ビジネスパーソンインタビュー
「裏がなさそう」と信頼される理由
入社わずか2年でMVPヘッドハンターに。中田莉沙が語る、心を動かす「視座の高さ」
新R25編集部
仕事の現場で奮闘するビジネスパーソンたちの魅力、スキルを“○○力”と名付けて、読者の皆さんにお届けしたい! 題して、連載「あのビジネスパーソンの『○○力』」。
今回は、だいぶバリバリな人が登場です。
【中田莉沙(なかだ・りさ)】学生時代はスタートアップ企業でインターンを経験。新卒で野村證券に入社。その後、スタートアップの成長支援を行うフォースタートアップス株式会社に転職し、ヘッドハンター(ヒューマンキャピタリスト)として活躍。2019年、ビズリーチが選ぶ「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」のIT・インターネット部門でMVPを獲得
優秀な人材とスタートアップ企業をつなぐフォースタートアップス社で活躍する中田莉沙さん。入社してわずか2年で「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」IT・インターネット部門でMVPを獲得したという、スゴ腕のヘッドハンターです。
前職の野村證券時代は、まわりから「革命家」と呼ばれてたのだとか…どんな状況?
事前に中田さんについて周囲の方にヒアリングした結果、「中田は視座が高すぎる」という声が多数聞こえてきました。
「視座の高い革命家」は、なぜ若くして“ヘッドハンターMVP”を獲得することができたのか?
「人の心を動かせる理由」を探ってきました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「日本の未来をどうしたいか?」中田さんの“視座の高さ”にいきなり圧倒されました
天野
事前にヒアリングしたところ、みなさん口をそろえて「とにかく視座が高い」と言っています…
ご自身では心当たりありますか?
中田さん
そんなに心当たりはないんですけど…(笑)。
ただ、私の仕事は単にスタートアップ企業と優秀な求職者のマッチングではなく、「いかに未来がよりよくなるか」を考えて企業の成長を支援すること。
社内でも「目の前の課題解決とかではなくて、日本の未来をどうしていきたいか?っていう視点」で話しているので、そう言われるのかも…
天野
日本の未来ですか…
中田さん
小さい話だと、会社のゴミ箱で、たまに燃えるゴミのところにペットボトルとか入ってるときあるじゃないですか。
そういうとき、社内Slackに「こういう人が同じ会社にいるのが信じられない。間違って落ちてしまったんだと信じてます」って書いちゃうんですよね、我慢できなくて。
あの…引いてます?
全然! 少しだけです!
中田さん
「社会に対して価値提供する仕事をしよう」とお伝えしてるのに、自分たちは身近な分別すらできないっていう倫理観のなさがイヤなんです。そう思いませんか?
天野
視座の高さゆえの怒りがすごい…
まわりの人はどんな反応なんですか?ムッとされません?
中田さん
たしかに「言い方はちょっと気をつけようね」と注意…いやお叱り…はいただきますけど(笑)。そこはちゃんと改めよう、と受け止めてくださる方が多いです。
広報担当・友行さん
中田は、自分を曲げずに貫くのに、人とぶつかるというよりむしろ老若男女問わず愛されるんですよね…
そこが本当に不思議だけど、彼女の魅力なんですよね。裏表がないからなのかな…
天野
なるほど…
“視座の高さ”ってどうやって手に入れるの…?「解消したいボーダーがあった」
天野
たしかに、仕事をしていてよく「視点の高さが大事」とは聞くんですが…。どうしても目の前の仕事に追われて小さいことしか考えられなくなっちゃうんですよね…
“視座の高さ”って、どうしたら持てるんでしょうか?
