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J発足、スタジアム建設…カシマの歴史を知る地元建設会社・社長が考える「おもてなしの場」の必要性

J発足、スタジアム建設…カシマの歴史を知る地元建設会社・社長が考える「おもてなしの場」の必要性

【連載インタビュー】カシマの変遷と「No.12」プロジェクトが生む新たな風

新R25編集部

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茨城県鹿嶋市は、鹿島アントラーズのホームタウンとして知られるサッカーの聖地であり、地域の人々が一体となって支える活気ある町でもある。

この地に新たな賑わいを創出するプロジェクトとして、地域の魅力を発信する宿泊施設「No.12 Kashima Fan Zone(以下、No.12)」が2025年3月にオープンした。

プロジェクトを推進するのは、ツキヒホールディングス株式会社と、鹿島アントラーズFC代表取締役社長を務める小泉文明氏率いる株式会社KX

「地方創生」×「スポーツ」×「リカバリー」をテーマに、スポーツを軸とした新しい地域の活性化モデルを打ち出し、ファンや地域住民が心から楽しめる場を提供することを目指している。

地域の未来を掘り起こし、次世代へつなぐ

――そう語るのは、鹿嶋市を拠点に、公共事業や建築業を通じてインフラ整備を支えてきた株式会社大地の代表取締役・菅谷明良さん

陸上自衛隊を退官後、22歳で建設業界に入り、以来35年以上にわたり鹿行地域の発展に尽力してきた。

地域に密着した公共工事を手掛ける一方、災害に強い町づくりのために推進工事やセミシールド工事といった高度な技術を導入し、多くの実績を築いてきた菅谷さん。

今回、「No.12」のプロジェクトへの参画を通して、地域の未来に託す想いや、カシマの発展にかける情熱について語っていただいた。

建設業でカシマを支え、未来へ推進していく株式会社大地

杉山

株式会社大地さまの事業内容について教えていただけますか?

菅谷さん

私たちは土木工事や建設工事、地下工事を手掛けており、特に公共事業が中心です。

地下工事ではセミシールド工法を用いてトンネルを掘る作業を行っています。

杉山

シールド工法とは、具体的にどのような工法なのでしょうか?

菅谷さん

シールド工法とは、シールドマシンという専用の掘削機を使ってトンネルを掘る工法のことです。

まず縦穴を掘り、そこから横に掘り進める形でトンネルを作ります。

道路や線路の下を掘る際に地表を傷つけずに進められるので、交通渋滞などを回避できます。

杉山

最初は横ではなく縦から掘るんですね!

菅谷さん

そうです。

道路や線路の下を横断する際、地表を掘らずに地下で進めることで交通渋滞などを回避できます。

直径3メートルのトンネルから、排水管のような小さなものまで対応しています。

杉山

それはまさに町のライフラインを支える重要な工事ですね。

災害に強い町づくりと伺ったのですが、具体的にはどのような取り組みをされているんですか?

菅谷さん

先ほどお話ししていたシールド工法は非開削工事と定義され、地震や液状化による影響を受けにくいという特徴があります。

地山をそのまま残して工事を進めるため、地表の乱れによる影響を最小限に抑えることができ、震災時にも強いインフラを作ることが可能です。

杉山

なるほど、災害対策にも直結しているんですね。

ところで、建設業の分野では若年層の入職が課題だと聞きますが、何か取り組みはされていますか?

菅谷さん

はい。毎年、工業高校や専門学校、中学校の学生を対象に現場見学会を実施しています。

また、最近では低学年の子どもたちへのアプローチも進めています。

建設業は職種も多いので、もっと知ってもらうことが大事だと思っています。

杉山

見学会ではどのような活動をされているんですか?

菅谷さん

シールドマシンに地域の子どもたちが絵を描くイベントも行いました。

自分たちが絵を描いたマシンが実際に工事で使われているんだと実感してもらうことで、建設業に興味を持ってもらえればうれしいですね。

鹿島アントラーズ誕生をきっかけに地域の壁を越えた町には一体感が生まれました

杉山

カシマの町について、菅谷さんが感じている魅力や変化を教えていただけますか?

