企業インタビュー

“精神的な障がい”のある人がすぐ離職するのにはワケがある。知られざる“障がい者雇用”の問題点

“精神的な障がい”のある人がすぐ離職するのにはワケがある。知られざる“障がい者雇用”の問題点

学習〜就職まで「在宅」で

新R25編集部

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企業の求人ページで目にすることが増えてきた「障がい者雇用」。

それもそのはず、厚生労働省は企業に向けて「労働者の2.3%を障がい者雇用にすること」を義務付けており、来年以降はそのパーセンテージを「2.5%⇒2.7%と徐々に引き上げていく」と発表しています*。

そんななか「じつは、この“障がい者雇用”の在り方に問題を感じていて…」と警鐘を鳴らすのが、株式会社manaby代表取締役社長・岡﨑衛さんです。

長いこと“障がい者支援”に向き合ってきた岡﨑さんは、2016年に障がい者の就労移行支援事業「manaby(マナビー)」を立ち上げ、現在は全国約30カ所に拠点を広げています。

そんな岡﨑さんが感じる「障がい者雇用の問題点」とは一体…?

〈聞き手=山田三奈(企業トピ編集部)〉

知られざる「障がい者雇用」の問題点

岡﨑さん

「manaby」は、障がいのある方の就職をサポートする福祉サービス就労移行支援です。

岡﨑さん

このサービスを立ち上げたきっかけは、2011年のころまで遡るんですが…そのころ私は「障がい者施設の運営」に携わっていました。

障がいのある人には「障がい者雇用」というかたちで企業に勤める方もいらっしゃいます。

ただ…じつは、この雇用に問題を感じていまして。

山田

問題…?

岡﨑さん

それは、ほとんどの企業が“会社に出勤して決められた時間働く”という「出社前提の就業スタイル」になっていること。

障がいのある人にとって、「出社」は身体に大きな負担がかかるものです。

そもそも体が不自由で家から出られない方は、出社そのものが難しいですし…障がいの特性上「人混みや乗り物が苦手」という方は、通勤が負担となって体調を崩してしまうこともありました。

山田

通勤のハードルが高いんですね…

岡﨑さん

それだけでなく、精神的な負担も大きいです。

私が運営する施設では、家族・学校・職場などの「人間関係」がきっかけで“精神的な障がい”を抱える人がたくさんいらっしゃって。

そんななかで「職場の人間関係」にどっぷり浸かりながら仕事をすることになるので、ストレスですぐに離職してしまう人が多かったんです。

山田

そうだったんですか…

「障がい者雇用」って最近よく聞くし、なんとなく企業の環境が整ってきているものだと思ってました。

岡﨑さん

もちろん「在宅」を推奨している理解ある企業もありますが、「出社」を前提としている企業もまだまだ多いのが現状です。

だから就労移行支援の内容も「出社」に合わせて進められていて。

事業所に直接出向いて講義を受けたり、面接練習をしたり…といった訓練が中心になるんですね。

山田

じゃあ家から出られない人はどうやって訓練を受けるんですか?

岡﨑さん

私が「manaby」で解決したいのはまさにそこです。

「精神的・身体的理由で家から出られない人」にも、在宅で就労移行支援を受けていただき、最終的には在宅就労が実現できるまでをサポートする

それによって、障がいのある方が“自分らしく働く選択肢”を増やしたいと思っています。

学習〜就職まで在宅で。「manaby」3つの支援

山田

具体的に「manaby」ではどんな支援をおこなっているんでしょうか?

岡﨑さん

私たちがおこなっている支援は、大きく3つあります。

① 独自開発の「eラーニングシステム」

岡﨑さん

まず在宅で学習するために、独自の「eラーニングシステムを開発しました。

デザイン・Web制作・プログラミング・事務などから、希望の職種スキルの動画コンテンツを選んで、自分のペースで身につけていただける教材です。

学べる動画数は1,500以上。たっぷり学べます

岡﨑さん

動画コンテンツをつくるうえで、こだわったところはたくさんあるんですが…

たとえば、こんな工夫をこらしています。

・専門用語を極力使わない

・ゆっくりした口調で話す

・字幕をつける

・休憩がとりやすいように短めのコンテンツにする

・課題を出して参加型にする など

岡﨑さん

さらに、支援員やほかのメンバーとコミュニケーションをはかれる機会もつくっていて。

オンラインで自由に参加できるレクリエーションのほか、ビジネスマナーなどを学べる講座などを定期的におこなっています。

事業所では集中できる個別ブースでeラーニングを受けられます

② eラーニング上で「セルフコーチング」も学べる

岡﨑さん

またこのeラーニングは、ただITスキルが学べるだけでなく、“心のケア”まで学んでいただけるのが特長です。

東北福祉大学との産学連携で、世界初のeメンタルヘルスサービス「セルフコーチング」を開発。ITスキルと同じように動画コンテンツで学ぶことができます。

山田

「セルフコーチング」…それってどういうものなんですか?

岡﨑さん

「セルフコーチング」は、自分で自分に問いかけながら気持ちと行動を整理していくというもの。“自己対話”とも言えるかもしれませんね。

manaby」では、“対話”をとても大切に考えていて

みなさんが「自分らしさ」や「自分らしい働き方」について考えを深めていけるように、manabyのスタッフは対話についての研修やワークなどで学びを深めています。

岡﨑さん

こうした“対話”がひとつのきっかけとなって、10年ほど自宅に引きこもっていた方に自信が生まれ、事業所に通えるようになり、就職先が決まったこともありました。

利用者アンケートでは、98.7%が「利用前に比べて成長を実感する」と回答。

さらに80%の方に「体調の安定を感じる」と回答していただいています。

山田

脅威の満足度ですね…!

③ 企業コラボで“在宅就労先”を広げる

岡﨑さん

“在宅勤務による就職先の開拓”をすすめていくために…

2020年9月には、合同会社DMM.comさんとの共同企画として障がい者採用を目的とした在宅実習を行いました。

山田

へえ〜、DMMさんと…!

岡﨑さん

DMMさんは障がい者雇用に「在宅勤務制度」をいち早く導入しており、すでに「在宅デザイナー」が活躍されていました。

「manaby」でもWebデザインは人気が高い職種なので、志望者の実習から採用までを目指していただけたらと思い、「在宅実習」がかたちになったんです。

実習を通してお互いにミスマッチを減らし、現場に近い体験を通して“働くイメージ”を固められる場になっています。

山田

在宅勤務を目指すには、“企業の協力”が必須になりそうですね…

岡﨑さん

そうですね。現在では、就職者の約5人に1人が在宅就労を実現できているんですが…

それは利用者がスキル訓練を頑張ったのはもちろん、在宅就労という選択肢を用意してくれる企業さんがいるからこそです。

その⼈らしく、得意なスキルを活かして⻑く働くために学べる仕組みをつくる。そして、それを必要とする方々に届ける。これが私たちの使命だと思っています。

「障がい者雇用」を推進する糸口は、働く準備段階の「就労移行支援」にあることが判明。

「manaby」によって在宅支援⇒在宅就労のスタイルが広がれば、「障がい者雇用」の選択肢はもっと広がりそうです。

企業の経営陣や人事の方で「障がい者雇用」をすすめたい方は、ぜひ「manaby」とのコラボ企画を検討してみてください。

もちろん、「家から出られないけど働きたい!」と思っている方や、その家族の方にとっても、「manaby」が転機になるはず。“らしく”働ける環境に飛び込んでみては?

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