企業インタビュー
「ブランディングのこと、全然わかってなかったんです」久保裕丈の“ステークホルダーに刺す”メディア論
新連載「メディ活アワード」
新R25編集部
あなたの企業は、「メディ活」できてますか?
企業からの情報が消費者に届きにくくなっている時代に、 “企業発信”も変革する必要があるはず。
「メディアから取材されたらラッキー」「取り上げられて終わり」のような受け身ではなく、能動的にメディアを活用し、掲載事例を事業成長につなげていくべきなのかも…。
新R25の新連載「メディ活アワード」では、メディアを活用したアクティブな企業発信「メディ活」を取り上げ、企業発信のありかたをアップデートしていきます。
今回お話を伺ったのは、家具や家電などインテリアのサブスクサービス「CLAS(クラス)」を提供する、株式会社クラスの代表・久保裕丈さん。
これまでに19回、19.4億円の資金調達に成功した久保さんに、投資家などステークホルダー向けのメディア活用論をお聞きしました。
〈聞き手=宮内麻希(新R25 編集部)〉
「リターンを約束」投資家に“刺す”メディ活
宮内
久保さんは、資金調達を19回も成功させたということですが…投資家のようなステークホルダーに向けたメディア活用では、どんなことが大事なんでしょうか?
久保さん
リターンを返す約束をすることですね。
久保さん
モメンタム(相場の強弱を測る指標)…ざっくり言うと“会社の雰囲気”がわかるような発信をすると、「勢いづいてるぞ」ってことを広く認識してもらえるんです。
投資家の人たちに「リターンを得られるかも」と目をつけてもらえれば、金銭的な援助が期待できる。
そう思ってもらえそうな情報を取捨選択して出しています。
宮内
ほう…どうやってそんな雰囲気をつくっていくんですか?
久保さん
企業価値の高さをつくっていくことですよね。
お客さまから支持されるサービスか。社会的な価値があるか。長く愛されるブランディングができているか。
こういう価値提供ができる会社は投資に値すると思います。
宮内
(カッコいい…)
伝えることはシンプル。「誰にどんな約束を果たすのか」
久保さん
…とはいえ僕も、最初に「女性向けの通販サービス」を立ち上げたときは、ブランディングのことを全然わかってなくて。
宮内
というと?
久保さん
ブランディングって“差別化”と同義なので、本来であれば会社を立ち上げた初日から存在すべきものなんです。
でもサービスを決めたあとで「ブランディングをどうする? 誰をターゲットにする?」って考えだして、ターゲット不在のまま自分たちの商品を届けようとしていた。
宮内
投資家って、そういうことをすぐ見抜いてきそうですね…
久保さん
そこからは、「誰に対してどんな約束を果たすのか」を定義づけることにしました。
たとえばスマホでも、「カメラの画質がめちゃくちゃいいですよ」とか「動画を思い通り撮れますよ」なんて訴求していたりするじゃないですか。
自分たちが大切にしたいと思う“特定の誰か”に喜んでもらえるような価値を、シンプルに伝えるようになりましたね。
「企業価値やブランディングの可能性が広がる」
宮内
ちなみに久保さんは、「企業インタビュー」でもサービスの紹介記事を公開いただきましたよね。
久保さん
オフィス家具をサブスクすると、コストを大幅に抑えられるうえに地球環境にもやさしいんです。そこの価値を中心に伝えてもらいました。
宮内
できた記事を見て、いかがでしたか…?
久保さん
いやー、素直に驚きました。
丸投げでお任せしたら、クオリティの高い記事ができあがってて。それも10万円で。
普段、外部の会社に制作物をつくってもらうときって、何回もミーティングして、いろんなクリエイティブを渡してチェックして…ってなるじゃないですか。
それが、「企業インタビュー」はベースの情報をインプットするだけだったので楽でしたね。
宮内
もともとは中小企業とかスタートアップ向けにつくったサービスなので、人数の少ない会社でも依頼しやすくて、さらに工数を削減できるように依頼フォームにもこだわってるんです。
久保さん
自分たちでLPを制作したり、制作会社と打ち合わせをしてつくったりすると、一方的な思い込みが入ることがあるんですよね。でも、それだと世の中の人たちにそれほど刺さらない。
でも「企業インタビュー」の記事は、いい意味で“完全に第三者目線”になってる。
客観的で新鮮な目線で書いてもらえるから、自社の製品をどうやってアピールしたらいいかわからない企業さんも、とりあえず頼んでみようかってなると思いますよ。
宮内
会話形式になってるので、『新R25』編集部がいただいた情報をもとに、第三者目線でツッコませていただいてます(笑)。
久保さん
自分たちでまとめたら、こういう仕上がりにはならないなって思いますね。
それこそ企業価値や企業ブランディングの可能性が広がるんじゃないかな。
投資家のようなステークホルダーに取り組みを知ってもらう機会としても、こういう方法が有効なのかもしれないですね。
自身の失敗経験から学び、企業価値を明確にして伝えているという久保さんのメディ活。
投資家に刺すためには、表層的なサービスの概要だけでなく、社会的な価値やブランディングを言語化して、粘り強く伝えることが大事だとわかりました。
連載「メディ活アワード」では、これからも、アクティブな企業発信を事業につなげている人々を取材していきます!乞うご期待。
〈編集=山田三奈〉
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