菅谷さん

Jリーグが発足した当時を思い返すと、日本全体がJリーグ熱で盛り上がっていて、カシマでもスタジアムの建設は大きな話題になりましたね。

地元は本当に大騒ぎでした。

杉山

茨城県立カシマサッカースタジアムの建設は、この地域にとって大きな転機だったんですね。

菅谷さん

そうですね。

それまでは地元農家と企業で働く人たちの間に、ある種の壁があったんだと思います。

農家の方々は村の共同体的なつながりが強く、企業側の人たちは工場に近いコミュニティを形成していて、お互いが交わることはあまりないと感じてました。

でも“鹿島アントラーズ”という共通の目標ができ、一緒にスタジアムで応援することで、少しずつ垣根が薄れていったように思います。

杉山

鹿島アントラーズが、人々を結びつけるきっかけになったんですね。

当時の地域の雰囲気はどうでしたか?

菅谷さん

とにかく大騒ぎでしたよ。

当時、監督や選手たちもファミレス、蕎麦屋をはじめ、町中で見かけていたので、地元の人たちはすぐに親近感を持ったんです。

そんな距離感の近さが地域とクラブの一体感を作り出していましたね。

杉山

まさに鹿島アントラーズが地域の一部になったわけですね。

今のカシマに”おもてなし”ができる場必要だと感じてました

杉山

今回の「No.12」プロジェクトにどのような経緯で参画されたのでしょうか?

菅谷さん

これまでは、カシマに来てくれる方々に対して、きちんと“おもてなし”できる場がなかったんですよね。

日韓ワールドカップや東京オリンピックのときも、「どこに宿泊するの?」「食事するレストランや移動手段はどうなるの?」などの話題で持ちきりでした。

でも、このようなチャンスを行動に移すタイミングを逃してしまっていたように思います。

本来なら地元の民間企業、行政機関が一丸となって取り組むべきだったと思いますが、なかなか民のちから・官のちからだけでは実現するのは難しい状況でした。

そんな流れが続いていましたが、今回KXさんが先陣を切ってくれたので、それなら応援しよう思ったんです。

杉山

そうだったんですね。

本プロジェクトについて、どのような経緯で知ったのですか?

菅谷さん

最初は地域の金融機関の支店長からの紹介でした。

彼はこれまで支店長を務めた方のなかでも特に地域密着型で、カシマの現状を見て「ここはこう改善できる」と具体的な提案を持ってきてくれたんです。

実際に県内をくまなく歩き回って課題を理解している方で、非常に魅力を感じました。

地域に何かを起こさなきゃいけないという彼の情熱に導かれ、私たちも地域の活性化につながるならばと率先して行動に移そうと思ったんです。

杉山

菅谷さんご自身も、地域をより良くするためのビジョンをお持ちだったからこそ、このプロジェクトが実現に向けて動き出したのですね。

菅谷さん

地域の人たちがこのプロジェクトに触れることで、少しでもカシマの魅力を再認識してもらえればと思っています。

もちろん課題は多いですが、挑戦する価値は十分にあると信じています。

“何かを変える”一歩を踏み出す時だと思っています。

杉山

今後、カシマや鹿行地域がどのようになっていくべきだとお考えですか?

菅谷さん

これまでのカシマは、住友金属(現在の日本製鉄)といった大きな企業に少し甘えてきた部分があったと思うんです。

地域の人たちもそれに頼りすぎていた。

2024年末には2基あった高炉が1基廃炉する予定なんです。炉がひとつ無くなることで、人員削減が進むといった事態になると、地域全体がかなりの影響を受けると思います。

ただカシマには、これだけ豊かな環境や観光資源があるのに、もっと早く活用してこなかったのはなぜだろうって、今でも考えてしまいます。

杉山

たしかに、カシマには自然や観光資源が多いイメージです。具体的にはどんな資源があるのでしょう?

