企業インタビュー
大工歴37年、カシマで生まれ育った職人が語る地域の歴史と課題、そして「No.12」の可能性

大工歴37年、カシマで生まれ育った職人が語る地域の歴史と課題、そして「No.12」の可能性

【連載インタビュー】カシマの変遷と「No.12」プロジェクトが生む新たな風

新R25編集部

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茨城県鹿嶋市は、鹿島アントラーズのホームタウンとして知られるサッカーの聖地であり、地域の人々が一体となって支える活気ある町でもある。

この地に新たな賑わいを創出するプロジェクトとして、地域の魅力を発信する宿泊施設「No.12 Kashima Fan Zone(=以下「No.12」)」が2025年3月にオープンを迎えた。

プロジェクトを推進するのは、ツキヒホールディングス株式会社と、鹿島アントラーズFC代表取締役社長を務める小泉文明氏率いる株式会社KX

「地方創生」×「スポーツ」×「リカバリー」をテーマに、スポーツを軸とした新しい地域の活性化モデルを打ち出し、ファンや地域住民が心から楽しめる場を提供することを目指している。

地域の未来を支え、新たな挑戦へ

——そう語るのは、建築業を通じて鹿嶋市を支えてきた株式会社 鹿島美装の猿田さん。高校卒業後、18歳で大工の修行を始め、以来37年間地域に根ざして歩んできた。

30歳で工務店を立ち上げた猿田さんは、2年前、技術の継承とお客さまとの関係を次世代につなぐため、鹿島美装との合併を決断。その背景には、同社の「人を大切にする」という理念への共感があったという。

今回、「No.12」のプロジェクトへの参画を通して、地域の未来に託す想いや、カシマの発展にかける情熱について語っていただいた。

職人の技と人を大事に、地域とともに歩む鹿島美装

杉山さん

猿田さんご自身や鹿島美装さまについてお聞かせください。

猿田さん

私は生まれも育ちも鹿嶋市で、今年で55歳になります。

高校卒業後の18歳から建築の仕事に携わり、大工の修行から始めて以来37年間この道一筋です。

建築、意匠工事、内外装、防水塗装など建築に関わる仕事全般を手掛けています。

以前は自分で工務店を経営していましたが、2年前に鹿島美装と合併しました。子どもたちが会社を継がないこともあり、技術の継承とお客さまとの関係を次世代に残すためにこの選択をしたんです。

鹿島美装の社長の「人を大事にする」という理念に共感できたことも大きな決め手でした。

杉山さん

鹿島美装さんとの合併にはそういった背景があったのですね。

猿田さん

元社長である相談役の方には、ご自宅の工事でもお世話になり、私自身も悩みがあると相談に乗っていただいていました。

「こういうときは、こうしたらいいんじゃないか」とアドバイスをくださる方で、深く尊敬しています。

その方の考え方や姿勢に触れ、「こういう想いで仕事をしているんだな」と共感し、私も見習いたいと思うようになりました。

そうした信頼関係があったからこそ、合併を決断し、今に至っています。

杉山さん

ありがとうございます。

猿田さんの会社と鹿島美装さまの統合で、より良い相乗効果が生まれたということでしょうか?

猿田さん

はい。鹿島美装は組織としての管理体制が整っていました。一方で、私たち職人は現場で体を動かしながら覚えていく“職人気質”の集団です。

それぞれの強みを活かすことで、お客さまにとってより便利に、私たち自身も働きやすい環境が生まれると考えました。

結果的にお客さまにも喜んでいただけて、私たち個人にも、会社にもメリットがある。そんな体制をつくることができました。

杉山さん

素晴らしい関係性ですね。

鹿島美装さまの今後の展望を聞かせてください。

猿田さん

長期的な計画として、まず「人」を大事にしています

社内教育に力を入れ、私自身も含めて常に学びの機会を設けています。

「人を育てる」ことが最優先だと考えています。

杉山さん

具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

猿田さん

職人の世界は技術が身についてはじめて評価される場所です。

ただ、技術を習得したあと、年齢とともにスキルが横ばいになりがちです。そこで終わらせず、「人間としての質」を高められる環境づくりを大切にしています。

社長も「そこで終わりではつまらない」と常に意識してくれています。

杉山さん

職人さんの長期的な成長をサポートすることは重要ですね。

猿田さん

そうなんです。将来的には、独立できるスキルとマインドを持った職人を輩出できる会社になることが理想です。

独立後もつながりを保ち、互いに成長できる関係を築きたいと考えています。

杉山さん

最近は転職が一般的になり、人材育成の継続が難しい面もありますね。

猿田さん

本当に大変です。昨年も新卒社員が入社しましたが、継続が難しい面もあります。

職人として技術を習得するのはもちろん、最終的には指導者として成長してもらわないと、会社全体が次のステージに進めません。

杉山さん

若い世代の価値観も変化していますか?