中田さん
何かひとつ、「本気で解決したい課題」に出会ったことがあるかじゃないですかね。
私だって、子どものころからゴミひとつでそこまで言う人間じゃなかったですよ!(笑)
それはそうですよね
中田さん
昔から、少数の人をマジョリティが排除することが好きじゃなくて…
小学校に上がるぐらいの年齢になると、ちょっとでもまわりと異なるところがある人を、面白おかしく扱ったり、からかったりすることがあるじゃないですか。そういうのがすごくイヤなんですよね。
世の中にある、不条理なボーダーがなくなればいいのに…って。
天野
中田さんにとっての「本気で解決したい課題」は「不条理なボーダー」…
中田さん
私のキャリアも、すべてその「課題」が起点なんですよ。
大学生のころ、「唐揚げとハイボールタダで飲み食いできる」みたいな交流会に行ったら、社会課題を解決する、とあるスタートアップ企業の存在を知ったんです。
唐揚げ…そのころは普通の大学生っぽい視座だった中田さん
中田さん
“女性の社会進出を支援する”というビジョンを持った企業の代表の方と話したときに「女性の私より女性の未来を考えてる…!」と思って、衝撃を受けた。
その出会いで、スタートアップ企業には、世界のボーダーをなくすことに挑戦している企業がたくさんあると知ったんです。
ただ当時はまだ、スタートアップ市場って800億円ぐらいしか投資されていなかったんです。今は4500億円ぐらいに拡大しているんですが…
もっとこのマーケットにお金を入れることはできないかと考えて、「じゃあ日本で一番の証券会社に行こう」と。
天野
それで野村證券に入社されたと。
中田さん
ただ、野村證券でもいろんなボーダーにぶつかっていた気はします。「女性の営業の話は聞きたくない」とか言われることもあったし…
お客さんのためだったら絶対改善したほうがいいことでも、「慣習」っていう理由で効率化されなかったり。
そういうことに対して、すべて「変えましょう!」って意見してたら、「お前は革命を起こしたいのか!」って言われて、それ以来一部で“革命家”って呼ばれるようになってました…(笑)。
でも、中田さんが退職されたのちにさまざまな効率化がされたとのこと。革命への想いが実ったんですね
中田さん
それで、満を持してスタートアップに転職して、「ボーダーをなくすこと」に注力しようと思ったんですよ。
求職者として出会ったのが、人材でスタートアップを支援するフォースタートアップス社。企業を紹介してもらおうと思ってたんですけど、「フォースタートアップス自体もスタートアップ企業だし、ここで働くのが一番いいんじゃ…?」となって(笑)。
天野
じゃあヘッドハンターには…
中田さん
なるとは思ってなかった。偶然です(笑)。
「視座の高さ」「裏表のなさ」ゆえに、ヘッドハンターとしても信頼される
天野
そこからわずか2年で「MVPヘッドハンター」になったわけですよね。
“視座の高さ”は、ヘッドハンターになってからも生かされてるんでしょうか?
中田さん
そうですね。スタートアップ企業に話を聞きに行って、起業家の方々に「どんなビジョンを持っているか」「どう社会に貢献しようとしてるか」を必ずヒアリングするんです。
そして、その言葉を求職者の方にダイレクトに伝えている。
言葉って、最初はどんなに尊いものでも、間に何人も入って「又聞き」になるうちに熱量が薄れちゃうんですよね。
これはフォースタートアップス社の特徴でもあるそうです
天野
転職エージェントって企業側と求職者側は別の人が担当するものだと思ってました…
“どちらもやる”のは大変なのでは…?
中田さん
でも…
そうやって企業の魅力を熱量高く伝えていると、「スタートアップに転職するか迷っていたけど、中田さんを見て決心しました」って言われることがあるんですよ。
自分自身が、“スタートアップ的な働き方”を体現できている、っていうところもあるのかなって思うんです。
天野
中田さんの仕事ぶり自体が「スタートアップ企業で働くやりがい」を体現しているのか…
天野
お話をうかがっていて、「まっすぐな自分を曲げないのに、人から愛される」と言われてる理由がわかる気がしてきました。
高い視座を持ちつつ裏表がないからこそ、求職者の方にも信頼されるんでしょうね…
中田さん
たしかに、「転職エージェントの人って言っていることに裏がありそうで疑っちゃうけど、中田さんはそれがない」とは言われたことがあります。
天野
それはすごくわかる気がします。
最後に聞きたいんですが…多くの人は中田さんのような視座の高さや、ビジョンを持てないと思うんですよね。自分も「長期的なビジョン」とかがないのが悩みで。
中田さん
それこそ、「唐揚げとハイボール」でいいんじゃないですかね。
中田さん
私は、「この世に失敗はない」って思ってるんですよ。
何かと出会ったら、それだけで収穫。合わないものだったとしても、「○か×か」がわかっただけでもいいじゃないですか。
どこで何と出会うかわからないから、まずはやってみるという軽いアクションでいいんじゃないかな。
私が唐揚げとハイボールに釣られて人生が動いたみたいに、天職に出会うことがきっとあると思いますよ。
なるほど…
「人に信頼されること」は、ヘッドハンターのみならず仕事の神髄だと思います。
中田さんの持つ「視座の高さ」は、その信頼のベースとなるものでした。
ちなみに、中田さんに“よい転職をするコツ”をきいてみたところ…
「ヘッドハンターはLinkedinなどをチェックしてお声がけするので、経歴などをこまめに更新しておいてください」
「アメリカでは健康診断と同じように、年に1回ぐらいはキャリアカウンセラーと面談して“今どういう求人があるのか”“自分が市場でどのぐらいの位置なのか”をチェックする人も多い。カジュアルに面談を希望していいと思います」
とのことでした!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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