菅谷さん

太平洋を一望する鹿島灘の海岸や夕日に映える北浦湖畔、常陸国一之宮であり日本建国武道の神様の鹿島神宮といった観光スポットがありますね。

でも、それらをもっと多くの人に楽しんでもらう仕組みがまだまだ不十分なんだと思います。

他県からサーファーの方もたくさん来るけど、サーフィンしたあとに観光などせず、すぐ帰ってしまう。

杉山

せっかく来てくれたのに、地域経済に結びつかないというのはもったいないですね。

観光客にもっと長く滞在してもらう仕組みが必要なんでしょうか?

菅谷さん

そうですね。

たとえば海水浴シーズンに限らず楽しめる下津・平井海岸の環境整備や、海岸線に沿ったシーサイド道路の整備されれば、オールシーズンでのにぎわいに結びつくのではないかな…と。

さまざまな関係などでなかなか進まないことも多いですが、このままだと現状維持どころか、少しずつ衰退してしまう可能性があると思います。

杉山

なるほど…

そのような課題を解決するきっかけとなるようなプロジェクトはあるのでしょうか?

菅谷さん

現在進行中の「No.12」プロジェクトが、ひとつの突破口になると考えています。

これは鹿行地域全体にとって、観光資源を活かす大きなチャンスです。

これを成功させて、より多くの人を呼び込むきっかけを作りたいですね。

杉山

たしかに、こういったプロジェクトがあれば、観光客だけでなく地元の人にも新しい価値を提供できますね。

菅谷さん

ただ、重要なのは“カシマ”という名称で連想する小さな枠に囚われないことです。

“鹿島”アントラーズと冠しているから、スタジアムや「No.12」の施設が建つ場所だからといって、鹿嶋市や鹿島神宮周辺地域だけに固執するのではなく、鹿行地域全体を視野に入れるべきだと思います。

広い意味で地域がひとつになれば、将来的な発展につながるはずです。

杉山

鹿行地域全体の発展を考えることが、カシマにも良い影響を与えるということですね。

菅谷さん

その通りです。

未来の子どもたちのためにも、地域が一丸となって“何かを変える”一歩を踏み出すときだと思っています。

カシマの魅力を五感で感じて、心に残るひとときを

杉山

では最後に、「No.12」やカシマを訪れる方々へ、メッセージをお願いできますか?

菅谷さん

そうですね…

まず一言、皆さん、イノシシにはお気をつけください(笑)。猪突猛進で突っ込んできますから、防護柵を設置してもらわないと。

…って、これは冗談ですけどね(笑)。

杉山

それはちょっとびっくりしました(笑)。

菅谷さん

カシマを訪れる方へのメッセージとしては、「No.12」は“自分の好きなものに没頭する”というコンセプトだと思うので、サッカー応援に来られる方もそうですが、たとえばアイドルイベントや趣味を共有したい人たちが集まる場としても楽しんでもらいたいです。

好きなことを思いっきり楽しんで、日常の疲れをリセットしていただけたらうれしいですね。

杉山

なるほど。

自分の“好き”を解放できる場所というわけですね。

菅谷さん

そうですね。

そして訪れる人々が、地域の良さも感じ取ってくれるとうれしいです。

カシマは歴史ある鹿島神宮や、海や自然の豊かさもあります。それらとともに、この「No.12」が“楽しさ”や“癒し”を提供できる場所になればいいなと願っています。

杉山

カシマの魅力を知るきっかけになりそうですね。

訪れる方が新しい発見や感動を持ち帰る場所になれば素敵だと思います。

菅谷さん

その通りです。ぜひ、思いっきり楽しんでください。

そしてまた何度でも訪れてもらえる場所になれば幸いです!

杉山

本日は素敵なお話をありがとうございました!

〈聞き手=杉山(デジタルハリウッドSTUDIO by SAKURA 受講生)〉

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