企業インタビュー
「意識高い人が多すぎで…」社員のネガ発信も利用。西崎康平の“採用に効く”メディア活用論
新連載「メディ活アワード」
新R25編集部
あなたの企業は、「メディ活」できてますか?
企業からの情報が消費者に届きにくくなっている時代に、“企業発信”も変革する必要があるはず。「メディアからの取材されたらラッキー」「取り上げられて終わり」のような受け身ではなく、能動的にメディアを活用し、掲載事例を事業成長につなげていくべきなのでは?
新R25の新連載「メディ活アワード」では、メディアを活用したアクティブな企業発信「メディ活」を取り上げ、企業発信のありかたをアップデートしていきます。
今回は、トゥモローゲート株式会社の「ブラックな社長」こと西崎康平さんに、お話を聞いてきました。
企業の採用ブランディングを支援して20年。自社の採用も、約5割がSNS経由だという西崎さん。採用がうまくいくメディア活用論とは…?
〈聞き手=宮内真希(新R25編集部)〉
“退職エントリ”に「なんか気持ち悪い」。採用におけるメディア活用のカギは…
宮内
西崎さんは、企業が採用のためにメディアで発信していくうえで、何を大事にすべきだと思いますか?
西崎さん
「いかにさらけだせるか」というところ。
西崎さん
たとえば、採用ブランディングの一環で辞めた社員に退職の理由をブログで書いてもらったことがあるんですね。
宮内
よくある「退職エントリ」みたいな?
西崎さん
…それにちょっと違和感があってですね。
だいたい辞める人って「こんなにいい会社だった」「面白かった」「みんな働いたほうがいいよ」って書くじゃないですか。
「けど辞めるんでしょ?」っていう。これがなんか気持ち悪くて。
宮内
たしかに(笑)。
西崎さん
真逆をやったろうと思ったんですよ。辞めた社員に「本当は何が嫌で辞めたのか」っていうリアルな意見だけを書いてもらった。
そしたら、「SNSで発信するのが嫌だ」「意識高い社員が多すぎて逆にプレッシャーでしんどい」とか、まあ生々しく書いてくれまして。
宮内
エグくないですか?
西崎さん
「しんどそうやからやめておこうかな」って応募者が減るかな…とも思ってたんですけど。この記事がバズりまして。
むしろ9割以上が好印象というか、「そこまで言ってくれる会社なら安心」っていう意見が多かったんです。
しかも、うちだけじゃなくて支援先の企業の採用でも応募者が増えたんですよ。「あ、求職者は企業の弱みを求めているんだな」と。
宮内
たしかに…企業って自社のいいところしか言わないから、元社員の悪い口コミをめっちゃ探しちゃいます。
西崎さん
そういう人が多いから、弱みをさらけだすだけで差別化できますよね。
西崎さん
ただ、役割は分けて考えたほうがいいかもしれない。課題感とか弱みみたいな恥ずかしい部分をメディアでさらけだしていく“外的なアプローチ”で集客をして。
会社説明会とか面接とかのクローズドな環境での“内的なアプローチ”で応募者との絆を深める。
僕らだったら「こんなオフィスをこんな思いでつくっていますよ」とか、弱みを上回る部分をセットで伝えているから信頼してもらえる。バランスの問題ですよね。
人事はSNSに力を入れるべき? 「イベント告知だけ」になりがちなアカウントはどうすれば?
宮内
御社では、社内企画で社員のフォロワー数を競い合ってたじゃないですか。やっぱり、人事はどんどんSNSをやった方がいいんでしょうか?
西崎さん
「何のためにやるのか」の想いがないと、三日坊主になるだけかなと。
なんとなく始めちゃうと、「いつ説明会やります」とか「こういうイベントがあります」みたいな発信になりがちじゃないですか。
宮内
よく見ますね。そういうアカウント…
西崎さん
そもそも一般ユーザーからしたら、知らない会社の説明会とか面接情報って価値がないんですよね。だから当然投稿も伸びない。
じゃあどうすれば…
西崎さん
そうならないためには、「なぜSNSをやるのか?」という目的に立ち返ったほうがいい。
僕たちで言うと、「2025年までに大阪で一番オモシロイ会社をつくる」という中期のビジョンを実現するために、8つの項目を掲げていて。
そのなかに「社長がオモシロイ」「社員がオモシロイ」という項目があるんですよ。
宮内
なるほど。でも「オモシロイ」ってあいまいな定義ですよね?
