企業インタビュー
「J2・レノファ山口FCと地域を盛り上げろ!」高校生の“探究型の修学旅行プログラム”が新しい
高校生のアイデアが“まちおこし”に…!?
新R25編集部
Jリーグ社会連携「シャレン!」を知っていますか?
シャレン!とは…
Jリーグ・Jクラブが、社会課題や共通のテーマ(教育、ダイバーシティ、まちづくり、健康、世代間交流など)を掲げ、地域の人、企業や団体、自治体、学校などと連携して取り組む活動のこと。
この活動を高校生のアクティブラーニングに活用できないかと考えたのが、株式会社TOKYO EDUCATION LABの代表取締役・金井隆行さんです。
金井さんは、これまでにも「SDGs」や「起業」を主題に、学生の能動的な学びを引き出す“探究学習型プログラム”を多数手がけてきました。
「社会人になってからでは遅い」中高生が“理想の学校づくり”から起業を学べるワークショップがすごい
金井さんの活動については、こちらの記事で詳しく紹介しています
その金井さんが今回「シャレン!」と連携して新たに生み出したのが、“探究型の修学旅行プログラム”だそうで…?
修学旅行を“生きた体験学習の場”として活用したい高校教師の方々、人気スポーツクラブ本拠地近くの自治体の方々は必見です!
〈聞き手=鳥山可南子(新R25編集部)〉
修学旅行を学びの場に。探究型プログラムの必要性とは
金井さん
TOKYO EDUCATION LABでは、修学旅行を“探究学習”の一貫として活用することを推奨しています。
学校でおこなう「事前・事後学習」と、実際の修学旅行である「フィールドワーク」とを一体化したプログラムを制作・提供しているんです。
2023年には、10校を超える中学・高校へ、各学校の訪れる地域や特色に合わせた学習プログラムを構成・提供しました。
鳥山
事前・事後の学習…というと、プログラムの内容は実際の修学旅行の期間だけではないということですか?
金井さん
その通りです。おもに地域課題の解決策を考えたり、成功事例を取り上げてその過程や成功理由を検証したりする内容になっています。
実際に、尾道(広島県)、松江(島根県)、高松(香川県)の3コースを訪れた、ある高校の修学旅行プログラムをご紹介しますね。
テーマ:「○○市を『もっと』元気にするには?」
①観光、産業など多角度から街を活性化する仮説を立案
②チーム内で議論を重ねる
③校内プレゼン実施
④地域で活動するプレイヤーにオンラインインタビュー
⑤文化祭で特設コーナーを設け、探究先の街を紹介
⑥【修学旅行】市役所や地域のプレイヤーに直接インタビュー
⑦【修学旅行】地域のさまざまな場所を視察して仮説を検証
⑧【修学旅行】地域の方を審査員としてプレゼン大会を実施
⑨仮説の検証結果をふまえ、結論を資料にまとめる
修学旅行前のグループワークに取り組む高校生たちの様子
鳥山
「授業1〜2回、受け身で聞いていれば終わる」というような内容ではありませんね…!
いち企業のプロジェクトさながらです。
金井さん
情報化、グローバル化といった大きな社会環境の変化が訪れているいま、子どもたちに必要なのは、主体的に学ぶ力や変化に臨機応変に対応できる力です。
探究的プロセスを体験しながら、能動的に学びをうながすことが、この修学旅行プログラムの目的。
普段の学校生活では得られない、価値ある体験をご提供できたのではないかと思っています。
J2・レノファ山口FCと共同開発!新たな修学旅行プログラムがスタート
鳥山
“修学旅行”と聞くと、楽しい思い出づくりばかりに目がいきがちですが…
こういったプログラムなら、それ以上の体験ができそうです!
