

“はたらくWell-being”はホルモンでつくられる!? 自分らしくはたらくための生命科学に基づいたセルフマネジメント術
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

“はたらくWell-being”とは、パーソルグループが提唱する考え方で「はたらくことによって得られる幸せや充実感」のこと。この“はたらくWell-being”を測る指標として、3つの設問を設定しています。
①あなたは、日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか?(はたらくの体験)
②自分の仕事は、人々の生活をよりよくすることにつながっていると思いますか?(はたらくの評価)
③自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、あなたが選べる状態ですか?(はたらくの自己決定)
今回紹介するのは、NO WALLs株式会社の代表取締役、高橋奎さんです。「セルフマネジメントで個と組織を輝かせる」をミッションに掲げ、2020年にNO WALLs株式会社を設立しました。
3つの設問を投げかけたところ、「それぞれ、生命科学のホルモン分泌で説明できますね」と高橋さんは話しました。“はたらくWell-being”と、ホルモン。まさかの組み合わせから見えてきたのは、“自分を整え、未来を変える”ヒントでした。
横浜国立大学理工学部在学中、NPOカタリバにてキャリアをスタート。その後STAMINE Inc.にて人事コンサルタントとして従事。その後、NO WALLs株式会社を創業。30の事業や組織のコンサルティングを経験。経営をしながら、READYFOR株式会社に入社。クラウドファンディングプロデューサーとして従事。その後、退職。現在はNO WALLsにて、セルフマネジメントプログラムBeatを中心として、人材開発、組織開発を中心に様々な企業や個人を支援している
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“はたらくWell-being”って、ホルモンで説明できるらしい

田邉
“はたらくWell-being”は、「はたらく体験」「評価」「自己決定」の3つの観点から成り立っていて、それぞれに設問があります。全部に「はい」と答えられたら、“はたらくWell-being”が高いということなんです。

高橋さん
へぇ〜、おもしろい! はたらくの体験・評価・自己決定かあ。それぞれホルモン分泌に当てはめて説明できますね。
ホルモン分泌?

高橋さん
「オキシトシン」「セロトニン」「ドーパミン」「エンドルフィン」…いわゆる“幸せホルモン”って聞いたことないですか?

田邉
幸せホルモン、聞いたことあります! でも、Well-beingをホルモンで説明できるって、どういうことですか?

高橋さん
まず1つ目の設問、「日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか?」から見ていきましょう。

田邉
お願いします!

高橋さん
「仕事が好きか?」と聞かれたとき、その質問に答えるにはいろいろな要素がありますが、そのなかのひとつに「自分の強みが生きている」という感覚があると思うんです。
強みが生きているとは、自然と人に貢献できているときだと私は思います。やっぱり、無理せず自然にできることのほうが好きになりやすいじゃないですか。
そういう仕事だと、先が読めるから不安も少ないし、周囲からもちゃんと期待される。結果、「安心感」が生まれますよね。そのときに分泌されるのが、オキシトシンなんです。

田邉
オキシトシン。

高橋さん
オキシトシンは、「愛情ホルモン」「思いやりホルモン」とも呼ばれ「自分はここにいて良いんだ」と感じたときに分泌されます。
仕事においてそう感じられたら、意見が言えたり、チャレンジできたりすることにつながりますよね。

田邉
確かに…!

高橋さん
さらに、先が読めるということは未来への見通しが立つので、自分で仕事のペースを決められます。
この「自分のリズムではたらけている」という状態は、安心感を感じられるのでセロトニンが出やすくなるんですよ。

田邉
今度はセロトニン。

高橋さん
セロトニンは自律神経を整え、ストレスを軽減させる働きがあります。すると、気持ちが安定して「自分は今どんな状態か?」を冷静に見極められるようになるんですね。
どうしても、情報社会のなかで生きていると、常に興奮状態になりやすい。セロトニンはその興奮状態を適度に抑える働きがあります。そうすることで、持続可能な働き方が実現できるわけです。

