企業インタビュー
「プレゼン中皆がPC画面を見ている」とき、あなたはどうする? プロに聞く、相手に刺さる“伝達術”
伝えるなかで「避けるべきこと」とは
新R25編集部
「もっと話し上手になりたい」「トーク力を身につけたい」
そう思う人も多いのでは?
そこで「企業トピ」にて展開する「新R25書籍トピックス局」では、千葉佳織さん著『話し方の戦略 「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術』(プレジデント社)に注目。
前回は、聞き手の記憶に残る話し方と心をつかむスピーチ術について紹介しました。
そして今回は、プレゼンテーションや話し方の“具体的なテクニック”に焦点を当てた内容を抜粋してお届けします。
上手なプレゼンのコツは「スライドを単に読み上げないこと」だと言いますが、この指摘にハッとした方もいるのでは…?
また、無関心な聞き手の“顔を上げさせる技”についてもご紹介。自身のトーク力を次のレベルに引き上げるアドバイスは、全ビジネスパーソン必見です…!
プレゼンの落とし穴、気づいてますか? 「伝わらない」をなくすテクニック
※以下、『話し方の戦略 「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術』(千葉佳織)より
こんな場面に出くわしたことはないでしょうか。
営業マンが資料に書いてあることを一字一句話している。学会発表や採用説明会などで、登壇者がスライドの細かい文字をすべて音読している。
話し手は、上から順番に文字を読み上げることに夢中で、聞き手の飽き飽きした表情に気付いていない。結果、決められた時間を大幅に超過し、互いに時間を無駄にするーー。
こんなふうに、資料を用いた説明やスライドを使うプレゼンの際、なにも考えずに書かれた事項をただそのまま読み上げるだけの人がとにかく多いと感じます。
おそらく幾人もの目を通っている資料ですから、書かれている情報は正しいもの、ファクトなのでしょう。
しかし、「話して伝える」という行為においては、情報の取捨選択ができなければ、ただ事実を詰め込んで話していることとなり、要点が絞られておらずわかりにくくなります。そもそも、テキストとして見たときのわかりやすさと、話し言葉で聞いたときのわかりやすさは異なります。事前に作成したテキストをただ読み上げて終わってしまうのは、非常にもったいない。
ファクトを扱うときは、どこを削ぎ落として、どこを残していくのか、という取捨選択が重要です。
そのときに重要なのは、コアメッセージとのつながりの意識です。
コアメッセージに向けたダイレクトな根拠となる部分は残し、なくても筋が通る場合は積極的に省いていくことをおすすめします。
例えば、次のような施策プレゼンがあるとしましょう。
ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化の一環として、学校給食費の無償化に取り組みます。××市における2024年度の学校給食費の額はひとりあたり月額4840円、年額5万8080円です。2024年度現在、××市立小中学校の合計人数は6421人となり、試算すると、学校給食費の無償化には年間約3億7000万円が必要となります。現在、地方公営企業への基準外繰入金は年間約4億円となっており、それとほぼ同じ予算で学校給食費の無償化は実現できるのです。国においても「こども・子育て政策の強化について(試案)」の中で、学校給食費の無償化に向けて、給食実施率や保護者負担軽減策等の実態を把握しつつ、課題の整理を行うとしており、それらの動向を踏まえながら、しっかりと学校給食費の無償化に取り組みます。
具体的な数字や施策名が事実情報として示されていますが、聞き手は一つひとつの情報を覚えたり理解したりすることができず、話についていけないでしょう。
ここでのコアメッセージは、「学校給食費の無償化は実現できる」ということ。それを伝えるために不可欠なファクトだけを残します。
学校給食費の無償化に取り組みます。現在の児童生徒数から試算すると、無償化には年間約3億7000万円が必要となります。しっかりと財源を確保すれば、学校給食費の無償化は実現できるのです。国も現在、学校給食費の無償化に向けて課題の整理を行うとしており、それらの動向を踏まえながら、積極的に取り組みます。
