小学生のころは引っ込み思案で、給食が時間内に食べ切れないとか、ちょっとしたことでほぼ毎日泣いていたくらいで。おかげで友達も少なかったんです(笑)。
人前に出たいという思いも、やりたいことも何もない人間でした。

廣田
今と真逆!

あくびちゃん
でも、当時から週刊少年ジャンプ系の熱血青春アニメや漫画が大好きで、「いつか私も主人公になるんだ!」という願望みたいなものはあったんです。
それで中学生になったときに「今が変わるチャンスだ」と思い、生徒会に立候補しました。

廣田
どうして生徒会に?

あくびちゃん
だって、青春には友達が必要じゃないですか! 私が見ていたアニメの世界だと、生徒会に入ったらほぼ友達ができるっていうのを見て影響されたんです(笑)。
そこから変わりましたね。
「当時の憧れの主人公は『イナズマイレブン』の円堂守。今は『葬送のフリーレン』のヒンメルです」

廣田
それにしても、今の姿と比べるとギャップが…ほかにも変われた理由があるのでは?

あくびちゃん
うーん。何かあったとき「自分の憧れるあの主人公なら、この状況も楽しむはずだ!」とか、主人公マインドになりきっていたことですね。
最初は人前に出て話すことも震えるし、なんでこんなことしてるんだろうって考えが頭に浮かぶこともありました。でも、「このシーン、漫画っぽいな」と思うと、震える一歩を踏み出すことができたんですよね。この状況は私が選んだんだぞ、みたいな。

廣田
(漫画だったら、一番主人公が成長する名シーンになる予感…!)

あくびちゃん
それに、生徒会の先輩や友達がいろんなことを教えてくれたり、応援してくれたりしたんです。おかげで、困難な状況でも主人公のように乗り越えられました。
それがうれしくて、今度は私も周りの人たちが主人公になれるようにサポートしたいって思ったんです。

廣田
主人公マインドが人生を変えている! 主人公のように生きるために、必要なことって何かあるんですか?

あくびちゃん
社会人になってキラキラしながらはたらく主人公と出会ってみると、みなさんちゃんと自分の意思で決めている人ばかりだなって感じますね。そういう時代に変化しているとも感じています。

廣田
時代の変化?

あくびちゃん
たとえば、昔、栄養ドリンクのCMで「24時間戦えますか?」というキャッチコピーがありましたよね。
今って、24時間戦う(=はたらく)が前提だった時代から、「24時間戦いますか?あなたはどうしたいですか?」って聞かれている時代なんだと思うんです。

廣田
はたらき方も、生き方も変化している。

あくびちゃん
いろんな生き方が選べるようになってきたなかで、24時間をどんな割合でどう使えば自分が幸せになれるかに、目を向けなければならなくなってきた。
「自分の幸せのバランスは、自分にしか見つけられないんですよね」

廣田
確かに。

あくびちゃん
自分の24時間に何の要素を入れるのかを探して、「私の人生はこれで形成していきます!」と自分で選ぶことが大事になってきた時代。
起業のハードルが下がったり、会社員でも副業ができたりと、選択肢がたくさんあるゆえに迷ってしまうんですけど、“自分が選んだ”という実感があれば、どんな葛藤や試練があっても、乗り越えようと思えるはずなんです。
それこそ、漫画やアニメの主人公のように。

廣田
その主人公マインドは、あくびちゃんの“はたらくWell-being”にもつながっていそうですね。

あくびちゃん
私の“はたらくWell-being”に欠かせないことは、「私が真似できないと嫉妬するくらいの人生を生きている主人公」たちとはたらくこと。理想の世界を漫画でたとえるなら、『ONE PIECE』なんです。
主人公はルフィだけど、出てくるキャラクター全員がそれぞれに譲れないものやエピソードを持っている“主人公”じゃないですか。
たまたま今、同じ目的で船に乗っていてこの先変わるかもしれないけど、それでもいい。誰にも代われない自分の人生を生きている人が集まると、自然と影響されて自分も自分を生きようってパワーをもらえるから。そんな仲間と、一生青春しながら生きていきたいなって本気で思っています。
JYCのメンバーのみなさん
自分で選ぶって難しい…それでも、決めることからしか始まらない

廣田
とはいえ、24時間をどう生きるのか、自分のキャリアを選ぶって意外と難しい気もします。

あくびちゃん
そうなんですよね。でも、これまでのキャリア支援を通して感じるのは、「それでも自分で決めないと」ということなんです。
実は去年あたりから、8月になると新卒1年目の人から「どう頑張ったらいいかわからない」「このままじゃメンタルが崩れちゃう…」という連絡がたくさんくるようになって。

