企業インタビュー
“おダシ”、出ていますか? 人も企業も、旨みから生まれる“はたらくWell-being”

“おダシ”、出ていますか? 人も企業も、旨みから生まれる“はたらくWell-being”

連載「“はたらくWell-being”を考えよう」

新R25編集部

X
FacebookLINE

リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。

そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

働く幸せを感じる、かっこいい大人を増やす

その志を掲げているのは、東京・中目黒で「企業や地域のおダシ屋」と名乗るインビジョン株式会社です。「おダシ屋」といっても、昆布やカツオから抽出したお出汁を販売しているわけではありません。

インビジョン株式会社は、企業や地域、人が持つ本来の魅力を「おダシ」と呼び、そのおダシを引き出したうえで、採用支援やブランディング支援を行っています。

「人間味」という言葉に「味」がついているように、人にも、人が集まる組織にも、それぞれのおダシがある。今回は、おダシを引き出すことで「働く幸せを感じるかっこいい大人を増やす」の実現を目指すインビジョン株式会社の代表取締役・吉田誠吾さんに、自分のおダシの見つけ方を聞きました。

1977年生まれ。東京都出身。大学卒業後にリクルート系の広告代理店に入社。2008年にインビジョン株式会社を設立し、求人広告代理業をスタートさせる。その後、採用マーケティングへと事業をシフトさせ、2018年にはクラウド型採用管理システム「HRハッカー」をローンチし、採用支援サービスを拡充。2020年には大胆な自社ブランディングを実施し、自社を「企業や地域のおダシ屋」と名乗る。現在、企業や地域が本来持つ個性を「おダシ」と呼び、それを独自のノウハウで引き出しながらユニークな採用支援と地方創生を行っている

「おダシ出てないじゃん」。企業と人のおダシを引き出す会社

田邉

本日はよろしくお願いしま~…って、うわ!

オフィスに伺うと、手書きの看板が。うれしい!(筆者撮影)

吉田さん

ようこそ、インビジョンへ! お待ちしていました。

田邉

こんなお迎えのされ方、初めてでうれしいです!

今回、コーポレートサイトの「働く幸せを感じるかっこいい大人を増やす」という志に惹かれて取材へお伺いしました。サイトを拝見して「おダシ」という言葉が気になったのですが…お出汁屋さんではないんですよね?

吉田さん

よく聞かれるのですが、お出汁屋さんではありません(笑)。インビジョンは、企業や自治体の採用支援やブランディングを手がけている会社です。

インビジョン株式会社の吉田誠吾さん

吉田さん

独自の価値提供スタイルとして「おダシ屋」を掲げているのですが、クライアントからご依頼をいただいたあと、課題や強みを洗い出す「捨てる」「整える」を行い、そのうえで強みを活かして仕組み化したり、制作物をつくったりする「育てる」「届ける」まで、一気通貫で伴走します。

そのなかで、「捨てる」「整える」フェーズを「アクとり」、「育てる」「届ける」フェーズを「おダシとよんでいるんです。

田邉

「アクとり」をすることで、それぞれの「おダシ」を引き出していく流れなんですね。

ところで、この「おダシ」という考え方は、どのようにして生まれたのでしょうか?

吉田さん

「おダシ」としてまとめたのは、自社ブランディングを行った2020年です。もともとは僕が社内でよく言っていた言葉だったんです、「おダシ出てないじゃん」って(笑)。

自分では、企業や個人が持つ“らしさ”や“魅力”を「おダシ」と表現しながら、もっと発揮していこうというニュアンスで言っていましたね。

田邉

でも、「価値を発揮しよう」とか「自分らしくあれ!」と言われるよりも、スッと馴染みますね。

吉田さん

それはやっぱり、おダシって日本古来のもので親しみやすさがあるからかもしれないです(笑)。

命がけで託されたバトンが教えてくれた、“真心ではたらく”ということ

田邉

2008年にインビジョンを起業されたとお伺いしましたが、もともと起業を目指されていたんですか?

