ビジネスパーソンインタビュー

専門家が語る"転職失敗の典型例"6選。すぐ辞めたくなったらどうすべき? 出戻りはOK?

「失敗した!」と思ったらどうするのが正解?

専門家が語る"転職失敗の典型例"6選。すぐ辞めたくなったらどうすべき? 出戻りはOK?

新R25編集部

2020/02/13

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人生のターニングポイントである「転職」。

覚悟を決めて転職に踏み切る以上、今よりもっと自分に合う会社に出会いたいですよね。

しかし、のべ5000人の転職サポートをおこなってきた人材コンサルタントの小林毅さんいわく、転職後に「失敗した!」と後悔しまう人も多いんだとか…。

失敗を避けるために知っておくべきこととは?万が一失敗してしまったら、一体どうすればいいの?

そんな「転職の失敗」に関するあれこれを、小林さんにうかがいました。

〈聞き手=篠原舞〉

【小林毅(こばやし・たけし)】人材コンサルタント。外資系ヘッドハント会社を経て、2010年にホライズン・コンサルティング株式会社を設立。法務系人材を中心に約15年、のべ5000人のサポートをおこない、日系大手企業、ベンチャー企業、外資系企業の採用支援にも従事。2013年より厚労省認定「職業紹介責任者講習」講師として、人材紹介事業者に対する法定講習をのべ2500社に対しおこない、不健全と言われる人材業界全体のボトムアップに尽力している。著書に『転職大全』(朝日新聞出版)、『成功する転職「5%」の法則』(自由国民社)がある

転職の失敗を防ぐのに転職エージェントがおすすめ

すでに転職していて「転職に失敗した」と思っている方、これから転職するつもりで「失敗したくない」と思っている方、どちらのケースにもおすすめなのは、無料でプロに転職の相談ができる「転職エージェント」です

もちろん結果的に転職はしなくてもOK。悩み相談に乗ってもらうだけでも、気持ちの整理がつくかもしれません。

新R25が独自におこなった調査や専門家への取材をふまえて、特におすすめできる転職エージェントを一部ご紹介します

もっと詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。

おすすめ転職エージェントランキング!プロと利用者が30社以上を徹底比較|新R25転職

選び方や活用法も解説

こちらではご自身の年齢に合った転職エージェントや業界に特化したものなど、目的別におすすめの転職エージェントを紹介しています。

転職エージェントの比較はムダ。プロたちがおすすめサービスと選び方を伝授|新R25転職

自分の市場価値を確かめるためにも利用すべき

こちらの記事は転職エージェントを初めて利用する方のために、活用するメリットや登録後のフローなどについて詳しく解説しています。

転職してすぐ「また転職したい」と思っている人は多い

篠原

最近では若いうちから転職するのが一般的になってますよね。そのぶん後悔している人も増えているんでしょうか?

小林さん

そうですね。 僕のもとにも、転職してたった数カ月で「やっぱりもう一度転職したい!」と相談しにくる方が後を絶ちません。

篠原

やっぱりそうなんですね…!

小林さん

たしかに、入社しないとわからないこともたくさんありますので、入社後にギャップを感じてしまう可能性は否めません。

ただ、転職活動のやり方を工夫すれば、その可能性を減らすことはできます

篠原

具体的にはどんな工夫をすればいいですか?

小林さん

ありがちな「転職活動で失敗する6つの典型例」をもとに、失敗を避ける方法をご説明しますね。

転職で失敗する典型例① 「転職さえすればうまくいく」と現実逃避

小林さん

1つめは「転職すればすべての問題が解決する」と思っているパターンです。

篠原

というと?

小林さん

なぜ転職したいのか」「転職してどうなりたいのか」という目的をはっきりさせないまま「転職さえすれば大丈夫!」と現実逃避してしまう。

それは結局、問題の解決を“転職後の自分”に押し付けているだけです。

篠原

おっしゃってることはわかるんですが、明らかに会社側に問題がある場合はどうでしょう? “ブラック企業”で徹夜が続くとか。その場合、転職すれば解決するのでは…?

