企業インタビュー
「4つの点で事業に効かせられます」PR界の実力者・下村彩紀子が語る“スタートアップ広報・PR”実践編
「長期的な資産」がつくれます
新R25編集部
あなたの企業は、「メディ活」できてますか?
企業からの情報が消費者に届きにくくなっている時代に、“企業発信”も変革する必要があるはず。「メディアから取材されたらラッキー」 「取り上げられて終わり」のような受け身ではなく、能動的にメディアを活用し、掲載事例を事業成長につなげていくべきなのかも…
新R25の新連載「メディ活アワード」では、メディアを活用したアクティブ企業発信「メディ活」を取り上げ、企業発信のありかたをアップデートしていきます。
今回は、「株式会社しんめ」代表の下村彩紀子さんにお話を聞きました。
「食べチョク」を運営するビビッドガーデンに入社し、社員が1桁ほどのときから1人で広報を担当。広報PRの責任者として4年間活躍した後、2023年4月に株式会社しんめを起業した下村さん。現在は、さまざまな企業の広報PRを支援しています。
プロによる「スタートアップの事業につながる広報・PR」を教えてもらいました。
〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉
スタートアップが「広報・PR」を事業につなげるには?
宮内
今日は「事業につなげる広報・PR」についてお話を聞きたくて…
そもそもスタートアップの経営者のなかには、何を目的にやるのか?というのが曖昧な方もいると思うんです。
下村さん
そうですね...、目的は大きく4つあります。
1つはコミュニケーションコストを下げることです。初めて商談をするお客様がすでに自社のこと・強みを知っている状態から入ると、受注確度も上がりますし、受注単価も上がっていきます。
宮内
なるほど。それは事業に直結しますね。
下村さん
2つ目は純粋に購入者や取引先を増やすこと。
3つ目は人材採用が難化してきている今、採用候補者を増やすこと。
4つ目は“モメンタム”(勢い)ですね。
宮内
モメンタム?
下村さん
勢いある企業として社外から注目される瞬間があると、社員が「ここで働いてるって素晴らしいことだ」と思えたり、ご家族などからも「サービスや製品を見たよ」と言ってもらって誇りになったりします。
宮内
ありそうですね…!
下村さん
その4つを達成するために、私は”情報マネジメント”という言葉をよく使うんですけど…
下村さん
「会社の評判、口コミ、認識をどう広めていくか?」というのも、広報の役割だと思っていて。
顧客などのステークホルダーは、まわりから仕入れた情報や評判を、意思決定の参考にしてる。
なので、そういった会社の情報をマネジメントして、届けたい先に届く発信をしていくことが必要です。
宮内
情報マネジメント、大事なキーワードですね…
下村さんが教える、実践的「広報のフェーズ」
宮内
具体的には、スタートアップの広報活動ってどう進めていったらいいんでしょうか?
下村さん
まず、自社にとって武器は何なのかなど、ファクトを整理するところから始めます。ここがブレてしまうと、発信内容もブレてきてしまうので。
宮内
人によって言ってることが違うみたいな。ありそうだな…
下村さん
発信したいことが明確になったら、まずは「量強化フェーズ」。
リリースバリューがあるような企画を作ります。SNSやnoteだったり、「企業インタビュー」などのメディアを活用しながら、量を作りにいきます。
宮内
まずは量なんだ…メモします。
下村さん
はい。次に、“重点媒体”や理想の文脈を設定して「質を上げるフェーズ」になります。
広報以外にも営業部門など、何らかの発信をしている部門があると思うので、他部門の論調なども含めて発信の仕方を整理していきます。
下村さん
このフェーズでは、目標のメディア露出数を10件と決めたから、何が何でも10件達成させる!というよりも、正しく、伝えたい文脈で伝えたいステークホルダーに届けられるかどうかを見極めることも必要です。
宮内
量より質に寄っていくんですね。
下村さん
近い話ですが、大きなメディアだけを狙うのではなく、「情報のサイクル」を意識することも必要で…
宮内
情報のサイクル?
下村さん
テレビに出たい!となると、テレビばかり狙いたくなってしまうというのはあるあるなんですが、情報は小さなところからサイクルしていくもの。
発行部数が1~3万部くらいの業界紙から経済誌に広がって、経済誌から一般雑誌に広がって、一般雑誌からラジオに広がって、地方テレビに広がって全国に広がって...、というサイクルが回っていくんですよ。
そのサイクルをどう回すかも、意図的に設計できるといいですね。
策士すぎ…
宮内
小さい業界紙から全国テレビに...、夢がありますね…!
Webメディアはどうでしょう?
下村さん
Webメディアも同様で、あまり知られていないメディアであっても、ネット検索をしたらヒットするケースもありますので、狙いたいキーワードで検索結果の上位に出てくれば流入につなげられます。SEOの考え方に近いですね。
「“オウンドメディアと第三者メディアの中間の視点”は強み」
宮内
今ちらっと触れていただきましたが…
下村さんにも新R25の「企業インタビュー」をご利用いただきましたが、実際に利用してみていかがでしたか?
下村さん
思っていたよりも簡単に依頼できてびっくりしました。
あと、すごく特徴的だと思ったのが…自社のオウンドメディアで記事を書く場合だと自社視点での発信になりますが、外部メディアの場合は第三者視点になる。
でも「企業インタビュー」はその中間といいますか、発信したいことを言いたいように言えますし、第三者の視点も入っていて、すごくいいなと思いました。
宮内
ありがとうございます。ちなみに、企業インタビューは10万円とはいえ、お金のかかる施策になりますが…金額についてはどう考えられますか?
下村さん
広告の場合、100万円払ったから300万円のインパクトが返ってきます、というモデルですが、広報は、より情報を世の中にストックさせていく感覚が強い。ストックが資産になっていくんですよね。
かけた金額が今すぐに返ってこなくても、2~3年後に返ってくる可能性はあるので、その視点も含めて投資判断をしたほうがいいと考えています。
そう考えると、企業インタビューの10万円で半永久的に情報を世の中にストックできるというのはとても良いと思いますね。
宮内
広報の投資には長期的な視点が必要なんですね。
下村さん
新R25の読者の方は、若手のビジネスパーソンが多いかなと思います。
なので、記事をストックしておくことで、検索したときに見てもらえるという視点も持って決めていくのがいいかなと思います。
「食べチョク」というスタートアップで、広報・PRを武器に活躍されてきた下村さん。
広報・PR領域の実践的な学びを惜しげなく披露してくださいました…!
スタートアップ界隈で、広報・PRに携わる方は、ぜひ何度も読み返してみてください。
連載「メディ活アワード」では、これからも、アクティブな企業発信を事業につなげている人々を取材していきます!乞うご期待。
〈文=天野俊吉〉
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