企業インタビュー
市場規模は前年比60%増の1,150億円!拡大を続けるガチャガチャビジネスのしくみとは
「コロナ禍だけではない」一過性に止まらない、日本のブームの秘密
新R25編集部
「あれ? 以前あったお店が、ガチャガチャ専門店に変わってる…」
そんな経験をしたことがある人、多いのでは?
日本カプセルトイ協会によると、2023年度の市場規模(製造出荷ベース)は約1,150億円で、前年の720億円から60%も増加しているという、拡大著しい市場なのだとか。
そこで「企業トピ」にて展開する「新R25書籍トピックス局」では、小野尾勝彦さん著『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)に注目。
ビジネス視点から考える、ガチャガチャの魅力とは…?
〈聞き手=鳥山可南子(新R25編集部)〉
小野尾さん
日本ガチャガチャ協会、代表理事を務めています、小野尾勝彦です。
私は日本の“ガチャガチャ元年”である1965年生まれで、これまで約30年間、ガチャガチャのビジネスに携わってきました。
そんな私が初めて、ビジネスの観点からガチャガチャを解説したのが、この本なんです。
鳥山
最近、ガチャガチャがすごく増えましたよね。専門店も、駅や百貨店のちょっとしたスペースにも…
小野尾さん
そうなんです。ここ数年、マーケットが異様な盛り上がりを見せているんですよ。
こんな体験、されたことないですか?
「ショッピングモールを訪れたら、アパレルショップが入っていたスペースが、ガチャガチャの専門店に変わっていた」
「昔はキャラクターグッズが中心だったが、最近は雑貨や精巧なミニチュアなど、バラエティが豊かになって、自分でも思わず欲しくなった」
「100円や200円だと思っていたら、今は300円や400円が主流で、中には1000円のものもあり、びっくりした」
「子どもだけでなく、大人の女性が楽しんでいるのを見かける」
「空港や観光地で外国人が楽しそうに回しているのを見かける」
「SNSでガチャガチャの写真をアップした投稿をよく見かける」
鳥山
あります、あります!
ガチャガチャって子ども向けだと思ってたら、若者からミドル世代まで、大人が思わずほしくなるようなものもたくさんあって、つい足を止めてしまいます。
小野尾さん
これらの動きは、ここ数年で顕著になったものです。とくにコロナウイルス感染症が拡大した2020年ごろから大きくなって…
鳥山
コロナによる業績悪化で撤退した跡地に、人件費や電気代をかけずに低コストで穴埋めできる業態として流行った、と?
小野尾さん
もちろん、それが加速させた要因ではありますが、それだけではないんですよ。
それ以前から、日本のガチャガチャ市場は右肩上がりに成長していましたから。
鳥山
え、ほかにも理由があるんですか?
小野尾さん
さまざまな理由が複合的に組み合わさった結果なんです。
日本人の宗教観、手先の器用さとものづくりへのこだわり、キャラクターグッズや小物好きなどの国民性、中国の安価で豊富な労働力のおかげで実現した低コストと高クオリティの両立、海外工場とメーカー間のサプライチェーンの確立…
ガチャガチャが初めて日本に導入された約60年前から何度かのブームを経て、連綿と築かれたもの。決して一過性のブームではないんですよ。
鳥山
なるほど。つまり、これからもさらに伸びそうな市場ということですね!
なんだかビジネスチャンスがありそうな気配が…
小野尾さん
私のところにも、そういう方がよく話を聞きにいらっしゃいます。
私が狙い目だと思うのは、メーカーおよびその周辺の商品企画やデザイン関連のビジネスです。
事実、現在約50社ほどあるメーカーの大半は、ここ10年ほどに設立された会社ばかり。ユニークで革新的な商品を生み出せれば、新規参入組でも注文をもらえる可能性を秘めています。
まずはガチャガチャビジネスのしくみを知って、チャンスの芽を探してみてください。
誰がつくって、 誰が売っている? 知られざるガチャガチャビジネスのしくみ
※以下、『ガチャガチャの経済学』(小野尾勝彦)より
ガチャガチャは儲かるのか?