小林さん

「絶対に残業の少ない会社に転職しよう」という目的を忘れずに転職できれば、たしかに問題は解決するでしょう。でもそれが意外と難しいんです。

実際は、転職活動をするうちに焦ってしまう人がほとんど。いつしか転職の目的が曖昧になり、「どこでもいいから内定さえもらえれば解決するはず!」と思ってしまいます。

篠原

だんだん内定をもらうことがゴールになっちゃうんですね…!

小林さん

その通り。転職は目的化しがちなんです。そして入社後に「やっぱりイメージと違った」と後悔するのが典型的な失敗例ですね。

内定をもらうだけでなく、入社後に理想のキャリアを手に入れることでようやく「転職が成功した」と言えます

そのためには、まず目的を見失わないことがなによりも大切です。

転職で失敗する典型例② 転職を決めてから、キャリアについて考えはじめる

小林さん

転職を決めるまで、何も考えていないのもよくないですね。

「転職しよう!」と決めてからようやく「どんな企業を受けようかな?」などと考えはじめる人が多いですが、それでは遅いんです

篠原

それが普通では…?

小林さん

転職しようと決めるときって、何かしらがうまくいっていないタイミングが多いんですよ。

だから焦ってしまい、“内定がゴール状態”に陥るリスクが高いんです。

篠原

言われてみればそうかもしれません。

小林さん

本来なら、仕事が順調で気持ちに余裕があるときにこそ、長期的な視野で“キャリアの深掘りをしておくべきなんです。

現状を知り、将来どうなりたいのかを日頃から考えることが大切です。

篠原

“キャリアの深掘り”をするにあたって、まず何から考えればいいですか?

小林さん

てっとり早いのは「年収」。今の年収が適正なのかを考えてみましょう。

転職サイトの求人情報などを見て、自分の職種の相場を見てみてください。明らかに相場より低い場合もあれば、「意外ともらえてるんだな」と思う場合もあるでしょう。

もらえているとしても、その理由はさまざま。

純粋に実力が評価されていることもあれば、今の会社でたまたま“いいポジション”に収まっているだけの可能性もあります。

それを自分なりに分析すれば、「早めに転職しよう」あるいは「今の会社で管理職になれるまで頑張ろう」など、将来のキャリアプランが見えてくるはずです。

篠原

なるほど。 分析ができていれば、仕事がうまくいかなくなったとしても焦らずにすみそうです。

小林さん

もっとしっかり“キャリアの深掘り”をしたければ、最適なツールが身近にあります。

篠原

身近に…?

小林さん

職務経歴書」です。みんな転職活動中しか書きませんが、それではもったいない。できれば1年に1回更新したほうがいいですね

篠原

転職の予定がなくても、ですか?

小林さん

はい。シートを1枚埋めるだけで仕事の成果を振り返れますし、自分の強みや弱み、やりたいことも明確化できます。

まさに“最強の自己分析ツール”ですので、積極的に活用しましょう。

転職で失敗する典型例③優先順位があいまい

小林さん

将来どうなりたいかを明確にするのはとても大事ですが、それだけでは足りません。

理想ばかりを並べず、自分のなかの“優先順位”もはっきり決めておきましょう。

なぜなら、キャリアの希望を叶えるためには必ず「諦めなければならないこと」も発生するからです。

たとえば収入を上げたいなら、たいていの場合は「仕事が今よりハードになる」という覚悟が必要です。

篠原

逆もまた然り、ですよね。

小林さん

はい。ラクな仕事を選ぶなら、収入には期待しすぎないほうがいいですね。

収入ばかり優先した結果、仕事がツラいと感じる。ラクな仕事を選んだ結果、金銭面のやりくりに苦労する。これは当然の結果です

優先したいことが明らかになっていないと、入社後に「失敗した!」と後悔する原因になります。

篠原

一般的には大事とされていても、自分にとってはそうではないことってありますもんね。

小林さん

はい。優先順位をはっきりさせ、「何を選ぶか」と同時に「何を捨てるか」を考えましょう

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転職で失敗する典型例④ 会社名ぐらいしか誇れるものがない