金井さん
ありがとうございます。でも当社としては、もっと実践的で、もっと生きた情報を学んでもらえるプログラムの必要性を感じていて…
そこで考えたのが「シャレン!」の活動との連携なんです。
なかでも、山口市としっかり手を携え、地域活性に取り組んでいる、サッカー・J2リーグのレノファ山口FCの理念に共感しました。
そこで、山口市を舞台として地方創生を肌で感じられる、新しい探究学習型プログラムを共同で開発することにしたんです。
レノファ山口FCとは…
・山口県をホームタウンとするプロサッカークラブ。1949年に山口県教員団として発足し、2006年に同クラブを母体としたレノファ山口FC創設。2015 年よりJリーグ(J3)参戦し、2016年にJ2昇格
・クラブ名は、renovation(維新)の「レノ」と、fight(戦う)やfine(元気)の「ファ」を合わせた造語
・エンブレムは、山口県山口市のランドマーク・瑠璃光寺五重塔や、明治維新の原動力となった長州藩の紋章などをモチーフにしている
金井さん
この新たな修学旅行プログラムの可能性を信じ、いち早く採用してくださったのが、駒場学園高等学校です。
2024年1月から約10カ月間、全20回の探究学習プログラムを提供する予定です。
左から、レノファ山口FC・小山会長、駒場学園高等学校・戸塚校長、TOKYO EDUCATION LAB・金井さん
2024年の新・修学旅行プログラム概要(予定)
テーマ:「レノファ山口FCを起点に山口市・湯田温泉を活性化するアイデアを考える!」
【概要】
・レノファ山口FCを題材に、プロスポーツクラブを活用した新企画のアイデアや、地域の魅力を活用した観光アイデアを創出する
・また、レノファ山口FCと山口市が連携して取り組む「湯田温泉パーク・リビングラボプロジェクト」と協力し、2025年3月開館予定の複合施設「湯田温泉PARK」のオープンに向けた同エリアの活性化アイデアを、ともに考える
【事前学習プログラム(予定、一部抜粋)】
・プロスポーツクラブが貢献する地域活性(地域におけるレノファ山口FC)
・山口市職員、地域おこし協力隊による地域の魅力紹介や、取り組むプロジェクトの紹介
・クラブのパートナー企業による取り組み紹介や今後の地域連携の展望の紹介
金井さん
最終的には、レノファ山口FCや地域の方々に、高校生たちのアイデアを提案発表する機会を設ける予定です。
鳥山
山口県に詳しくなくても、レノファ山口FCが起点になるなら「Jリーグといえば…」と想像しやすそうです。
“自分ごと化”できて、より楽しく取り組めそうですね!
金井さん
Jリーグクラブは、トップチームの選手たちや、他クラブを招いておこなう試合など、華やかな面に目が行きがちですが…
実はたくさんのパートナー企業や地域行政に支えられ、連携して運営されているんです。
レノファ山口FCの方々も「クラブが“ハブ”となり、プログラムを通じて、山口市や県内エリアの魅力やパートナー企業の価値ある取り組みを知ってもらいたい」とおっしゃっています。
そして県外の高校生たちと、プロスポーツクラブが持つ地域活性の新たな可能性を探りたいという想いもあり、今回のプログラムの共同開発に至りました。
鳥山
高校生側だけでなく、双方にいい効果をもたらす可能性を秘めたプログラムなのですね。
金井さん
さらに、“首都圏の高校生”との接点が生まれることも、クラブから期待されていることのひとつ。
地域の魅力や未来を、地域のなかだけでなく、外からの新しい視点で再発見することにつながればと。
私たちTOKYO EDUCATION LABとレノファ山口FCは、「スポーツビジネス×地域活性」を主軸とした新たな共創関係を確立して、修学旅行での体験を通じて、新たな関係人口の創出につなげることを目指しているんです。
鳥山
ただ楽しむだけでなく、探究学習にもなり、Jリーグクラブとその地域の活性案を自分たちが考えて提案できる修学旅行だなんて…
高校生たちにとって忘れられない体験になりそうです。
金井さん
私たちは今後も学校教育の一環としての“探究学習型修学旅行”の開発に、積極的に取り組んでいくつもりです。
そして、生徒と学校の絆をより深め、卒業後もキャリア形成の原体験となるようなプログラムを提供していきたいと思っています。
首都圏の高校生が時間をかけて調査、議論を重ね、提案する地域活性アイデア。
その地域に住む方々とは違う着眼点からの、独創的な案がたくさん聞けそうです…!
修学旅行をもっと価値ある機会にしたいと考えている高校関係者のみなさん、地域に有名スポーツクラブがある自治体のみなさん。
ぜひ、“次世代型の修学旅行プログラム”の導入を検討してみてはいかがですか?
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