

起業ってもっと気楽でいい。やってみるから始まる、スモール起業で“はたらくWell-being”
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

今回登場いただくのは、2008年にWebマーケティング事業で起業し、今年で17期目を迎える中田裕さん。「起業」というと華やかな挑戦や社会を変えるような新規事業のイメージがあるかもしれませんが、中田さんは「小さくてもまずやってみることから」とスモールビジネスからキャリアを築いてきました。
今回は、中田さんが考える“はたらくWell-being”や、仕事と向き合うなかで大切にしていることを伺いました。
慶應義塾大学大学院理工学部研究科卒業後、人材派遣会社に入社。情報システムやWebマーケティングを担当した後、ベンチャー系のWebマーケティング会社に転職。2008年に株式会社グレイディエントを創業。現在は、戦略的ウェブマーケティングの総合支援を行っている
スモールビジネスから始める起業のすすめ

田邉
本日はよろしくお願いします! まずは中田さんのお仕事について教えてください!

中田さん
総合的なWebマーケティング事業を行っています。
Webサイトのコンサルティングから企画、設計、制作、広告運用、SEOなど、Webに関するお困りごとを一貫してサポートする会社で、2008年に起業し、今年で17期目を迎えました。

田邉
Webマーケティングといえば競合も多い激戦の業界という印象ですが、そんななかで20年近く経営を…!

中田さん
いやいや、それほどではありません(笑)。
もちろん会社を存続させたい気持ちや、経営者としての責任は感じていますが、それ以上に起業していない人生は考えられないくらい楽しくて。
いろんな考え方があると思いますが、私としては、みんなに起業を勧めたいぐらいなんです。

田邉
みんなに起業を勧めたい!? でも、起業って大変じゃないですか…?

中田さん
そうですよね。恐らく「起業」と聞くと、「新しいことをしないといけない」とか「社会を変えなきゃ」とか、そういうイメージがあるかと思います。


中田さん
でも私はちょっと違っていて。
「起業したからには社会を変えるぞ!」とか「ベンチャー企業として事業拡大させる!」といった意気込みは、ゼロではありませんが起業当初も今もそれほど持っていないんです。
すでにあるマーケットのなかで取り組む“スモールビジネス”であっても起業していいよなと考えて、私もすでにあるWeb業界のなかで、自分のできることを会社のかたちで始めようと起業しました。

田邉
えっ、そんな始め方でもいいんですか?

中田さん
そうなんです。そしてもう1つ、そうした新規性がないといけないという思い込みだけでなく、起業するなら他社と差別化しなきゃいけないという思い込みもありませんか?

田邉
確かに、起業するなら他社と同じことしないようにと考えてしまいます。

中田さん
でもコンビニで考えたら、一番近いところに行きますよね。こだわりがあれば、「必ずあそこのコンビニがいい!」と思うかもしれませんが、基本的には最短距離のお店に行きます。
なので、無理に他社と差別化ポイントをつくらなくても、レスポンスが早かったりすぐに対応できたりと、クライアントが頼みやすい状況や心理的に近い距離にいれば、仕事を依頼していただけるんですよ。

田邉
新規性、差別化をしなくても、起業ってできるんだ…!
「レールに乗らない」選択が、起業への第一歩に

田邉
ところで、「起業していない人生は考えられない」とまで仰る中田さんは、これまでどんなキャリアを歩まれてきたのでしょう?

中田さん
私は理系の大学院に通っていたのですが、当時就職活動を全然していなくて。
新卒で定職に就こうという思いもなく、学生時代にアルバイトしていた人材派遣会社の社長にたまたま声をかけていただいたことから、新卒ではその会社に入社しました。

田邉
就活をしていなかった!?

中田さん
はい。そもそもなんで就活しなきゃいけないのか疑問に思ったんですよね。
教授たちからは「メーカーの開発職やエンジニアになるんだぞ」と言われていたのですが、だんだんと理系の研究にも興味を失ってしまっていたタイミングで、そんなふうに決められているのではなく、「もっと自由に働けばいいでしょ」と。むしろ、まわりが当たり前のように就活するのが不思議でした。

田邉
そんな中田さんが、そこから起業しようと思ったのは何かきっかけが?