年間でいくら必要なのか、という数字だけを残し、その試算の内訳はカットします。また、国の施策の正式名称はここでは必要ないので、「国も取り組んでいる」ということだけを伝えます。
このように、事実だとしても、そのコアメッセージにつながらないような話は基本的に削ぎ落としてかまいません。
状況に合わせて必要な情報を適切に摘み出し、適切に並べて、納得度の高い話をしていきましょう。
「事実だから」と思考停止するのではなく、事実だからこそ、あなたが成し遂げたい目的にとって必要なものかどうか、聞き手にとって受け取りやすいものであるかどうか、よく吟味することが肝要なのです。
聞き手の興味を引きたいなら、“相手の内心”を言語化せよ
あなたがなにかについて話すとき、必ずしも聞き手全員が話に興味を持っているわけではありません。スピーチやプレゼンなど対複数でも、インタビューや面接など1対1でも同様です。
とくに、営業を受ける側、会社や学校の規則に沿って研修を受ける側、聞き手の意志と反して受動的に情報を受け取らなければならないとき、興味を持てない人も多いはずです。
そして、そのような場面で自分が話し手側にいて、つらい経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。「ああ、きっとこの人は私の話、まったく聞いてないんだろうな」 「つまらなそうにしているな」というような気持ちを感じながら話し続けないといけないのは、苦しいことですよね。
聞き手が話し手に興味がないとき、話を聞いても価値がないと思っているときに効果的な伝え方があります。
それが、「相手の気持ちの代弁」です。
「相手の気持ちの代弁」とはその名の通り、聞き手が思っているであろう、心の中の素直な感情、人間味のある言葉を先回りして言ってしまう手法です。
例えば会社の研修なら「『この研修のテーマは今さら勉強しなくてもわかっているんだよなぁ』と思いながら私の話をお聞きになっている方もいらっしゃるかもしれません」、営業先なら「『他の商品と大きく変わらないのでは』とお感じかもしれません」など、パンチのある言葉を使うのです。
資料に目を落としたまま顔を上げない、視線がずっとPC画面を向いている、など、聞き手の無関心が態度に表れていることに気づいたら、このような刺激の強い言葉を投げかけてみましょう。
いわば、目の前で退屈そうにしているその人の「心の中」に向かって話しかけるイメージです。聞き手が考えていることと一言一句は一致しなくても、ハッとさせ、注意を引くには十分でしょう。
ただしここで相手の気持ちの代弁をするだけでは、聞き手への嫌がらせになってしまいます。
そこで、「話す目的やゴールの提示」を組み合わせましょう。
例えば、社内の研修担当者がやる気のない受講者に向けて話すときは、
「この研修のテーマは今さら勉強しなくてもわかっているんだよなぁ」と思いながら私の話をお聞きになっている方もいらっしゃるかもしれません。今回は本研修を全社に導入しているのですが、他部署のチームリーダーたちからもご好評をいただき、効果も実感いただいております。目新しい取り組みではありますが、みなさまに会社の中でさらにご活躍いただけると自負しているプログラムですので、最後まで、前向きにお取り組みいただきたく思います。
例えば、乗り気でない顧客に向けて営業活動するときは、
「他の商品と大きく変わらないのでは」とお感じかもしれませんので、今回は他の商品との違いについても詳しく解説いたします。それぞれのメリットもデメリットもより解像度が高くなるように、丁寧にご説明してまいります。
などという言い方ができます。
アウェイの状況だからこそ、それをうまく利用して覚悟や意志を示し、自分が話すことの意味を大きく増幅させられるのです。
自分と聞き手の属性から事前に反応を予想できる場合は、こうしたカードをある程度準備しておけるといいでしょう。
話し言葉は、聞き手が多ければ多いほど一方向になりやすい。
それでも、コミュニケーションであることを忘れないでください。
興味がない人に興味を持ってもらうために、その人の心の奥底を見抜き、声をかけてあげてください。
自分の心の内に寄り添ってくれる相手に、聞き手は小さな信頼を感じます。
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