ビジネスパーソンインタビュー
土井健著『テレビCMの逆襲』より
タクシー・エレベーター・マンションサイネージ…自分で試してわかった、それぞれの広告効果の実態
新R25編集部
「100万円からテレビCMがはじめられる」
このキャッチフレーズのCMを、テレビやタクシー、あるいは街中で見たことないでしょうか?
2019年に、「とうとうネット広告費に抜かれた」というニュースが流れ、広告業界に衝撃を与えたテレビCM。
運用型テレビCMを提供する「テレシー」は、そんなニュースの翌年に立ち上がりました。
テレシー代表取締役CEOの土井健さんは、テレビが苦境に立たされているように見える状況のなかでも「テレビCMにはまだまだポテンシャルがある」と断言。
1月17日には、その主張を書き綴った書籍『テレビCMの逆襲』を上梓しました。
今回は、前回ご紹介した「テレビCMの底力」に続き、ここ数年で登場した「タクシー広告」や「タワーマンションサイネージ広告」「オフィスエレベーター広告」などの広告メディアの実態についてご紹介。
テレシーが自分たちのお金で出稿してみた結果を教えてもらいました。
タクシー広告:BtoB企業には鉄板の決裁者にアプローチできる
サービス名をテレシーに変更し、運用型テレビCM事業に本腰をいれて参入した2020年12月、テレシーとして最初に取り組んだマスマーケティングがタクシー広告でした。
このときのタクシー広告に関しては、放映料は2500万円ほど投入して、約3週間実施。
CM素材については私がクリエイティブディレクターを務め、数百万円台前半という比較的安価な金額で制作しました。
初めての大規模プロモーションで、こんなに大金を投じて本当に効果があるのだろうか、始めた当初は半信半疑でした。
あまりに不安だったので、初めてのタクシー広告は3週間で一旦止めて、その後の約3カ月間はタクシー広告経由の問い合わせからの受注率、受注金額を静観しました。
すると、出稿を一旦止めて2カ月半ほど経った3月中旬になって、放映料の2500万円は受注で十分回収できるとわかりました。
当初想像していた以上に、タクシー広告はテレシーのようなBtoB企業にとって、有効なメディアであることが分かったのです。
テレシーが実施したタクシー広告からのリードの役職者割合は、代表取締役が30%、取締役・執行役員、部長が33%と、65 %近くが経営層に近い役職で、広告主テレシーとして一番狙いたい層からの問い合わせを得ることができました。
また、問い合わせをいただいた後に、テレシーのインサイドセールスがアポイントを設定させていただき商談につなげるのですが、その商談化率は他のどの経路よりも2倍以上高く、とても満足のいく結果となりました。
広告主テレシーでのタクシー広告の赤裸々な効果をお伝えすると、例えば、テレシーであれば、ウェブ上の問い合わせ・資料請求を成果地点に置いていたのですが、そのCPA(1件あたりの獲得単価)が初出稿時に10数万円という結果でした。
その情報を持った上で、仮にコロナ禍でタクシー利用が半分になったらCPAは倍になるかもしれませんが、逆に倍のCPA30万円でも効果は見合うだろう。
ということは、テレシーに似たようなBtoB企業にも合うだろうなと計算がたちました。
広告主として、代理店としての両面における実績からタクシー広告導入のポイントをまとめると、「BtoB商材」「幅広い業界に受け入れられるサービス」「LTV(ライフ・タイム・バリュー)が100万円以上と高いサービス」という3点を満たしている企業であれば、タクシー広告は成功する可能性が高いといえます。
また、テレビCMの場合はスポットCMで15秒を基本的にお勧めすることが多いのですが、タクシー広告の場合は30秒の尺となるので、訴求できる内容も少し増やすことができます。
オフィスエレベーター広告:社長から現場の社員までリーチできる
オフィスエレベーター広告は、エレベーターホール脇に設置されたモニターやエレベーター庫内の壁にプロジェクターで投影させるタイプの広告です。
タクシー広告は会社経営者やマーケティング決裁者というコアなターゲットに向けたプロモーションですが、オフィスビルのエレベーターは社長から現場社員まであらゆるビジネス層にリーチできる特徴があります。
テレシーが代理店として扱っているエレベーター広告は、都心にある比較的大規模なオフィスビルに入っているものなので、大企業をはじめ、成長軌道にあってオフィス拡幅中のスタートアップ企業まで、色々な業種の社員にリーチすることができます。
広告主テレシーとしてのエレベーター広告の問い合わせ・資料請求獲得単価であるCPAは50万円超とタクシー広告に比べ獲得単価が高騰してしまいましたが、現場社員の課題解決につながるようなサービス、ないし、現場の社員の方が日々利用するようなサービスであれば、エレベーター広告を放映しているオフィスビルのテナント企業へは、すでに多くの社員の目に触れサービス利用のメリットを理解してもらえているので、導入までがスムーズに進みます。
また、労務などをターゲットにしたSaaSやクラウドサービスなどのように、導入後の継続利用が重要なサービスにもエレベーター広告は効果的です。
また、エレベーター広告を放映できるオフィスビルのテナントリストもお渡しできるので、放映後、そのテナントリストへ営業をかけた時に、放映ビルと非放映ビルで、サービスの認知率が3倍、営業後の成約率が2倍強高くなるという結果が出ています。
ですので、放映後にしっかりとアウトバウンドで営業することが大切になってきます。