小林さん

今の会社に依存してしまっている人は要注意。

たとえば自己紹介で「●●(会社名)で働いてます!」と会社名を口にすることしかできない人は、依存している可能性があります。

そのままでは転職で満足いく結果が得られないことが多いので、働き方を見直したほうがいいでしょう。

篠原

どうしてでしょう?

小林さん

唯一のアピールポイントが「会社名」ということは、裏を返せば「会社名より誇れるスキルがない」とも言えるからです。

でも、転職において重視されるのは「どんな仕事を経験してきて、どんなスキルがあるのか」です。

会社の看板抜きでも誇れるような専門性を磨いていないと、外に出ると評価されづらいのが現実です。

篠原

「会社」ではなく「スキル」にコミットすることが大切なんですね。

小林さん

はい。もしアピールポイントが足りないなと思うなら、まずは今の会社に「こういう仕事をやらせてください!」と直談判をしたほうがいいですね。

「私はこういう仕事をしています」と自信を持って言えるようになってからが、転職活動の始めどきです。

転職で失敗する典型例⑤ 希望がはっきりしない状態で転職エージェントに相談する

小林さん

自分に合った求人案件を紹介してくれたり、面接対策のアドバイスをくれたりと、何かとサポートしてくれる「転職エージェント」。

うまく付き合えば頼りになりますが、希望がはっきりしていない状態で相談に行くのは避けたほうがいいですね。

下手すると担当者に嘘をつかれ、転がされてしまいます

篠原

転がされる!? 急に怖い話になった…!

小林さん

というのも、彼らは転職希望者からお金を取らない代わりに、入社が決まった時点で企業から「成功報酬」という形で収入を得ているからです。

つまり求職者からの相談はボランティアも同然。そこから先の「内定獲得」まで進めないと意味がありません。

彼らにとっては「いかに多くの人を転職させられるか」がもっとも重要なんです。

篠原

なるほど。ビジネスモデル的には「転職させるためならなんだってする」となりやすいってことですね。

小林さん

もちろん、真摯に向き合ってくれるアドバイザーもたくさんいますよ。でも、あらゆる手を使って転職させようとしてくる人も残念ながら存在します。

篠原

具体的には…?

小林さん

いち早く内定を獲得させるために、30社以上の求人票を一気に見せてきます。

そして「内定を取るためにはたくさん応募するのが大事だ」と説明されます。

希望がはっきりしていれば、「この中から吟味します」と伝えられるでしょう。本来なら5〜6社応募すれば十分なはずですから。

篠原

たしかに。30社も応募しても、対策をする自信がありません…

小林さん

でも、人によっては大量の求人票を目の前にして「自分を必要としてくれる企業がこんなにあるんだ!」と舞い上がってしまいます。

結果、行きたくもない会社に応募して内定をもらい、入社後に後悔する…というケースをよく聞きますね。

篠原

そんなことがあるんですね。

小林さん

ひどい例だと、早く内定承諾まで進めたいあまりに、1社の内定をもらえた時点でほかの企業の面接を断るように説得してくるアドバイザーもいます。

自分のキャリアプランが明確になっていて、希望条件もはっきりしていれば、そんな説得はすぐに断れるはずですよね。

まわりに何を言われようと、最終的に決めるのは自分です。心を強く保つためにも、転職エージェントへの相談は自分自身とじっくり向き合ってからにしましょう。

転職で失敗する典型例⑥ 転職先が決まる前に退職してしまう

小林さん

最後は「転職先が決まる前に退職してしまう」パターン。これは絶対におすすめしません。

というのも僕自身、転職活動中に無職になったことがあって…

篠原

そうなんですか!?(意外だ…)

