企業インタビュー
自分に熱中し、ベストな状態への実験を繰り返す「旅と人生をつなぐ大人の学び・POOLO」創設者の“はたらくWell-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
新R25の読者のなかには、「休日は楽しいけれど、仕事や日常には充足感を感じられない」「人生をまるごとアップデートして、Well-beingに過ごしたい」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回紹介するのは、「旅」を広める会社である株式会社TABIPPO執行役員の恩田倫孝(みっちー)さん。「POOLO(ポーロ)」という、「旅と人生をつなぐ大人の学び」をテーマにしたオンラインスクールを創設、運営しています。
株式会社TABIPPOのメンバー
20代~30代のミレニアル世代を中心に、POOLOを通してWell-bingな生き方や自分らしいはたらき方を考える機会を創出するみっちーさん自身の、“はたらくWell-being”についてお聞きしました。
株式会社TABIPPO執行役員。1987年生まれ、新潟県出身。慶応理工学部在学中から、TABIPPO学生支部として1,000人規模のイベントの代表を務る。新卒では商社に入社。3年務めた後退職して1年間の世界一周へ。帰国した2014年にTABIPPOへ入社。イベント作りや場作りを中心に行い、2019年にPOOLOを創設
平成が終わる2日前。31年ぶりに実の父と会いました。そのことについてのエッセイを書きました。
— みっちー/あたらしい旅の学校「POOLO(ポーロ)」主催 (@MichinoriOnda) May 1, 2019
すごく緊張したけど、いい時間だったなあ。
31年の歳月を埋めた平成が終わる2日前。https://t.co/VQtSHdQkOI
非日常だけでなく、日常をもっとWell-beingに。旅の会社が運営する学校・POOLOとは
くぼちゃん
POOLOについて、教えてください。
恩田さん
「旅と人生をつなぐ大人の学び」をコンセプトとした、オンラインスクールです。
2019年に創設し、現在は「ライフデザインコースPOOLO LIFE・トラベルクリエイターコースPOOLOJOB・ローカルコーディネーターコースPOOLO LOCAL・ビジネスリーダーコースPOOLO NEXT」の4コースがあります。
くぼちゃん
4コースも!
恩田さん
卒業生は900人以上の一大コミュニティにもなっています。最もベーシックなPOOLO LIFEは、自己内省をするなかで自身の強みを見つけ、ライフデザインを描きながら、今後のはたらき方やWell-beingについて深く考えて、人生をアップデートするコースです。
『超ミニマル主義』の著者である作家の四角大輔さんや、『五体不満足』の著者でありタレントの乙武洋匡さんなど豪華講師陣による講義を受けながら、仲間との共創を行うのが特徴です。
コースや期を超えたつながり・交流会がある
くぼちゃん
POOLO創設のきっかけを教えてください!
恩田さん
僕はTABIPPOに入社した2014年から、POOLOの前身である「旅大学」というイベントを担当していました。
旅を広めるTABIPPOのイベントなので、旅と何かを掛け合わせた企画を行い、単発のイベントを5年間で600回ほど、年間で3,000人~4,000人を動員していました。
またそれとは別に年に1回、8,000人規模の野外フェスも主催していたんです。
くぼちゃん
すごい回数と動員数! 旅大学が、なぜPOOLOに形を変えたのでしょうか?
恩田さん
イベントの回数を重ねていくなかで、「イベントや旅という非日常は楽しいけれど、仕事や普段の日常が楽しくない」という声を聞くようになったんです。
TABIPPOは、旅を広めることで、世界を豊かにすることに大きく貢献したいという想いがあります。
ただ、旅などの非日常だけでなく、本当に大事な日常こそ豊かでWell-beingになってもらいたい。
そのためには、単発イベントではなくもっと長い学びとつながりが必要と考え、スクール型のPOOLOを創設したんです。
くぼちゃん
確かに、日常の方が時間としては長いですもんね。
みっちーさんやPOOLOが考える、Well-beingに必要なものとは何でしょうか?
恩田さん
「旅と内省とコミュニティ」が、Well-beingを構成する3大要素だと考えています。
旅は、海外や世界一周に限らず、少しだけ遠くに行く非日常のこと。非日常において、自分は何を良いと感じたのか、何を得たのかを言語化することで自分の価値観を知るための行為が内省です。コミュニティは日常を示し、非日常を内省してコミュニティに持ち帰ることで、日常の居心地が良くなるループを目指しています。
つまり、POOLOは「日常と非日常を橋渡しする」役割ですね。
ドーパミン100%の刹那的な高揚感から、45℃のあったかいお風呂につかっている喜びへと変化
くぼちゃん
旅と内省とコミュニティ、これら3つの要素を構成する原体験はありますか?