こちらもタクシー広告と同じ最大30秒のフォーマットになるので、テレシーのように、同一のCM素材にて、タクシー広告とエレベーター広告を併用することもよく見られます。
タワーマンションサイネージ:富裕層、またはリモートワークの経営者に向け
タワーマンションサイネージは、都心のタワーマンションのエントランスやエレベーターホール、クローク周辺に設置されたデジタルサイネージのことです。
元々は住民向けの案内がメインでしたが、ここに動画広告を流せるようになりました。
といっても家事代行サービスやふるさと納税のポータルサイトなどの富裕層向けのBtoC向けサービスがメインクライアントで、テレシーが広告主としてトライするまでは、ファミリー層メインのタワーマンションに法人向け広告を流すことなどありえなかったでしょう。
しかし、果たして本当にターゲットはいないのだろうか、と思ったのです。
タワーマンションにはスタートアップや大企業の経営者も多く住んでいますし、折しも、コロナ禍をきっかけにリモートワーク中心に切り替えた経営者も多いのではないかという仮説を立てました。
そういえば、その時の自分もあまりオフィスには行っていないな、と。
そこで、数百万円ほど投下して、タワーマンションのデジタルサイネージにテレシーの動画広告を流してみました。
結果としては、資料請求・問い合わせ獲得単価であるCPAはリード単価100万円程度になり、それだけを見ると、お世辞にもコスト効率のいいプロモーションとは言えませんでしたが、その後何人もの友人経営者から「うちのマンションでも見ました」と声を掛けてもらいました。
顧客獲得の効率は低くても、認知を広げるという意味では十分効果はあったのではないかなと思います。
また、一般的にタワーマンションはセキュリティが厳しく、簡単にはチラシ配布などもできません。
ところが、デジタルサイネージに出稿している特典として、サイネージ近くに設置されたラックにチラシを置くことができました。
テレシーでは起用しているタレントさんを前面に出したチラシを作ることで、デジタルサイネージのみに出稿するよりも、ずらーっとタレントさんが並んでラックにチラシとして並ぶことで、圧倒的に視認性は上がったのではないかなと思います。
そういったトライを経て、総合的に有益な媒体であるという自分なりの感覚を得てから、タワーマンションサイネージについても、広告代理店テレシーとして販売をスタートしています。
アドトラック:意外にもCPAが一番良い結果に
実際に出稿してみて、意外にも「アリ」だと思ったのがアドトラックでした。
アドトラックといえば、音を出して街中を走り回る、トラック広告のこと。
当初は、テレシーのような業態、企業が出稿するようなメディアではありませんでした。
ほとんどがBtoCの企業の出稿でした。
そして、このときも直前まで自粛要請が続いていて、街中でのプロモーションは壊滅的だと思われていました。
しかし、2021年夏から秋にかけては感染者の数も減り、落ち着いているように見えたので、そろそろ街に人が戻ってくるだろうという当たりをつけました。
その頃までに、テレビCM、タクシー広告、エレベーター広告、タワーマンションサイネージなどありとあらゆるメディアを使ってテレシーのプロモーションをしてきたこともあり、幅広い層にテレシーの名前がある程度届いたと思えるタイミングだったので、テレシーのようなBtoBの会社でもチャレンジしてみる価値があると思えたのです。
そうして、2021年10月にアドトラックにテスト出稿してみました。
投下費用は200万円程度でしたが、最初にトライした時は、あらゆる広告メディアの中で最もCPAが良かったのがアドトラックでした。
この結果に驚いて色々なところで話したこともあり、アドトラックに出稿したいというBtoB企業が殺到し、今では街中のアドトラックで多くのBtoB企業の広告が見られるようになりました。
例に漏れず、アドトラックも広告代理店として取り扱いをスタートさせ、多くのBtoB企業がテレシーを通じて出稿してくれています。
ただし、いくらCPAが良いといっても、まったくの無名の状態で出稿しても効果があるとはあまり思えません。
テレシーがアドトラックで成功したのは、テレビCMやタクシー広告、エレベーター広告など一通りのマスプロモーションでテレシーの名前を露出した後で、ある程度認知度が高まったタイミングだったからかなと思っております。
自分としても初めから勝機があったわけではありませんが、様々なメディアでの成功事例を踏襲しつつ、自分なりの仮説を元に、アドトラックでBtoB広告というオリジナルの取り組みをやってみたことが功を奏したのでしょう。
【全マーケター必見】これからの時代で発揮される「テレビCM」の真価
土井さんが信じ抜く、テレビCMのポテンシャル。
広告効果におけるポテンシャルは「運用型テレビCM」の誕生がきっかけだと言います。
※運用型テレビCMとは…製品・サービスの直接的な販売促進や顧客獲得などをKPI化し、インターネット広告のように、短期的に広告クリエイティブや出稿先の変更、調整を繰り返して、広告効果の最適化を図る「テレビ広告」の出稿方法
『逆襲のテレビCM』には今回ご紹介した内容をはじめ、「『運用型テレビCM』の何が革命的だったのか」「どうやってそれを運用するのか?」という具体的な内容まで書かれています。
広告関係者や自社サービス・商品のマーケティング担当者は、手にとって損はない一冊です!
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