中田さん
最初に働いていた会社での経験が大きいですね。
良くも悪くも、すごく“手づくり感”のある会社だったんですよ。50人規模の比較的小さな会社で、社内システムやワークフローもみんなの知恵でなんとかしていくスタイル。足りないものは自分たちでつくるし、日々業務を進めながら環境を整えていました。


中田さん
それまで私は「会社というのは、どんな会社でもシステムや仕組みがきっちり整っているもの」と思い込んでいたので、「自分にはできない」「会社をつくるなんてとんでもない」と考えていました。
だけど、それが先入観だったと気がついて「もしかしたら自分にも会社をつくれるかもしれない」と感じたんです。
ちょうど2000年頃はGoogleが日本に上陸して、Web業界が新しいステージに入っていた時期もあり、「Web関連の事業で起業しよう」と考えるようになりました。その後、人材派遣会社を退職して、起業に向けた経験を積むためにWeb制作会社へ転職します。
“今”は準備期間じゃなくて、常に本番だから

田邉
そう思うと、「できるかもしれない」と思ってから実際に起業するまでは、割とスムーズに進められた?

中田さん
いや、それが実はそうでもなくて…
やっぱり金銭的な面などで不安があって、3年ほど決心がつきませんでした。ただ、とある起業セミナーに参加したのがターニングポイントになりました。

田邉
何があったのでしょうか?

中田さん
そのセミナーの参加者はみなさん起業を目指していて、当時僕は20代後半だったのですが、40代や50代の方もいらっしゃいました。
そこで、すでに10年単位で起業準備をされている方もいて。
それを見て、「ひょっとしたら準備って終わらないんじゃないか」と思ったんですよね。

田邉
準備は終わらない…!

中田さん
「準備ができてから」「不安がなくなってから」と起業を迷っていると、恐らく決断する瞬間は永遠にこないだろうと思ったんです。それなら何もないけどまずはやってみるしかない、と。
すぐに会社名を決めて、登記して、名刺をつくりました。友人や同僚、これまでお付き合いのあったお客さまにも起業したことを伝えましたね。


中田さん
すると、不思議と「なんとかしないと」という気持ちが湧いてくるんです。

田邉
つじつまを合わせにいくというか。

中田さん
そうそう、まさに。「これお願いできる?」と言われて「できます!」と答えたら、なんとかより良いものを仕上げていく。そうやって進みだして、今に至ります。

田邉
とりあえず「やってみる」ことから始まったんですね。
あらためて、中田さんがキャリアを積むうえで大切にしていることをお伺いしてもいいですか?

中田さん
私自身はキャリアを「積む」とはあまり考えていません。過去にどういう経験をしてきたかよりも、今できること・今どうしたいかのほうが大切だと思っているからです。積んできたキャリアって結局、過去のものというか。
たとえば株式投資で、1年前に10万円で買った株が今1万円になっていたとして、どうしますか?

田邉
10万円かけた株式が1万円になってしまったと思うと悔しいので、持っておきたいですね…

中田さん
実はそれ、「サンクコスト」と呼ばれる心理効果で、株を買ってからの1年間でかけた時間や労力が無駄になるのを避けて、今の判断に影響を与えてしまうんです。
本来であれば、株を買ってから1年間の間にどういう苦労をしたか、どういう感情だったかは関係ありません。もしその株が“今”1万円で売っていたら買いたいかどうか、だけで決めるのが正しい判断です。
これはキャリアにおいても言えることで、「今の仕事は楽しくないけど、今後役職があがるから」とか「勤続年数が長くなったから、今辞めるのはもったいない」とか、そう考えてしまうことってありますよね。
田邉「確かに、心当たりがあります…」

中田さん
「過去がどうだから、今それをする」というよりも、今どうしたいかを優先したほうがいいと私は思っています。これまで貯めてきたマイルが失効するから飛行機に乗る、みたいなことって本末転倒じゃないですか。
過去の自分よりも、今ここにいる最新版の自分でどうできるか、どうしたいか。“今”を本番にしないと、ずっと準備期間になってしまうと思うんですよ。
今、自分が求めるものが“はたらくWell-being”になっていく

田邉
ぶっちゃけ、中田さんは今のお仕事が好きですか?

中田さん
好きですね。ただ、もちろん好きなときばかりではなく、大変なときも、面倒くさいなと感じるときもありますよ(笑)。
でも私自身は、仕事は好きでなきゃいけないとも思っていなくて。好きでも好きじゃなくても、いろんなスタンスがあっていい。
私は起業していることもあり、仕事とプライベートの境目がそれほどありませんが、きっちり分けてもいい。一人ひとりのスタイルと、状況に合わせたスタンスがあると思いますね。


中田さん
そう思うと、やっぱり“今”自分が何を求めているかを考えて、見つけることが“はたらくWell-being”への近道だと思います。お金を稼ぎたいのか、社会に影響を与えるような仕事に携わりたいのか、目の前の人からの感謝がほしいのか。
もっと言うと、自分がどういう人間になりたいか、どういう生活をしたいかを考えたうえで、その理想のあり方に、着実に向かっているという実感があることが“はたらくWell-being”なのかなと思いますね。
<取材・文=田邉 なつほ>
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