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ポジティブに歳を重ねる「Age-Well」が、社会も関わる人も私も“幸せ”にする

ポジティブに歳を重ねる「Age-Well」が、社会も関わる人も私も“幸せ”にする

連載「“はたらくWell-being”を考えよう」

新R25編集部

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リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。

現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。

そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

エイジズム」「Age-Well」という言葉を聞いたことはありますか?

「エイジズム」とは、年齢に対する差別や偏見のこと。たとえば、高齢者だから耳が聞こえないと決めつけて大きな声で話しかけることなどは、エイジズムになります。一方「Age-Well」とは、挑戦と発見を通じて、ポジティブに歳を重ねること。この言葉を提唱し、社会実装を目指しているのが株式会社AgeWellJapanです。

今回紹介するのは、2020年に株式会社AgeWellJapanを起業した赤木円香さん。超高齢化社会が進む日本で「Age-Well 社会の創造」をミッションに掲げています。

主力事業の1つである「もっとメイト」を通して見えた、多世代の“はたらくWell-being”について聞きました。

慶應義塾大学総合政策学部卒業。在学中、人材コンサルティング会社に参画。法人向けのコミュニケーションやホスピタリティ研修の企画・営業を担当。2017年に味の素株式会社に新卒で入社。財務経理部にて決算および原価計算業務を担当。2020年に「Age-Well 社会の創造」を掲げ、株式会社MIHARU(現・株式会社AgeWellJapan)を創業。シニア世代のウェルビーイングを実現する孫世代の相棒サービス「もっとメイト」や多世代コミュニティスペース「モットバ!」を運営。法人や自治体向けに、シニアDXやシニアWell-being事業の企画・運営を支援。超高齢社会のAge-Wellをテーマにしたカンファレンスイベントを主催。2023年にAge-Wellな生き方をデザインする研究所「Age-Well Design Lab」を設立。「IMPACT STARTUP SUMMIT 2024」のピッチコンテストにて大賞を含む4冠受賞。ForbesJAPAN「世界を救う希望NEXT100」選出。メディア出演も多数。「はたらくWell-being AWARDS2025」新たなはたらき方部門を受賞。

きっかけは祖母の一言。「ごめんね」と言わせない社会をつくるために

田邉

本日はよろしくお願いします!

まずはじめに、赤木さんが株式会社AgeWellJapanを立ち上げたのはどうしてなのでしょうか? 起業のきっかけを教えてください。

赤木さん

きっかけは、祖母の何気ない一言でした

新卒2年目のある日、会話のなかで祖母がポロっと「手伝ってもらってごめんね。長く生き過ぎちゃったかしら」と言ったんですね。

田邉

その言葉は、とても切なく感じますね…

赤木さん

幼いころから明るく憧れだった祖母が、バスのなかで転倒し、怪我をしてしまったことが原因で家に籠りがちになり、目に見えて自己肯定感が下がってしまったんですね。そして、その一言。寂しそうに言う姿を見て、シニア世代が生き生きと人生を謳歌する社会にしたいと思い、起業を決意しました。

街中でシニア世代が「ごめんなさいね」「申し訳ない」という姿を目にするたびに、時代を築いてきた人生の大先輩たちが謝るなんておかしいという思いがありました。

孫としてだけでなく、同じ時代を生きる若者として、シニア世代が楽しく豊かに生きられる社会にしたい。そうした思いから、シニア世代のAge-Wellを創出する事業に取り組んでいます。

田邉

シニア世代のAge-Wellを創出する事業…介護や福祉などですか?

赤木さん

いえ、そうした既存のシニアサポートではないんです。

創業時、街中にいる100人のシニア世代にヒアリングを行い、そのなかで見えてきたのが暮らしの困りごとが多いということ

たとえば、「スマホの使い方がわからないけど、娘・息子は忙しくて聞けない」「話し相手がいなくて寂しい」「買い物に付き添ってほしいけど、頼める人がいない」などですね。

孫世代の相棒サービス「もっとメイト」

赤木さん

そうしたリアルな声を受けて立ち上げたのが、孫世代の相棒サービス「もっとメイト」です。

20〜30代のスタッフがシニア世代の自宅に伺い、スマートフォンやパソコンの使い方を教えたり、散歩やお出かけ、趣味のお供などのサポートを行ったりするサービスなんです。

田邉

孫世代の相棒サービス! 困りごとや希望に合わせて、孫のように手助けしてくれるんですね!