西崎さん
だから、「社長・社員がオモシロイの定量ゴールって何よ?」って社員から公募したんです。
そしたら「SNSのフォロワー数◯人」という意見が出てきて。じゃあその数字を達成するために、ユーザーに求められている自分たちの「オモシロイ武器」を発信していこうよと。
それがスタートでした。
宮内
社員のアイデアから始まったんですね。
西崎さん
もちろん「いつまでにこっちの方向に行こう」っていうビジョンは経営者が決めなきゃいけないんですけど。
「そのために何が必要なのか」というアイデアは社員に考えてもらって、定量的なゴールに落とし込んでいます。
そのゴールが明確な評価基準になるし、社員たちの想いにもなる。うちの社員がSNSを続けてくれる理由はそれです。
「しょうもな」ぐらいでいい。人事の独断でできるSNS施策はいろいろある
宮内
とはいえ、ビジョンがふわっとしてる会社もあるじゃないですか。自分がもし人事だったら「さすがに経営のビジョンの話まではできないな」って壁にぶち当たると思うんです。
人事が独断ですぐできる採用施策ってないんですか?
西崎さん
さっきの「さらけだす」と近いんですけれども…
YouTubeで採用面接の評価シートを解説する動画を出そうという案が出て。これはすごいよかったですね。
宮内
またエグいことを…
西崎さん
あと、SNSでいいねを押してくれた人から面接する「いいね採用」というアイデアも実行しています。
これが270万インプレッションぐらいついて。新規の応募者数を獲得するアクションとしては効果が高かったです。
あとは、「なんば広告ジャック」という企画。
宮内
もう面白い。
西崎さん
大阪の地下鉄なんば駅の柱を18本くらい買い取って、「社員の顔写真」と「公約」と「QRコード」を貼るんですね。
で、その1カ月間の選挙期間のなかで誰が一番フォロワーを増やせるかっていう「ブラックな社員選抜総選挙」をやったんですけれども。
これで1人採用が決まりました。
宮内
そういう面白い企画は、人事の社員から上がってくるんですか?
西崎さん
そうです。コントロールは必要ですけど、「しょうもな」ってクスッと笑えるぐらいのラフなほうが、人も集まるしやってて面白いと思うんですよね。
田端信太郎さんに指摘された「トゥモローゲートの弱点」
宮内
ちなみに、西崎さんは新R25の新サービス「企業トピ」を活用してくれてるじゃないですか。
宮内
これも「さらけだし」のメディア活用の一貫として?
西崎さん
そうですね。
CTO(Chief Twitter Officer)だった田端信太郎さんから「お前らは自分たちのことばかり発信してるけど、肝心な“どんなことをしてる会社なのか”が伝わってこない」と言われてしまったので、そこをクリアにしつつ、採用にもつなげるのが狙いでした。
宮内
率直に、いかがでしたか…?
西崎さん
まず価格設定が安い。ベンチャーが発注しやすい10万円のコストで、ビジネスに対する新R25の“お墨付き”がもらえるっていうのはありがたい。
第三者視点で褒めてもらえると、すごく説得力がでますよね。
宮内
まさに、そこがこのメディアの価値だと思っているので、よかったです。
西崎さん
サービスの切り口は、忖度なく面白いです!
それこそ、SNSで拡散して応募につなげたり、求職者にLINEで一斉配信したり、採用に効かせていこうと思ってます。
トゥモローゲート西崎さんの“メディ活のキモ”は、「さらけ出すことで差別化し、採用につなげる」ことでした。
たしかに、きれいごとばかりの企業発信や、忖度ばかりの退職エントリに違和感がある人は多いはず…。そんな世の中のインサイトをうまく突いた“メディ活”だと言えますね。
連載「メディ活アワード」では、これからも、アクティブな企業発信を事業につなげている人々を取材していきます!乞うご期待。
〈執筆=山田三奈/編集=天野俊吉〉
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