「達成感→やる気」の正体はホルモンにあった

高橋さん
2つ目の設問の「自分の仕事は、人々の生活をよりよくすることにつながっていると思いますか?(はたらくの評価)」には、エンドルフィンとドーパミンが関係していますね。
エンドルフィンは、達成感や高揚感を得たときに分泌されるホルモンです。そして、達成感を感じたあとに「よし、次も頑張ろう」と前向きな意欲が湧くとき、ドーパミンが分泌されます。
つまり、「人や社会の役に立てた」「自分は努力してやれた」という実感が、まずエンドルフィンを生み、それがさらにドーパミンのサイクルにつながっていくんです。

田邉
エンドルフィンから、ドーパミンへ。

高橋さん
さらに言うと、「人や社会の役に立てた」と感じるのは、周囲とのつながりを感じられる瞬間でもありますよね。それは「自分がここにいてもよい」という安心感にもなるので…

田邉
もしかして、オキシトシンが分泌される!?

高橋さん
ですです(笑)。社会とのつながり、周囲とのつながりを実感することで、オキシトシンが分泌されます。
さらにこの安心感があるからこそ、「何かに挑戦してみよう」という前向きな意欲が生まれ、それがまたドーパミンの分泌につながるんです。


田邉
すごい! ホルモンって、全部つながっているんですね!

高橋さん
そして3つ目の設問の「自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、あなたが選べる状態ですか?(はたらくの自己決定)」。
選択肢があるということは、自分の未来を想像しやすくなるということ。「この道を選べば、こんな自分になれるかも」とワクワクすることで、ドーパミンが分泌されます。

田邉
じゃあ、想像とか妄想レベルでも効果があるんですか?

高橋さん
もちろんOKです。
たとえば「今日の夜は、美味しいお寿司を食べに行く」って考えるだけでもワクワクしますよね。それもドーパミンの影響なんですよ。
組織・プロジェクト・事業の推進で大切なのは、一人ひとりの自立性

田邉
高橋さんは、どうしてこれほどホルモンに詳しいのでしょうか? そもそも、どんなお仕事をされているんですか?

高橋さん
私は2020年にNO WALLs株式会社を立ち上げ、個人と法人の両方に向けて、セルフマネジメントの支援事業を行っています。
個人向けでは、フリーランスや経営者、マネジメント層などを対象に、独自開発した診断ツールを用いてセッションを実施したり、プログラムに取り組んでもらったりしています。
法人向けでは、「自立的な人材育成」をテーマに、先ほどのような仕事におけるホルモンの仕組みを活用した研修や、継続的な行動変容を促すプログラムなどを提供しているんです。
研修で、講師をする高橋さん

田邉
なるほど。どちらも「セルフマネジメント」が軸なんですね。でも、なぜ「セルフマネジメント」にたどり着いたんでしょう?

高橋さん
私自身、これまでのキャリアで、いち会社員として人事コンサルティングやクラウドファンディングの支援、さらにフリーランスとして通信制高校の探究学習や、エンジニアコミュニティの支援、企業の採用サポートなど、さまざまな立場で仕事をしてきました。
30社以上の企業と関わる中で気づいたのは、どれだけ優れた戦略やマネージャーがいても、それを実行する一人ひとりが自分を理解し、自立していなければ、組織はうまく機能しないということです。

田邉
メンバー一人ひとりが自立していないといけない。

高橋さん
そうなんです。そもそもマネージャーや上司が、メンバー全員のマネジメントを完璧に担うことは無理があります。業務量や特性をある程度把握していても、その人の体調や感情の波までマネジメントするのは難しい。
一方で、マネージャーも結果を求められる立場ですから、最終的にはメンバー一人ひとりの「自立性」が組織やプロジェクトの推進力になるんです。
だからこそ、自分の特性や強みを理解するセルフマネジメントが重要になってくる。セルフマネジメントできる人が増えれば、社会全体としても幸せが広がると本気で思っているんです。


高橋さん
そう考えるようになってからは、さまざまな理論を調べてきました。そのなかで、人間がもともと持っている普遍的なもの、そしてすべての人の共通言語になるもの、つまり「生命科学」に基づいて読み解くことで、より納得感と説得力のある説明ができるのではないかと思ったんです。
さらに、これまでの組織論やマネジメント領域では、生命科学を軸にしたアプローチは非常に少なかった。だからこそ、それを体系的にまとめていくことで、新しい分野として展開できるのではないかと感じたんです。
「朝起きられた」も立派な実績? “やりがい”を失わないはたらき方

田邉
高橋さんにズバリ聞きたいのですが、“はたらくWell-being”を感じるためには、何が必要だと思いますか?