赤木さん

スタッフのことを通称「Age-Well Designer(エイジウェルデザイナー)」と呼んでいて、シニア本人も気づいていない潜在的な本音や知的好奇心を引き出す“人生の伴走者”として寄り添っています。

赤木さん

とはいいつつも、いきなり世代を超えた方々同士でコミュニケーションをとるのはハードルが高い。なので、深い対話力と傾聴力を養う独自の研修プログラムを通して、Age-Well Designerの育成を行っています

約100種・150時間のプログラムをクリアしたAge-Well Designerには正式な認定を行い、今は150人ほどの認定Age-Well Designerが活躍してくれているんです。

田邉

約100種・150時間!? めちゃくちゃ本格的なプログラム!

赤木さん

さらに昨年からは、シニア顧客を多く抱える企業からの要望もあり、「Age-Well Designer育成研修」として体系化し、企業の人材育成研修への導入も始めました

シニアとつながることで生まれる3つの強み

田邉

「もっとメイト」はシニアの声を受けて事業を立ち上げたとのことですが、「Age-WellDesigner」のプログラムも創業時から考えていたんですか?

赤木さん

明確に決めていたわけではありませんでしたが、可能性はあると思っていました。

なぜなら、Age-Well Designerという仕事に私自身が一番やりがいを体感していたから!

赤木さん

「もっとメイト」を立ち上げたばかりのころ、私も会員さんのご自宅を訪問していたのですが、伺うたびに「赤木さんが来るのを待っていたの。一緒にいると楽しくて、部屋がお花畑になるから」と言ってくれたり、会社のことを話すと「私が使っているんだから大丈夫。このまま突っ走って!」と励ましてくれたり、元気と勇気をたくさんいただいていました

田邉

年齢を重ねたシニア世代に言われるからこそ、より心に響きますね。

赤木さん

ほんとうにそうなんです! その経験から、シニア世代だけでなく、シニア世代と関わる人にとってもWell-beingになるんじゃないかと期待がありました。

そして今では、Age-WellDesignerとしてシニアと関わることで得られる強みが3つあると思っています。

1つ目は、自己肯定感があがること

自分が何かアクションを起こすことで「ありがとう」とダイレクトに感謝をもらえるので、「必要とされている」と自己肯定感が高まります。

多世代コミュニティスペース「モットバ!」

赤木さん

2つ目は、コミュニケーションが価値になること

最近、何かと気にしすぎてしまう性格や人の感情に敏感な方は生きづらいと言う声もありますが、そういった方々の気遣いは、この仕事では大きな武器になります。

実際、専業主婦の方から「私はコミュニケーションしか強みがないと思ったけど、それがお金になるなんて」との言葉をいただいたことがあります。

田邉

コミュニケーションが価値になる!

赤木さん

そして3つ目は、先ほどもお伝えしたように研修の仕組みを細かく整えているので、成長実感を得られること

たとえば、「シニアにスマホをレクチャーする」と一言で言っても、実際はかなり難しいんです。私にはできないとネガティブな方や、視力が低下したりしている方にデジタルの楽しさを伝えようとすると、きめ細かな配慮が求められますよね。

田邉

確かに。自分のおばあちゃんに教えると想像しても、大変そうだ…

赤木さん

そうした気遣いなどの人間力の部分も、研修のなかでは細かく目標設定をしています。

なので、自身の成長を感じながら人間力と自己肯定感も高められる。それが、Age-Well Designerなんです!

自己肯定感を高めるには? 自尊感情には2種類ある

田邉

私が学生のころにAge-Well Designerがあったら、やってみたかったなあ。成長できて自己肯定感あがるって、すごすぎます。

赤木さん

めちゃくちゃわかります(笑)。私は今でこそ自己肯定感が高いと自負しているのですが、以前は多くのコンプレックスを抱えていましたから。

赤木さん

「あれもできない」「これもできない」と、できないことばかり数えていましたね。

学生のころ、家族が大変なときに何もしてあげられない自分にも不甲斐なさを感じていました。「一刻も早く何かをできるようにならないと」と努力でコンプレックスを補ってきた気がします

田邉

努力で!?

