

サッカーだけじゃない。地方創生プロジェクト「No.12」で進化する“カシマ”の知られざる魅力
【連載インタビュー】カシマの変遷と「No.12」プロジェクトが生む新たな風
新R25編集部
茨城県鹿嶋市は、鹿島アントラーズのホームタウンとして知られるサッカーの聖地であり、地域が一体となって支える町でもある。
この地に新たな賑わいを創出するプロジェクトとして、地域の魅力を発信する宿泊施設「No.12 KASHIMA FAN ZONE(以下「No.12」)」が2025年にオープンを迎えた。
プロジェクトを推進するのは、ツキヒホールディングス株式会社と、鹿島アントラーズFC代表取締役社長を務める小泉文明氏率いる株式会社KX。「地方創生」×「スポーツ」×「リカバリー」をテーマに、スポーツを軸とした新しい地域の活性化モデルを打ち出し、ファンや地域住民が心から楽しめる場を提供することを目指している。
「生まれ育った鹿島に恩返しをしたいと日頃からずっと思っていました。」
—— そう語るのは、電気設備の工事を中心に行う青塚電気工事株式会社の代表取締役、⻘塚⼤志さんだ。公共事業から民間施設まで、広範囲にわたる工事を手掛け、カシマのライフラインを支えている。
今回、「No.12」のプロジェクトへの参画を通して、地域の未来に託す思いや、カシマの発展にかける情熱について語っていただいた。
公共事業から民間施設まで、地域のインフラを影で支える青塚電気工事


川島
青塚電気工事さまの事業内容について教えていただけますか?

青塚さん
1983年に創立し、一昨年40周年を迎え、今年で42年目になります。
父親の代から始まり、私は2代目です。最初は個人経営だったのでいろいろ苦労があったようですが、少しずつ仕事をいただきながら成長してきました。
当時は高い場所での危険な作業も多くあったと聞いています。今はフルハーネスが普及して安全になりましたが、当時は安全基準が緩かった時代でした。

川島
電気工事のなかで、おもにどういった部分を担当されているのでしょうか?

青塚さん
一般家屋の電気工事から、大きな施設、さらには太陽光発電まで、幅広く対応しています。
電気工事にもいろいろな分野があって、たとえば太陽光や弱電設備、火災報知器など、それぞれ専門性が求められます。
うちはおもに強電設備という、高圧の電気工事をメインで行っています。ほかの分野については協力業者さんと一緒に施工しています。

川島
電気工事といっても、本当に幅広いんですね。青塚さんのようにいろいろな分野を手掛けている会社は珍しいのでしょうか?

青塚さん
そうですね。小さい会社さんでは、たとえば木造住宅の配線しかやらないことも多いです。
ですが、うちでは公共事業から民間の建物まで幅広く施工しており、そのなかで培った知識や経験をもとに技術を磨いています。

川島
その技術というのは、具体的には配線の仕組みづくりのようなことなのでしょうか?

青塚さん
それもありますね。一般の配線作業でも、熟練の職人がやるのと経験が浅い方がやるのでは、仕上がりの美しさや正確さが大きく異なります。
また、電気屋が手掛ける配線は、なるべく見えないようにするのが理想です。
「ここを通しているんだな」とわかるよりも、どこを通しているのかわからないくらい、きれいに隠すほうがいいんです。

川島
身近なようで意外と知らなかった電気工事の世界について、少しわかってきました。
もしよければ、この仕事の面白いところ、電気を扱う仕事ならではの魅力を教えてください。

青塚さん
やっぱり修繕や新規の工事など、お客さまに喜んでもらえるところですね。
「電気が使えなくなった」と困っている方のところへ行って修繕すると、「ありがとうございます!」と本当に心から感謝されるんです。その瞬間がやっぱり一番うれしいですね。
ライフラインとして電気は非常に重要ですし、そういう場面で自社が役に立てることにやりがいを感じています。
アントラーズで一躍有名になりましたが、それまでは海沿いの静かな町でした


川島
カシマの町について、青塚さんが感じる魅力や変化を教えていただけますか?

青塚さん
そうですね。今はもうチェーン店や外食店がたくさんありますけど、僕が子どものころは、ドムドムバーガーというハンバーガーの店が1店舗あるかないか、というくらい何もない町でした。
でも大きく変わったのは、カシマサッカースタジアムができて、Jリーグが始まってからですね。それで鹿嶋市の認知度があがったと思います。
そのころから、一気にいろいろなお店が増えた印象がありますね。

川島
お店がたくさんあって賑わいのある町というよりは、以前は素朴な一面もある町だったということですね。
幼少期はどのように過ごされていましたか? お店があまりないとなると、外で遊ぶことが多かったのでしょうか。

青塚さん
そうですね。高校生くらいのころには小さなゲームセンターがちらほらありましたけど、基本的には外で遊ぶことが多かったです。
鹿島アントラーズができる前は、外から見ても本当に鹿嶋市? どこ? って感じだったと思います(笑)。

川島
青塚さんはこの近くのご出身でしょうか。すぐ近くに海もあって、いいところですよね。

青塚さん
はい、カシマで生まれ育ちました。僕自身はマリンスポーツはしてきませんでしたが、一部のサーファーの間では「カシマの波はいい」と評判のようです。
「No.12」は待ち望んでいた地元への恩返しのチャンス


川島
参画事業者さんのなかでも、青塚さんはかなり最初の段階で参加されたと伺いました。
グランピング施設「No.12」のプロジェクトについて、参画の経緯や理由を教えていただけますか?