昨今の市場の拡大を見聞きしたり、メディアの報道を見たりして、ガチャガチャのビジネスに興味を持ち、もっと詳しい話を聞きたいと私のところにいらっしゃる方も多いです。
確かに子どもから大人までを含めた購買層の拡大、ショッピングモールなどのガチャガチャコーナーや専門店の増加などで、市場は確実に拡大しています。チャンスありと思うのは当然です。
そうはいっても、他の多くの業界と同様、ガチャガチャの世界にもビジネスのしくみというものが存在します。まったくの異業種から新規に参入したり、いきなり徒手空拳で起業したりした人が、この中に入っていくのは決して簡単ではありません。しかし、まったく不可能ということではなく、少数精鋭でワイワイガヤガヤ楽しくやろうとする分にはすごく面白いビジネスだと思います。
そういうわけで、この章では、一般にはあまり知られていないガチャガチャの業界やビジネスのしくみについて説明いたします。
主なプレーヤーは「メーカー」「オペレーター(代理店)」「販売店」の3つ
多くの業界と同じように、ガチャガチャのビジネスも「メーカー」「オペレーター(代理店)」「販売店」の3つのプレーヤーが存在します。
実際には、メーカーなら実際の生産を請け負う国内外の協力工場や、商品の企画やデザインを請け負う 外部デザイナーや企画会社があり、1社だけですべての機能を兼ね備えていることはあまりありません。
また、バンダイやタカラトミーアーツのように、自社およびグループ会社で、メーカー、オペレーター、販売店のすべての機能を兼ね備えている会社もあります。
本書では、業界の構造をわかりやすくご理解いただくために、「メーカー」「オペレーター」「販売店」の3つの機能に分けて説明します。
①メーカー
文字どおり、商品の企画や製造を行う企業です。現在日本には、大小合わせて約50社のメーカーが存在します。
②オペレーター
メーカーがつくった商品を仕入れて市場に供給したり、ショッピングモールなどと交渉してマシーンを 設置したりする役割を担う企業です。
マシーンから上がった収益をメーカーと販売店双方に還元するなど、非常に重要な役割を果たします。
③販売店
オペレーターから供給された商品とマシーンを自社のスペースに置いて、消費者向けに販売を行います。
従来はショッピングモールなどの商業スペースやアミューズメント施設などが中心でしたが、近年はガチャガチャのマシーンが置かれる場所が駅、映画館、美術館・博物館、書店などに拡大しています。
また、近年急増している専門店の多くはオペレーターが自ら販売店機能を持つために運営しているものです。
在庫リスクはオペレーターが負う
図表8と図表9は、ガチャガチャ業界の流通のしくみと、商品の単価を100円とした場合の各プレーヤーごとの大まかな利益配分を表したものです。
ガチャガチャの場合、同じ商品で販売店によって販売価格が異なるということがありません。また、3カ月前受注がルールとなっています。
これはメーカーが発行する新商品情報(「情報書」といいます)をオペレーターが見て3カ月前に発注数量を決定し、その数量をメーカーが生産してオペレーターに納品するというしくみです。この数量は商品化するカテゴリーにより目安が決まっており、最低限の受注が取れず、採算が厳しい場合は、メーカーは商品の生産を中止することもあります。
また、販売店で商品が売れ残った場合、オペレーターが在庫のリスクを負うので、メーカーにとっては安心できるシステムではありますが、オペレーターは在庫の分発注量の決定にシビアになります。
新規参入するにはメーカーがチャンス
現在のガチャガチャビジネスの各プレーヤーのうち、オペレーターはすでに寡占状態となっており、また販売店も集客力や大きな売り場面積を持つ商業施設でなければ利益を出すことが難しいため、これから新規にガチャガチャビジネスに参入しようという会社にとっては、メーカーおよびその周辺の商品企画やデザイン関連のビジネスが狙い目ということになるでしょう。
実際、市場の拡大によって、第1章で説明したように多様化したお客を満足させるオリジナル商品が求められています。奇譚クラブが「コップのフチ子」を生んだように、ユニークで革新的な商品であれば、 新規参入組でもオペレーターから注文をもらえる可能性は高いと言えます。
事実、現在約50社存在するメーカーの大半は、この10年以内に設立された会社です。既存のメーカーもまた斬新な商品企画を求めています。可愛くて魅力的なキャラクターを描けるデザイナーや、斬新なコンセプトを生み出すのが得意なプランナーで、ガチャガチャのビジネスに興味にある方は、メーカーに売り込んでみればコラボできる可能性は高いでしょう。
私がこれまで約30年間にわたってガチャガチャの業界で仕事をしてきた経験から誤解を恐れずに言うと、今までにないユニークな商品、他人と違った自分ならではの感性を全面に出した商品を世に出したいと思っているクリエイティブな人にとって、ガチャガチャこそが、その夢を最速で実現できる世界ではないかと思います。
また、そのような人にこの業界のことをもっと知ってもらいたくて、年に数回、都内で「渋谷ガチャガチャナイト」というイベントを開催し、メーカーやクリエイターとの交流の場を設けています。
ご興味ある方は、ぜひご参加いただければと思います。
日本ガチャガチャ協会プレゼンツ「渋谷ガチャガチャナイト Vol.5〜タマキュー5周年の回〜」
【日時】2024年8月30日(金)19:00開演(18:00開場)
【場所】東京カルチャーカルチャー(渋谷)
【出演】日向大輔 小野尾勝彦(日本ガチャガチャ協会)乙幡啓子(妄想工作所)武笠太郎・坂本嘉種(ザリガニワークス)+シークレットゲスト
【チケット発売日】7月30日(火)12:00(Peatixにて)前売り3,000円(お土産つき)
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