赤木さん

実は、自尊感情には「社会的自尊感情」と「基本的自尊感情」という2種類あることを知っていますか?

社会的自尊感情は、目標達成などによって得られる周りからの評価で高められる感情のこと。

基本的自尊感情は、ありのままの自分を受けいれることでつくられる感情です。

田邉

社会的自尊感情と基本的自尊感情、初めて知りました。

赤木さん

もちろん、両方高いのが理想ですが、かつての私は社会的自尊感情が高くて、基本的自尊感情が低かったんです。私のようなタイプは、周りからの評価を過剰に気にしてしまう傾向があるんですね。

だけど、小さな成功体験を積み重ねて評価されることで、自然と自信がつく。自信がつくことで「自分ならできる」という気持ちが形成され、基本的自尊感情も徐々に上げることができるんです。

田邉

行動して自信がつくことで、自分を認められるようになると。

赤木さん

そうなんです! だから、自己肯定感が低いと感じている人でも高めていけると私は思っています。

そして、Age-Well Designerとして関わってくれている若者世代の多くは、まさに私と同じ状況にあるなと思っていて。

田邉

社会的自尊感情が高くて、基本的自尊感情が低い。

赤木さん

なぜかというと、SNSの普及で比較対象が増え、選択肢が広がった分、キラキラした人が目につきやすくなる。早くから人と比べてしまうことで、「そうじゃない自分」にばかり目が向いてしまうんです

田邉

めっちゃわかる。

赤木さん

4年ほど前に出会ったAge Well Designerの男性で、自分に自信がなく、周りの目をすごく気にしていた方がいたんですね。

だけど、Age-Well Designer としてシニアとコミュニケーションをとりながら着実にスキルを高めていったところ、先日話したときには「人にどう思われるか気にならないほど、自分に自信がついた」と言っていたんです

赤木さん

Age-Well Designerは、シニア世代のAge-Wellを目指せると同時に、若者たちにとってもWell-beingに生きられるきっかけに寄与できる。そのことを実感できたのは、たまらなくうれしかったですね。

社会を“Age-Well”にし、自分の人生も“Well-being”に

田邉

赤木さんは起業されてから、どういったときに“はたらくWell-being”を感じていますか?

赤木さん

使命感をもって、人生をかけてシニアAge-Wellに取り組めていることが、一番の“はたらくWell-being”ですね

そのうえで、シニアの方の挑戦・発見を促しながら、関わる人の挑戦・発見の後押しもすることができている。それが、私のやりがいにつながっています。

田邉

人の挑戦を支えることが、やりがいになっているんですね。

最後に、これからの目標を教えてください。

赤木さん

「Age-Wellを社会に実装する」という目標に対しては、まだまだレベルアップが必要です。だけど、この5年のなかで、何もなかったところから応援してくれる人が増えてきたことを確かに実感しています。

そして最近は、事業を始めた責任をより強く感じていて、どんなに壁があったとしても歩みを止めず続けることが、今の私にできることだと感じています。

赤木さん

そしてもう1つ、個人的ではありますが、自分の人生の希望も叶えることを大切にしています

なぜなら「Age-Wellを社会に実装するのと引き換えに、自分の人生を犠牲にしました」ということだけは、したくないから。

Age-Wellな社会にするし、自分のAge-Wellも同時に実現していくのが目標です。

田邉

仕事での実現と、自分の人生の実現、両方のバランスが大切ですよね。

赤木さん

シニア世代と話すと、「ご飯を食べられるだけで幸せだった」「生きているだけでよかった」と聞くことがあります。

そうした時代と比べると、今は幸せになる選択肢はありすぎるぐらいあると思うんですよね。でも、だからこそ迷ってしまう。

ありすぎる選択肢のなかで、何が自分の幸せなのか、どうしたいのかを、仕事も人生も自分自身に問いかけることから“Well-being”は始まるような気がします

<取材・文=田邉 なつほ>

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