恩田さん
TABIPPOへ入社する前、1年間にわたり世界一周をしていたんです。
そこで体験した、アメリカのバーニングマンの「自己表現」、スペイン巡礼の「内省」、ブラジルのカーニバルの「共創」が、POOLOが大事にする原点となっていますね。
くぼちゃん
何だか面白そうな体験ばかり…! 詳しく教えてください。
恩田さん
アメリカの広大な砂漠で、1年に1回「バーニングマン」という奇祭フェスが行われます。そこでは、何万人という参加者が、人目を気にせず自己を爆発させながら共同生活をします。
お金が使えない、GIVE&GIVE&GIVEの精神などの独特な文化のなかで、参加者はお尻に風船をつけていたり、ネクタイだけを身につけていたり、それぞれが思い思いに自己表現をしているんです。
誰かの目を気にしない自己表現に感動して、自分らしさがWell-beingにつながると感じました。
くぼちゃん
すごい…! 日本ではなかなか味わえないですね。
恩田さん
「スペイン巡礼」とは、サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かって何百キロという道を巡礼することです。
僕は1ヵ月間、毎日25キロ歩き続けて800キロの道を巡礼したんです。ひたすら歩き続ける毎日のなかで、自然と自分のことを考えるようになりました。
それまで内省する習慣や発想がなかったのですが、巡礼を機に内省の大切さを知りましたね。
くぼちゃん
確かに、忙しい日常を送っていると、意識しないと内省できないかもしれないですね。
恩田さん
「ブラジルのカーニバル」というのは、もっとも有名なリオのカーニバルではなく、サルヴァドールという都市のカーニバルのこと。
そこでは、自分たちが演者として出演できるんです。
ただそのためには、他の演者とともに6週間の練習が必要。
ブラジルにいながらずっと太鼓の練習をした結果、カーニバル当日はだんだん音が重なり合っていく共創がうまれ、ゾクゾクして面白かったんです。
くぼちゃん
聞いているだけでワクワクします!
そんな濃い体験が、今のPOOLOにどう結びついていますか?
恩田さん
POOLOでは、誰もが「自己表現」できるよう、心理的安全性を重視したコミュニティを設計しています。
自己表現のためには、まず自分について言語化する「内省」力も必要。
ただ、忙しい日常のなかでひとりで内省するのはハードルが高いため、旅が好きだったり、人生をアップデートさせたいなどの同じ価値観をもった仲間とともに行います。
そして、POOLOの期間中だけではなく、卒業後もずっと続く濃いつながりをうむために「共創」が必要と考えており、チームメンバー同士での共創課題も行います。
そんな活動を繰り返すなかで自己理解が深まり、一生涯の仲間に出会え、自身の人生をWell-beingな状態へとアップデートさせて社会にも還元していくのがPOOLOの仕組みです。
高い心理的安全性のもとで共創した仲間とのつながりは本当に濃くて、参加者同士で起業をしたり、結婚するケースもあるんです。
くぼちゃん
参加者の人生が変わっていく姿を間近で見ることができるのは、運営としても、仕事へのやりがいにつながりそうですね。
恩田さん
そうなんです。以前は、イベント当日に感じる、ドーパミン100%の刹那的な高揚感にはたらく喜びを感じていました。
最近は、POOLOの卒業生たちが濃いつながりを保ち楽しそうに活動している姿を見ると、45℃のあったかいお風呂につかっているような喜びを持続的に感じられて、そこに幸せを感じられるようになりました。
みっちーさんもPOOLOの卒業生たちとつながりをもつ
自分に熱中しベストな状態への実験を繰り返す。バトンをつないで、日本と世界をWell-beingに
くぼちゃん
みっちーさんがはたらくうえで重要視していることはありますか?
恩田さん
常に、「三方良し」のバランスを考えています。
今の仕事でいえば、POOLOのカリキュラムを考える時も、自分自身の興味・参加者の興味・会社の利益になることの3つを叶えているか? の視点を大切にしています。
また、自分の人生の主役は自分である自覚を持って、自己決定することも大事だと思っています。自分で決めたことならば、他責にせず、自分で責任をもって全うできますから。
どちらも自分自身がWell-beingでないといけないので、良い状態に保つことは欠かせないです。
くぼちゃん
どういったことですか?
恩田さん
自分の人生に熱中し続けていられるよう、自分のベストな状態への「実験」を日々繰り返すことですね。
日々の小さなことなのですが、例えば、睡眠時間やシャワーの時間、どういうタスク管理方法だったら、ベストな自分ではたらけるのか。すべて日々の「実験」だと思うと面白いんですよ。
僕の原体験であるバーニングマンの合言葉のひとつである「傍観者であるな」。
この言葉と出会えたおかげで、僕は自分の人生や日常に対しても、傍観者にならないようにしています。
くぼちゃん
「実験」と捉えると、視点が変わって仕事や日常もWell-beingに近づきそうですね!
恩田さん
そんな「実験」のひとつの手段が、POOLOという可能性もあると思うんです。
POOLOは世界一周を目指す旅人ばかりが集まると思われがちですが、実態はそうではありません。
日常をまるごとWell-beingに過ごしたいと思っている参加者が集まっています。ひとりではできない実験も、コミュニティの力を借りたらできることもあります。
自分のやりたいことやライフデザインに迷いがある場合も、仲間とともになら踏み出せることもあります。
そうして、自分の人生をアップデートした参加者たちが、周りの方たちや訪れたどこかの地域やそこに住む人々へとバトンをつなぎ、良い影響を生み出し続けられたら、もっと日本や世界は良くなると考えています。
くぼちゃん
バトンをつなぐ。素敵な表現!
恩田さん
2024年9月現在は、4コースあるPOOLOのなかで、POOLO LOCALを募集中です。
こちらは、日本の地域を舞台にプロジェクトを実現する力を身につけ、地域を盛り上げるローカルコーディネーターを育成するコースです。
恩田さん
POOLO LOCALの参加者が、バトンをつないで日本の地域をより豊かにしていってくれたらと願い、これからも“はたらくWell-being”で日々実験を繰り返しながら運営を続けていきます。
<取材・文=くぼちゃん>
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