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「“楽しむ”情熱を注げるのが、No.12」アメリカの大学卒業後、Uターン継承した2代目が語るカシマの魅力

「“楽しむ”情熱を注げるのが、No.12」アメリカの大学卒業後、Uターン継承した2代目が語るカシマの魅力

【連載インタビュー】カシマの変遷と「No.12」プロジェクトが生む新たな風

新R25編集部

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茨城県鹿嶋市は、鹿島アントラーズのホームタウンとして知られるサッカーの聖地であり、地域の人々が一体となって支える活気ある町でもある。

この地に新たな賑わいを創出するプロジェクトとして、地域の魅力を発信する宿泊施設「No.12 Kashima Fan Zone(以下「No.12」)」が2025年3月にオープンを迎えた。

プロジェクトを推進するのは、ツキヒホールディングス株式会社と、鹿島アントラーズFC代表取締役社長を務める小泉文明氏率いる株式会社KX

「地方創生」×「スポーツ」×「リカバリー」をテーマに、スポーツを軸とした新しい地域の活性化モデルを打ち出し、ファンや地域住民が心から楽しめる場を提供することを目指している。

砂の可能性で地域を支える、新たな鹿行の未来へ

——そう語るのは、砂利採取業を通じて社会に貢献し、鹿行地域の発展に尽力する株式会社平山の代表取締役社長・平山翔一さん

父が創業した会社を引き継ぎ、現在は2代目として事業を展開。砂のプロ集団として、生コンクリート用の建築材料からガラス製品、さらには半導体の製造に欠かせない高純度シリカまで、多様なニーズに応える取り組みを行っている。

今回、「No.12」のプロジェクトへの参画を通して、地域の未来に託す想いや、カシマの発展にかける情熱について語っていただいた。

「暮らしを支える“砂”の底力」

川島

では、会社の事業内容について教えていただけますか?

平山さん

弊社では、主に建材、特に“砂”を中心とした事業を展開しています。

砂といっても、その用途は非常に幅広く、建設現場で使用される生コンクリート用の砂から、浄水場やゴルフ場、さらにサッカーグラウンドの整備に使われるものまで、多岐にわたります。

また、弊社では今のところ取り扱いはしていませんが、ガラス製品や半導体など、高純度のシリカ含有が求められる製品にも砂が使われています。

川島

“砂”といえば、一般的には建築材料のイメージが強いですが、そんなに多様な用途があるとは驚きです。

平山さん

実は、砂は世界で最も使用される資源の2番目なんですよ。1番は水です。

私たちの日常生活でも、ガラス窓やスマホの画面、パソコンの半導体など、さまざまな製品の素材として砂が使われています。

弊社では、用途に応じて砂を加工し、付加価値をつけることに注力しています。

川島

なるほど。その付加価値というのは、具体的にはどういった部分でしょうか?

平山さん

たとえば、ガラス製品に使う砂にはシリカ成分を99.99%以上の純度にする加工が必要です。

一方で、シリカ成分の純度がそれほど高くない砂でも、生コンクリートや他の用途に十分活用できます。

このように同じ“砂”でも、使い方次第で価値が大きく変わるんです。

私たちは、そうした技術や知識を駆使して、多様なニーズに応える製品を提供しています。

川島

すごく奥が深いですね。

ちなみに、採掘したあとの砂や土地はどのように管理されるのですか?

平山さん

SDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも基づいて、採掘後の土地を整備し、再利用する取り組みも進めています。

また、一度使用された砂を洗浄して再利用したり、用途に合わせて転用したりと、資源を無駄にしない工夫もしています。

たとえば、競馬場で使った砂を新たな用途に転用するなど、限られた資源をいかに有効活用するかを常に考えています。

川島

地域に根ざした事業として、環境への配慮もしっかりされているんですね。

平山さん

そうですね。カシマはもともと砂の産地としても有名で、砂の粒がどちらかというと丸みを帯びていたり、シリカ成分にも特徴があったりします。

浄水場のろ過砂やバイオマス発電用など、全国的にも需要があるんです。

川島

ろ過砂はどのように使われるのでしょうか?