小林さん

無職って、想像以上にメンタルに“くる”んですよ

まず会社を辞めると、今までお給料から天引きされていた税金や保険の請求が一斉に届きます。

入ってくるお金はないのに、「こんなに払わなきゃいけないの?」ってくらいの大金が出ていくんです。

篠原

うわあ…それはツラい…

小林さん

しかも転職活動をしても、すぐに次の職場は決まりません。空白期間が長くなるほど内定も出づらくなり、時が経つごとに不安でしょうがなくなります。

そのうちお金がなくなり、電車賃すらもったいないと思うようになって…。時間だけはたっぷりあるから、霞ヶ関から新木場まで歩いて帰ったこともありました

暗い道をトボトボ歩きながら「僕はこの世に不要な存在なんじゃないか」って…忘れもしない、35歳のときです。

篠原

もうそれ以上はやめてください…!

ツラい過去を思い出させてしまいました

小林さん

こうなると「どこでもいいから内定が欲しい」としか思えなくなり、転職先を吟味するどころではなくなります。

一方、定期的な収入さえあれば、冷静な判断ができるはずです。

働きながら時間をつくるのは大変かもしれませんが、それでも絶対、会社は辞めないほうがいいですよ。

篠原

はい、肝に命じます!

「転職に失敗した」と思ったときの対策

篠原

ここからは、すでに転職に失敗してしまった人が取るべき対処法について教えてください。

「もうダメだ!」と思ったら、やっぱり再転職するしかないんでしょうか…?

小林さん

どうしても耐えられないなら、期間で判断するといいと思います。

入社してから1週間程度の超短期であれば、会社と交渉してすぐに辞め、入社自体をなかったことにしましょう。その程度なら、空白期間でも転職活動中として問題ないですよ。

転職して半年以内だったら、転職活動のときに比較していた会社に連絡を取り、再選考をお願いする手もあります。

最終選考まで残っていれば、取り合ってくれるかもしれませんよ。

篠原

それもアリなんですね!

小林さん

最終選考まで残したということは、その会社にとって魅力的な人だったということ。イチから選考し直すよりも効率的なので、採用したいと思ってくれる場合もあります。

ただ、あくまで先方次第ですので、断られたら潔く身を引くこと。そして打診の際には、やりすぎなくらい頭を下げたほうがいいですね(笑)。

篠原

なるほど。勇気はいりそうですが、思い切って行動するのもアリですね。

小林さん

もし入社して半年以上経っていたら、もう諦めて働きながら次の会社を探しましょう。

「こういう成果を出しました」と語れたほうが次の転職の成功率が上がるため、多少ツラくても一生懸命取り組んだほうが賢明です。

篠原

転職前の、もともといた会社に出戻るのはアリですか?

小林さん

「辞めた人は裏切り者」と捉える人は多いので、慎重なコミュニケーションが必要ですが、可能性はあると思いますよ。

最近だと「Welcome Back制度」など、一度辞めた社員が戻ってくることを奨励する制度を設ける会社もあるくらいです。

篠原

なるほど。転職に失敗したと思っても、挽回できる策はあるんですね。

小林さん

でも一番大事なのは、こういった策を使う前に「失敗した原因」をはっきりさせることです。そうしないと、また同じ失敗を重ねてしまいます。

転職で失敗しても人のせいにはできません。「決定権は自分にある」と心に刻んで、進むべき道を考えてみてくださいね。

転職はゴールではなく、あくまでキャリアの通過点でしかありません。

まずは長期的な視野で“理想のキャリア”を明確にすることが、転職成功への一番の近道なのかも…。

転職活動を笑顔で終えるために、まずは“キャリアの深掘り”からはじめてみませんか?

〈取材・文=篠原舞(@maichi6s)/編集=石川みく(@newfang298)〉

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