高橋さん
私はまず、「小さな出来事を無下にしないこと」だと思いますね。

田邉
小さな出来事を無下にしない?

高橋さん
たとえば、初めて仕事で達成感を感じた瞬間って覚えていますか?

田邉
うーん…メールを送れたときですかね。それまでは上司に内容を確認してもらっていたんですが、自分の判断で送れるようになったとき、「やった!」って思いました。

高橋さん
おお! それ、すごくいいエピソードですね。でも今は、もうそれが当たり前になっていませんか?


田邉
はい、完全に当たり前になってます。

高橋さん
そうなんです。そうやって、かつては達成感を感じていたはずの出来事が、いつの間にか「当たり前」になってしまうことって多いんですよね。
でも、メールを送れたことも、掃除をしたことも、挨拶をしたことも、商談ができたことも、さらには「朝起きられたこと」みたいな小さなことでも、意識して「できた」と捉えることが、“はたらくWell-being”にはめちゃくちゃ大事なんです。

田邉
朝起きられたことも!? それって当たり前すぎる気もしますが…

高橋さん
でも、「できた」と思うことで小さな達成経験が積み重なり、それが自己効力感を高めることにつながります。「自分はできる」という感覚を持てることは、理論的にも有効だとされています。生命科学の視点からすると、達成感を得て、エンドルフィンが分泌することで、ドーパミン分泌を促進するというイメージです。
でも実際は、キャリアを積むほどに“当たり前”のラインが上がっていって、大きな成果じゃないと達成感を感じられなくなる人が多いんです。たとえば、大きなプロジェクトが成功したとか、数年越しの案件がようやくリリースされたとか。
もちろん、それらは大きなやりがいになります。でも、そこまで頑張るための「日々のエネルギー」が枯れてしまったら、結局、続かないんですよね。

田邉
確かに…言われてみると、達成感を感じられない時間が長くなってしまっている気がします。
「今日できた10個」で変わる。小さな達成が、明日の力になる

田邉
そう思うと、“はたらくWell-being”を感じられるようになるために、明日から私たちは何をすればいいのでしょうか?

高橋さん
私がセルフマネジメントの支援でよく取り入れている方法のひとつに、「日報」や「日記」を使った振り返りがあります。
仕事が終わったタイミングで、その日1日で“自分ができたこと”を10個以上書き出してみてください。
高橋さん「10 個以上、これ絶対です!!」

田邉
10個ってなかなか多いですね。

高橋さん
はい。どんなに小さなことでも「できた」として捉える視点を鍛えるために、あえて“10個以上”という条件を設けています。
そしてもうひとつやってほしいのが、「明日は何をするか」を事前に整理しておくこと。つまり、「明日どんな仕事をするのか」「そのために必要なタスクは何か」を洗い出して、すべてカレンダーに入れるんです。

田邉
カレンダーに、ですか?

高橋さん
人は「いつ、何をするか」が決まっていないと注意が散漫になりやすく、集中力が下がってしまうんです。
「次に何やるんだっけ?」と立ち止まったり、「やらなきゃいけないことが多すぎる…」と迷ったりすると、それだけでパフォーマンスが下がってしまう。
前日のうちに見通しが立っているだけで、安心して1日を終えることができるし、翌日のスタートもスムーズに切れるようになるんです。

田邉
なるほど…今日の「できた」を見つけて、明日の「やること」を明確にする。まさにセルフマネジメントですね。

高橋さん
そうなんです。こうした“足元の習慣”を整えることが、結果的に日々の達成感につながり、Well-beingの実感へとつながっていく。
そして、私自身の目標でもあるのですが、こういった「自分に合ったセルフマネジメント」を、誰もが自然と学べる社会をつくりたいと思っているんです。
「やりがいは、大きな成功の先にあるもの」ではなくて、「今日もやれた」「ちょっと進めた」という小さな感覚のなかにあるもの。そんな小さな達成感が日々あふれている社会って、すごく健やかで幸せだと思うんですよね。
<取材・文=田邉 なつほ>
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