平山さん

半導体を作るのに綺麗な水が必要なのですが、その水を綺麗にするために砂を使います。

砂は、身近なところ見えないところでも使われているんです。

川島

そうだったんですね。コンクリートのように流し込むような建材としてのイメージが強かったので、砂の奥深さに驚きました。

ところで平山さまは、お父さまが創業された株式会社平山さまの2代目になるのでしょうか?

平山さん

はい、そうです。

創業者は父でして、私はその2代目になります。

川島

つい先日社長になられたとのことでしたが、何か変化はありましたか?

平山さん

実のところ、あまり変化はないんですよね。というのも、役職が変わる前から対外的な仕事やお客さま対応など、すでに多くを任せてもらっていました。

なので、名刺に“代表取締役”と肩書きが付いたからといって、特にプレッシャーを感じることはありません。

ただ、やはりこれまで以上に責任を持ち、会社の未来を切り拓いていくために、自分自身ももっと成長していかないといけないなと思っています。

これからも地域やお客さまに必要とされる企業であり続けられるよう、しっかり頑張っていきたいですね。

川島

そうだったんですね。

幼いころから後を継ごうと決めていたんですか?

平山さん

そうですね。ただ、小さいころから「継がなきゃ」という意識は特にありませんでした。

でも子どものころ、大型ダンプや重機で作業している姿を見ると「かっこいいな」と思っていたんです。それが心のどこかで影響していたのかもしれません。

ただ、学生時代は東京にいたのですが、学生時代が楽しすぎて、「カシマには戻りたくないな」って思ったこともありました。

地元の魅力はもちろんあるんですが、当時は友達も多かった東京の方が楽しいと感じていましたし、地元には夜遅くまで開いているお店も少なかったので(笑)。

川島

では、どういったタイミングで地元に戻る決心をされたのですか?

平山さん

アメリカの大学を卒業したタイミングで、地元に帰ろうと思いました。

もともと最終的には、家業に入るつもりだったので、あまり悩んでも仕方ないと思い、戻りました。

最初の1年くらいは「つまらないな」「仕事って疲れるな」と感じていましたが、生活を続けるうちに、昔の友達と再会したり新しい友人ができたりして、少しずつ地域にも馴染んでいきましたね。

今では本当に居心地が良いです。

川島

最初、仕事がつまらないと感じたのはなぜだったのですか?

平山さん

砂屋さんの仕事って、最初は単調に見えるんですよね。毎日砂を掘っているので、汚れるし汗もかきます。

今時の「パソコン1台で仕事できる」ようなかっこいい仕事とは真逆なお仕事です。

でも、続けるうちに、「砂ってどこにでもあるけど、実はこんなに多様な用途があるんだ」って気づいていったんです。たとえば競馬場やゴルフ場、半導体やスマホのガラス画面だって砂が原料となります。

加工の仕方によって、「ただの砂」ではなく生活のあらゆる場面に深く関わっており欠かせない素材なんだと知ったとき、この仕事の奥深さに魅了されました。

川島

なるほど。砂の可能性を知れば知るほど仕事の面白さが増しますね。

平山さん

そうですね。さらに、全国各地に取引先やつながりができることで、仕事がどんどん面白くなっていきました。

いまではこの仕事を通じて得られる達成感が自分のモチベーションです。

川島

平山さんご自身の歩みや考え方を伺うと、地元と仕事にしっかり根を張っていらっしゃるのが伝わりますね。

自分ひとりで楽しむだけじゃなくて、周りと一緒に何かを成し遂げたい

川島

平山さんが「No.12」のプロジェクトに参画された理由について、お聞かせいただけますか?