猿田さん

はい。今の若い方々は、ゆとりのある働き方を求める傾向があります。

それ自体は良いことですが、職人の世界では一定の厳しさと継続が必要です。

だからこそ、会社として柔軟に対応しながら、長く続けられる働きやすい環境を整えていきたいと考えています。

杉山さん

人材育成と働きやすい環境づくり、この二つが重要になりそうですね。

猿田さん

はい。その両方を大切にしながら、これからも地域社会に貢献できる会社を目指していきます。

鹿島アントラーズ誕生がきっかけで町の人の流れも変わりました

杉山さん

先ほど、鹿嶋市で生まれ育って55年とおっしゃいましたが、この町はどのように変わりましたか?

猿田さん

やはり鹿島アントラーズの誕生が大きな転機でした。

30年ほど前、Jリーグ開幕に合わせて茨城県立カシマサッカースタジアムができた頃は、町全体がサッカーの熱気に包まれていました。

当時は入手困難だったチケットも、スタジアムの増築で収容人数が増え、町の人の流れも変わり、鹿島神宮をはじめとする観光スポットも増えました。

杉山さん

鹿島アントラーズの誕生が、カシマ全体の活性化につながったのですね。

猿田さん

そうですね。鹿島神宮という神聖な場所があるのも大きな魅力です。

ただ、カシマには宿泊施設が少ないのが課題です。訪れる方の多くが日帰りになってしまいます。

宿泊できる場所が増えれば、地域をゆっくり楽しんでいただけますし、町全体の経済効果も広がるでしょう。

カシマには鹿島神宮や豊かな自然など、外の方にもっと知っていただきたい魅力がたくさんあります。

「No.12」のような宿泊施設ができれば、観光客の滞在も増えると期待しています。

直感的に「これは面白いプロジェクトが始まる」と感じました

杉山さん

今回の「No.12」プロジェクトにどのような経緯で参画されたのでしょうか?

猿田さん

当初は「面白そうだ」という直感から。新しい挑戦として興味を持ち、代表の笹本とも常に次の展開について話し合っていました。

なかなか一歩を踏み出せずにいたところ、背中を押していただき、参画を決めた形です。他にはない施設を作るという発想に心を動かされました。

私たちは建築の分野で日々研鑽を重ねていますが、今回のプロジェクトからも多くを学んでいます。

むしろ職人の意識も引き締まっています。施工方法にも特に興味があり、それが最大の学びになるかもしれません。

トレーラーハウスを活用した宿泊棟という発想は素晴らしいと思います。この新しい取り組みは私たちの成長にもつながり、カシマをより魅力的な地域にできると期待しています。

「戻りたい」「住んでみたい」と思えるカシマの未来を目指して

杉山さん

長年この地域で暮らしてこられた視点から、猿田さんが考えるカシマの将来像についてお聞かせください。

猿田さん

カシマは自然豊かで歴史も深く、何より人々の温かさが魅力です。これらを大切に守りながら、さらなる発展を目指したいですね。

ただ現状では、若い世代が進学や就職で東京などへ出て、戻ってこないケースが多いのが課題です。

「戻りたい」「移住したい」と思える町づくりが必要だと感じています。

杉山さん

そうした魅力ある町づくりには、どのような要素が必要でしょうか?

猿田さん

まず、働く場所と暮らしやすい環境の充実です。

この地域には仕事の機会も多いのですが、職種や選択肢をさらに増やしていく必要があります。

若い方々の働く場所も重要で、弊社でもしっかりと受け入れていきたいと考えています。また、宿泊施設や観光資源を活かした新しい取り組みで、人々の滞在機会を増やすことも大切です。

「No.12」のような施設がその一助となることを期待しています。訪れた方が「もう少しここにいたい」「住んでみたい」と感じる場所を増やすことで、より多くの人々が集まる町になれば嬉しいですね。

カシマの良さを肌で感じてほしい

杉山さん

最後に、カシマを訪れる方々へメッセージをお願いします。

猿田さん

カシマには数多くの魅力があります。鹿島神宮や鹿島アントラーズはもちろん、豊かな自然や人々の温かさもそのひとつです。

ぜひ一度お越しいただき、カシマの良さを肌で感じてください。地域の人々が築き上げてきたこの町の魅力を楽しんでいただければ幸いです。

杉山さん

本日は貴重なお話をありがとうございました!

〈聞き手=杉山(デジタルハリウッドSTUDIO by SAKURA 受講生)〉

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