吉田さん

はい。高校生のときから漠然と「人生をかけて没頭できるネタで30歳で起業する」と決めていました。

というのも、父がエンタメ会社を経営していて、僕は小さいころから「誠吾、仕事って面白いぞ!」と言われて育ちました。だから自然と「仕事=面白いもの」だと思っていて。

自分も面白い仕事をしたい! と思っていたのですが、同時に「俺の会社は継がせない。お前はお前で独立しろ」とも言われていたんです(笑)。それから、「言われなくても自分で会社つくるよ」と思っていましたね。

吉田さん

ただ、一度は就職して仕事を学ぼうと、大学卒業後に新卒で求人広告代理店に入社しました。人材業界を選んだのは、とある役員面談で「30歳で起業したい」と話したら「それなら人材系がいいよ」とすすめられたのがきっかけです。

今思えば、経営のほとんどは人に関する課題から生まれるもの。人材業界なら、採用やチームづくりなど「人」を軸に学べることを示してくれたんだと思います。かつ、入社した会社は経営者と関わる機会も多い環境だったので、起業までその1社ではたらきましたね。

田邉

起業を目指して会社勤めをされていたのですね。その当時と今で、仕事観に変化はありますか?

吉田さん

そうですね。ひとつ、ずっと大切にしていることがあって。

忠恕(ちゅうじょ)なんですけど。

田邉

忠恕? 初めて聞きました。

吉田さん

忠恕は孔子が説いたもので、自分の良心に忠実であること」「他人に対する思いやりや真心が深いことを意味します。

実は前職時代、入社3年目で携わった新規事業所の立ち上げで、上司から“命がけのお願い”をされたことがあるんです

田邉

命がけのお願い、ですか。

吉田さん

ちょうど事業所がオープンするタイミングで上司から「ご飯に行こう」と誘われて、横浜の大衆寿司屋に着いたら突然「実は、末期の癌で余命わずかなんだ」と明かされたんです。

田邉

えっ…

吉田さん

そのとき「誠吾、新しい事業所頼むな」と託され、4カ月後に上司は亡くなりました。

それからしばらくして、上司の奥さんから事業所宛に感謝の手紙と、「忙しいだろうから栄養つけてね」と差し入れが届いたんです

吉田さん

上司が命がけのお願いを託してくれたこともそうですが、身内が亡くなったばかりにも関わらず、会社やはたらく人のことを考えてくれた奥さんの思いやりの深さにズシンときて

ふつうなら、自分のことで精一杯になるじゃないですか。

田邉

きっと私なら、自分や家族のことでいっぱいいっぱいになってしまいます。

吉田さん

ほんとそうなんですよ。

その経験以降、仕事をするうえで「本気の真心」を大切にしています

田邉

本気の真心。

吉田さん

たとえば、企業へ営業するときは「いかに力になりたいか」を手書きのメッセージで書いたラブレターのような資料をつくっています。入り口の看板も一例です。表面的なものじゃなく、芯の通った「人と人とのつながり」を大切にしたい

上司や奥さんからもらった深い思いやりで、自分の仕事に対するスイッチが入ったからこそ、自分も仕事を通じて循環させていきたいと思っているんです。

「面白いほうを選ぶ」は、最強の自己暗示

吉田さん

それから、起業するときもそうですが、忠恕を発揮するためには、いかに没頭できるかも重要だと思っていて。

面白いか、面白くないか、これが僕の判断軸。迷ったら、面白いほうを選ぶようにしています。

田邉

吉田さんにとって「面白いほう」って、どういうことですか?

吉田さん

やったことないこと、自分の想像ができないこと、ですね。

田邉

ええ!? でも、それって不安じゃないですか? プレッシャーがあったり、これまでの経験値では対応できなかったり…

吉田さん

でも、ゴールが見えちゃっていたら面白くないじゃないですか。もし「こうすればこうなる」「ああすればできる」と全部わかっていたら、きっとつまらないと思うんです。

ほら、RPGゲームも最初は経験値0からスタートして、仲間が増えたり、戦ったりして、紆余曲折があるからこそ楽しいじゃないですか。それに、「できるかな」「大丈夫かな」という不安は、ある意味自己暗示だと僕は思っていて

田邉

自己暗示、ですか。

吉田さん

「不安だ」と思っていたら、自然と気持ちも思考もそっちに向かっていっちゃう。でも逆に「面白そう!」「できる」と自己暗示すれば、何か大変なことや、壁があらわれたときも、よし、このお題どう解く?」と、まるでイベントのようにとらえられるんですよ