平山さん

はい、最初は企業として本業をこなすことがメインだったので、地域を盛り上げるための取り組みにはなかなか手を出せておりませんでした。

私が個人で参加している一般社団法人かしま青年会議所での地域活性化の活動には継続して取り組んでいるものの、それ以外ではあまり活動ができてなかったんですよね。

でも、父である弊社の会長は楽しいことが大好きな人で、海が好きすぎてジェットスキーをしていたり、海の家の権利を取得して運営を行っていたり、家に帰ったらピザ窯があり「今日はピザパーティだよ!」といったイベントが、日常のなかによくありました(笑)。

今回の「No.12」のプロジェクトは、そういった「楽しむ」という情熱を注げそうな企画であると思いましたので、参画しようと決めました。

川島

楽しいかどうかで判断できるって素晴らしいことだと思います。

平山さん

そうですね。また、第1期から参加していたメンバーにも少し知り合いがいたので、このチャンスを活かして自分のつながりを広げたり、もっと楽しいことを一緒にできるかもしれないと考えたんです。

やっぱり自分ひとりで楽しむだけじゃなくて、周りと一緒に何かを成し遂げることで、もっと楽しくなるんじゃないかなと思って、参加を決めました。

それが一番のきっかけかもしれないですね。

川島

やっぱり楽しさって大事ですよね。

それがやりがいにもつながりますよね。

外からの視点が加わることで、地域に新しい流れが生まれると思います

川島

今後、カシマや鹿行地域がどうなってほしいといったイメージはありますか?

平山さん

そうですね。やっぱり、もっと人が集まる場所になってほしいですね。

日本製鉄が2基あった高炉が1基休止を予定しているため、人口も減ることが予想されるなかで、このままだと地域の活気がどんどん失われてしまうと心配しています。

ただ、今回のような外部の方も巻き込んでいる「No.12」のプロジェクトって、「こういうこともできるんだ」と気づかされる部分が大きいですし、この地域の人にとってすごく刺激になるはずです。

自分たちだけではなかなか発想できなかったり動けなかったことも、外からの視点が入ることで新しい流れが生まれると思います。

もちろん大規模な開発もひとつの手ですが、カシマらしさを残しつつ、自然な形で人が集まるのが理想かなと思っています。

川島

地元の魅力を外部の方に伝えるのって意外と難しいですよね。

でも外から来た人の視点を取り入れることで、地元の人たちも「ここにはこんな可能性があるんだ」と気づくきっかけになりますよね。

平山さん

はい。カシマやその周辺地域が、もっと多くの人に注目され、魅力を再発見される場所になってほしいですね。

今回の施設を皮切りに、少しずつ面白い取り組みを広げていければいいなと思っています。

地元の人たちとのコミュニケーションも楽しんでいただきたい

川島

カシマや鹿行エリアにいらっしゃる方に向けて、何かメッセージをお願いできますか?

平山さん

そうですね。カシマに来る人って、何かしら目的があって来ることが多いと思うんです。

たとえば、サッカーを観に来るとか、鹿島神宮を参拝するとか、サーフィンに来るとか。何かの「ついで」ではなく、目的を持って来る場所なんですよね。

だからこそ、来る人たちにはその目的をしっかり楽しんでもらいたいと思います。

今回、グランピング施設も新しくできたりして、遊びの選択肢が増えるのはすごく良いことだと思います。遊びや楽しいことが増えると、自然と人が集まりますよね。

川島

たしかにそうですね。

観光地って、地元の人たちとのコミュニケーションも楽しみのひとつだと思うんです。地元の方に聞いてみると、新たな発見があったりしますよね。

平山さん

そうそう! この地域の人は本当に温かいので、「この辺りで楽しい場所ありますか?」「夜に美味しいお酒を飲めるところ知ってますか?」なんて聞いてみたら、きっと親切に教えてくれると思いますよ。

地元の人のおすすめって、やっぱり一番信頼できますよね。

川島

たしかに、地元の人が教えてくれる情報って観光ガイドに載っていないような魅力が詰まっていますよね。

平山さん

ええ、せっかく来るなら地元ならではの体験を楽しんでほしいですし、おいしいものをたくさん味わってほしいですね。

そして、これからは新しい宿泊施設もできるので、ぜひ泊まってゆっくりしていただければと思います。

川島

なるほど、地元の魅力を深く味わう旅になりそうですね。

本日はありがとうございました。

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