廣田
8月ですか? なんとなく、5月病のイメージがありましたが。

あくびちゃん
5月は研修期間だからまだ頑張れるんですよ。けど、お盆休みで一度自分に目を向けるゆとりができた瞬間に、違和感が浮き彫りになってしまうようで。

廣田
どうしてそんな状態に…

あくびちゃん
そういう悩みを持つ人の多くは、実は自分で決めきれていないんだと思います。
たとえば、世間や他人から「これがいいよ」と言われて選んだ人は、自分で腹落ちていない“とりあえず”の状態です。
キャリアの選択肢の多さゆえに、「やってから決めたらいいよ」を鵜呑みにして自分でゴールや目的を決めないまま始めると、突然「で、どうする?」と言われたときに途端に迷子になったりする。だから、仕事をしていてもどこか根を下ろしきれない感覚があるんだと思います。
長いときには3時間相談にのることも…

廣田
今は採用手段も増えて、学生と企業のマッチング精度が上がっているようにも見えますが、そうじゃないんですか?

あくびちゃん
自己分析したうえで企業を決められたらいいと思うんです。
ただ、「逆求人」と呼ばれる企業側から興味のある学生に直接オファーを送る就活スタイルは、「自分では選べないから…」と受け身で決めてしまうと、どこかで「呼んでもらったから」という感覚がぬぐえないことも。私も、その状態になった経験があります。

廣田
一見自分で決めたように見えるけれど、そうじゃない。迷子の状態からは変わらないんですね。

あくびちゃん
企業の採用支援をするうえでよくいただく相談には、「Z世代は、根性がなくてすぐに辞めるんだ」という声も多いです。
でも、辞めてしまう理由はいくつかあって、次の道を見つけた意思を持った退職の人もいるし、とりあえず社会人になったけど「やっぱり違う」と気づいて辞めてしまう人もいます。
後者に対しては、私たちの事業が企業と手を組むことで、改善の余地があると思うんです。

廣田
その改善とはなんでしょう?

あくびちゃん
就職活動よりもっと前から、企業と学生が関わりを持つことです。
現状、企業からは「大学3~4年生と会える機会をつくってほしい」とご相談いただくことが多いのですが、実は1~2年生のときから関わりを持つほうがマッチ度も高まって、双方にとって良い関係性になりやすいんですよね。

廣田
継続的に関わりを持つことが大切だと。

あくびちゃん
そうですね。そしてZ世代側も、学生のうちから自分で自分のキャリアをわからないながらも「決める」努力はしてほしいなと。
やりたいことがないなら、見つける行動をする。気になることがあるなら、できることから踏み出してみるとか。
私は変わらず「みんな自分の人生の主人公である」スタイルなので、私が何かを教えることはしていません。代わりに、JYCのコミュニティやイベントに誘ったり、共通点のある人をつなげたりすることで、自分を知るきっかけや選択を広げる後押しを全力でしたいなと思っています。
今の自分だからできることに熱中し続ける!

廣田
最後に、あくびちゃんの目標や夢をお聞きしたいです!

あくびちゃん
今の夢は2つあります。
まず1つはZ世代のキャリア迷子がいなくなって、みんなが主人公として生きられる世界をつくること。そのためにも企業や行政と連携しながら、Z世代を筆頭に、日本の若者のはたらき方そのものを全国の企業で考えるという視点へ底上げしていきたいです。
そしてもう1つの夢というか、直近で企てているのは、東京ドームでキャリアフェスを開催することです!
「東京ドームってワクワクしませんか?」

廣田
東京ドームでキャリアフェス!

あくびちゃん
キャリアについて難しく考えるのではなく、真剣にワクワクしながら自分の人生を考えて、それを表現できる機会をつくりたいんです。この夢を掲げると、「3年後、東京ドームに立つなら何がしたいか、どんな自分になっていたいか」という問いを持てる。
すると、自分の願いに気づいたり、応援し合える仲間と出会えたりする。私の目指している世界は、私軸だけだと限界があるから、この夢を叶えるために手を取り合って、お互いがエンパワーメントし合えるつながりをつくっていきたいです。

廣田
あくびちゃんの物語は続いていきますね。

あくびちゃん
私は根っこから“青春し続けたい人間”なので、いろんなはたらき方があることをワクワクしながら伝え続けたいんですよね。それに、この絵空事のような私の世界観を現実で叶えることで、Z世代の生き方のロールモデルの一人にもなりたい。
今はZ世代にフォーカスしていますが、私のライフステージも常に変化していきます。ママになったらママ支援をしているかもしれませんが、そのときそのとき、自分が当事者意識を持ってできることをキャリアにも活かし続けたいです。
<取材・文=廣田 彩乃>
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