田邉

ゲームでいうと、クエストが発生したような感じですね。

吉田さん

そうそう! はたらいていると自分ではコントロールできないこともありますし、やりたくないことをしなければならないときもあります。でも、それも「新しいイベントだ!」と思えたら、自然とはたらくことが楽しくなるはず。その過程のほうが、きっと面白いじゃないですか(笑)。

つまらない打ち合わせも、人との付き合いも、自分から「どう面白くできるか?」を意識することで、変わってくると思いますね。

“心のセンサー”を鍛えると、「自分のおダシ」が見えてくる

田邉

吉田さんは、誰しも「おダシ」があると思いますか?

吉田さん

あると思いますね。眠っているか、気づいていないか。もしくは、まわりの人には言っていないか、そのどれかだと思います。

田邉

誰にでもある…自分自身の「おダシ」に気づくためには、どうしたらいいですかね?

吉田さん

自分から湧き出る気持ちや、内なる声を受け取る力がめちゃくちゃ大事だと思いますね。そのためには、心のセンサーを鍛える必要がある

で、心のセンサーを鍛えるには、五感を使っていろんな情報を浴びることが大切です。SNSやオンライン情報で知った気になるのではなく、面倒でも足を運んで、見て、空気感や匂い、音を体感する。

田邉

言われてみると、ついSNSで知った気になってしまっていました。

吉田さん

体感したら、次はそれを観察して言葉にすること。実は弊社では「茶豆日誌」というのをやっているんですけど。

田邉

茶豆日誌? 枝豆の?

吉田さん

着眼点を、まめに、メモするで、茶豆日誌です(笑)。

どういう状況のなかで、自分は何を感じて、どう思ったのか。そして、次はどうしたいのか。

そういう日々の機微を、日記でもいいし、メモでもいいから書き留めておくと、自分の傾向が見えてくるはずです。たとえば、「こういうときにテンションがあがる」「こういう状況だと落ち込む」「これに心を惹かれる」とか。

吉田さん

まずは「今日食べたもののなかで、これが一番おいしかった」くらいでいいと思います。意外と「何がおいしかった?」って聞かれて、すぐ答えられる人って少ないですから。

僕の知り合いには、おいしいものを食べると「おいしい…!」と天を仰ぐ人がいるんですが、それって食事の時間に全力で向き合っているってことですよね

田邉

確かに、食事を栄養補給ととらえていたら、そうはならないです。

吉田さん

最初はそうした些細なところから、心のセンサーを鍛えると良いと思います。すると徐々に感度が高まって、自分の好きなものや強みに気づけるようになるんじゃないかな

田邉

それに気づけたら、仕事選びやキャリアへの考え方も変わり、“はたらくWell-being”も感じられそうです。

吉田さん

そうやって自分のおダシに気づけたら、働く幸せを感じる、かっこいい大人に近づいていけるような気がしますね。

<取材・文=田邉 なつほ(声音)/撮影=Uematsu Genta>

X
FacebookLINE

企業インタビュー

新R25編集部が制作したスポンサード記事の一覧です。記事制作の依頼は新R25 Businessから

ランキング*

*1ヶ月以内に公開された記事が対象のランキングです

新着

Interview

“おダシ”、出ていますか? 人も企業も、旨みから生まれる“はたらくWell-being”

NEW

新R25編集部

総再生1.2億回超! 話題の恋リア新シリーズ『隣の恋は青く見える -Chapter TOKYO-』ついに開幕

新R25編集部

次代に残したい“すごい技術”。国内産地と協業で生まれた「HUIS.」のセカンドブランド

新R25編集部

芸能事務所と週刊誌の禁断の攻防戦の先には…? 芸能界の深い闇に切り込んでいくサスペンスドラマ『スキャンダルイブ』

新R25編集部

知って終わりにしない。専任コーチが伴走する、仕事に即活かせる“実践型”AIスクール「シゴトAI」

新R25編集部

お正月は金箔が舞う“生”の日本酒で乾杯!山田錦100%の純米大吟醸酒「金賀」が贅沢すぎる

新R25編集部