青塚さん
やはり一番は、私自身がカシマで育った人間だということです。
またカシマで自営業を営む一人として、地元に恩返ししたいという思いがずっとありました。
ただ、その方法がなかなか見つからなかったんですよね。
そんなときに、このプロジェクトのお話をいただいて「カシマに住む人、おとずれる人のための地方創生の取り組みです」と説明を受けた瞬間、これだ、と思いました。

川島
カシマへの恩返しがきっかけだったのですね。施設のインフラにも関わる会社さんに参画いただけたのは、とても心強いのではないでしょうか。
実際、「No.12」施設内の電気工事や空間づくりにも、青塚さんが関わっていらっしゃると伺いました。空間デザインについても普段から勉強されているのでしょうか?

青塚さん
専門知識というほどではないですが、たとえば飲み屋さんの店舗を手掛ける際には、「今よりも少し暗めの照明にした方が雰囲気がよくなるかもしれないですね」というような、場所にあったご提案をすることはあります。

川島
ということは、技術だけではなくて感性も重要ですね。

青塚さん
そうですね。いろいろな経験を積むなかで、そういう感性や感覚を磨いていくことは大事なことだと思います。

川島
「こんな感じにしたい」というニュアンスで要望を伝えてくるお客さまもいらっしゃるなかで、青塚さんの相談しやすいお人柄は、きっとお客さまに安心感を与えているのではないでしょうか。
身近に気軽に相談できる相手がいるというのは、とても心強いと思います。
“楽しめる宿泊施設”という新しい提案で、カシマに変化が生まれることを期待しています


川島
今後、鹿行地域やカシマがどうなってほしいと考えていますか?

青塚さん
やっぱりこのプロジェクトによって、楽しめる宿泊施設ができるというのが大きいですね。
スタジアム帰りの方や鹿島神宮を訪れた方が泊まれるようになりますし、サウナなどを目的にゆっくり過ごす方が増えると思います。
それが地域全体の集客につながり、カシマの飲食店や観光地にも必ずよい影響が出てくると信じています。カシマにとって、これが大きな変化になることを期待しています。

川島
宿泊という意味合いでは、現在でもいくつかビジネスホテルはありますが、「No.12」はまた違った場所になりそうですね。

青塚さん
そうですね。今あるのはビジネスホテルが中心で、業者さんが泊まるための場所というイメージが強いです。
鹿島臨海工業地帯では「定修(ていしゅう)」といって、大規模工事の際に全国から作業員が集まります。
その時期はビジネスホテルが満室になってしまい、観光客が泊まる場所が全然足りなくなるんですよね。

川島
「No.12」がサッカーの観戦や観光でカシマを訪れた方にとって、次の日もカシマで楽しめるような「つなぎの場所」になるといいですね。これを機に、こういった施設も増えていってほしいですね。

青塚さん
そうなることを願っています。
カシマはやっぱり海鮮が美味しい。一番おすすめは“鹿島灘のはまぐり”

川島
最後に、「No.12」を通じてカシマを訪れる方へのメッセージや、地域の魅力について教えていただけますか?

青塚さん
カシマは食べ物が本当に美味しいんですよ。
たとえば、今の時期だと鹿島だこが有名で、ものすごい弾力があるんです。それに、鹿島灘のはまぐりも絶品ですね。
12月には「はまぐり祭り」という催しがあります。新鮮なはまぐりをその場で焼いて食べることができます。

川島
はまぐりの美味しい時期なんですか?

青塚さん
そうです。はまぐり祭りは海の側の漁港で行うので一番美味しいんですよ。ほかにも鹿島だこなど、地元の美味しいグルメが楽しめます。
カシマには美味しいものがたくさんありますが、個人的にはやっぱりはまぐりが一番おすすめです。
祭りで食べるはまぐりは本当に最高ですよ。アントラーズの試合観戦や鹿島神宮での観光とセットで、ぜひ楽しんでほしいです。

川島
青塚さん、先ほど「趣味はとくにない」とおっしゃっていましたけど、美味しい食べ物に詳しそうですね。
鹿島だこについてもお聞きしたいです。個人的にも気になっているのですが、どこに行けば食べられるのでしょうか。

青塚さん
地元のスーパーでも売られています。食感が普通のたこと全然違って、刺身でも茹でて食べても美味しいですよ。
また、9月の「鹿島だこ祭り」では、地元の飲食店が鹿島だこを使った料理を提供しています。パスタやピザからそばのかき揚げまで、バラエティ豊かですよ。

川島
鹿島だこはカシマの名物なんですね。
カシマに訪れた方には、ぜひ鹿島だことカシマのはまぐり、どちらも味わってみていただきたいですね。
カシマグルメに詳しい青塚さんのおすすめで地元の美味しいご飯屋さんを巡るツアーなんてどうですか? 案内、ぜひよろしくお願いします(笑)。

〈聞き手=川島(デジタルハリウッドSTUDIO by SAKURA 受講生)〉
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