企業インタビュー
はたらくWell-beingの入り口をつくる! 27歳CEOが挑む“就活業界”の革新的アプローチ
新R25編集部
はたらくことを通して感じる幸せや満足感、“はたらくWell-being”。誰もがこれを実感することができれば、個人も会社も、もっと多様で豊かになれるはず。
パーソルグループは昨年、一人ひとりの“はたらくWell-being”について向き合い、ともに考え、行動をするオンラインコミュニティ「はたらくWell-beingLab.」を開設しました。
「はたらくWell-beingLab.」には、年齢や居住地、セクシャリティはもちろん、はたらき方や職種も多様なメンバーが集まっています。
「はたらく幸せ」を、さまざまな角度から考えるために。
「はたらくWell-beingLab.」では、ゲストをお迎えして“はたらくWell-being”を実現するためのトークイベントを開催しています。
「〇〇様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。」
こんなメールをもらったことは、ありますか?
就職活動や転職活動の際、不採用のメールの文末に登場するこの言葉。いつしか、「お祈りメール」と呼ばれるようになりました。
お祈りメールを受け取ると「自分は社会から必要とされていない」と感じ、「就活鬱」になってしまう就活生もいるそうです。当時大学生だった久保駿貴さんは、就職活動が上手くいかず鬱になってしまった親友の姿を見て、就職活動の「過程」を評価するサービス「ABABA」を立ち上げました。
はたらく入り口となる「就職活動」を、辛いだけのものにしたくない。「過程」が評価され、「努力」が認められる社会を目指す。
今回は、株式会社ABABA・代表取締役社長の久保駿貴さんをお迎えしたトークイベントの様子をお届けします!
〈聞き手=柴山由香〉
兵庫県明石市出身。岡山大学理学部4年次、友人の就職活動をきっかけに「就職活動の過程が評価される」スカウト型サービスABABAを創業。累計6億円の資金調達を実施し、最年少で経団連に加盟。東京MX「堀潤モーニングFLAG」にてコメンテーターも務める。FORBES JAPAN「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」2024選出
保険をかけることで、挑戦しやすくなる! 地に足がついた27歳のスタートアップCEO
柴山
話題の「ABABA」の久保さんにお話を伺えるとは…! 楽しみにしてました。
今年3月、経団連に加盟したことで、かなりニュースになっていましたよね。久保さんは、X(旧Twitter)で「設立3年半での早さに加え、26歳最年少(久保調べ)での加盟」とポストされていましたが、日経新聞でも「設立して間もない関西の未上場企業が経団連に名を連ねるのは異例」と報道されていました。
久保さんは現在、27歳だとか。起業家やスタートアップ企業のピッチコンテストでも、多くの受賞歴をお持ちですよね。
久保さん
ありがたいことです。ABABAを立ち上げる際、まずは資金が必要だったこともあり、コンテストの賞金には助けてもらいましたね。
柴山
なるほど、資金調達の側面もあったんですね。他の参加者からは「ABABAが出るんじゃ、勝てない」と言われるほどだったとか…!
久保さん
「またいるのか」と言われることもありました。もう、出禁になるんじゃないかと思いましたね(笑)。
でも、ピッチに出たことで広く知ってもらうことにもつながりましたし、めちゃめちゃ練習しなくちゃならなくて大変でしたが、今となってはすべていい経験になりました。
ピッチコンテストに出場して得た賞金で経費をまかないつつ、認知も広げる!
柴山
27歳でこれだけの経歴があると、一見、何の失敗もなくやってこられたように見えるのですが…。
久保さん
いやいや! まったくそんなことはなく、もう失敗だらけです。
ABABAの前にふたつの事業を立ち上げましたが、どちらもうまくいかなくて。でも、振り返ってみると、どれも必要な経験や学びで、通っておかなければならない道だったと思います。
柴山
なるほど...! 久保さんの過去を遡ってみると、大学を変えて編入をしたこともあるんですよね。
久保さん
はい。大学生のころは絶対に起業しようとかは思っていなくて、はじめは、気象予報士を目指していたんです。関西大学に入学したのですが、やりたかった研究からはちょっと遠いなということを感じていて、3年次で岡山大学に編入を決めました。
僕、やりたいことに対しての諦めが悪いんですよね。
柴山
まさかの気象予報士…!
久保さん
今は気象については少し話せるくらいですが、話のタネが多いことは役に立つので、本気で研究をしていてよかったなと思いますね。
柴山
過去の全然違う分野の研究も事業の失敗も、今の久保さんやABABAの経営に役立っているんですね。
久保さん
人生は長いから、絶対にどこかで回収するイミングがくると思います。
研究室での取り組みをどうビジネス化するか考えたり、大学に眠っているアイデアをどう社会実装するかと考えたりするのは、今の事業につながっていますね。
柴山
他大学に編入するとなると、また試験や手続きがあるし、起業するのもパワーが要りますし。それでも自分のやりたいことのために挑戦するフットワークの軽さに驚きますし、そもそも久保さんってタフですよね。
久保さん
確かに、すぐ行動しますね。大学時代、憧れていたサッカーの本田圭佑選手に会いに行ったり、本田さんに出資してもらうために追いかけたりもしました。これは…母親譲りなのかな? 母は、めちゃめちゃフットワークが軽い人なんです。
柴山
お母さま…! そういえば、大学の編入や起業をする際に、止められることはなかったんですか?
久保さん
そこは、しっかりと保険をかけていました。大学時代は教職課程を履修して、高校理科の教員免許を取得しまして。万が一自分の事業に何かあったとき、教師という選択肢がひとつあるのはいいなと。
今は大学院に通っていて、あと数年は猶予があるので、その間にABABAを大きくしなきゃと思っています。最悪、うまくいかなかったら大学院を卒業したあと、一旦就職するという道もありますし。
柴山
確かに、変化が激しい時代だからこそ「ここしかない」と居場所が限られてしまうと、不安になってしまう気がします。何か資格や免許があるというのは、安心材料になるかもしれないですね。
久保さん
スタートアップの代表って、イケてるように見えることもあるそうですが、僕は真逆のタイプです(笑)。たくさん失敗をしてきたので。
でも、保険をしっかりかけておくと、挑戦もしやすくなるんですよね。
めちゃめちゃ地に足がついている27歳CEO久保さん
人の良さは仏並み!? ABABAのミッションは「隣人を助けよ。」
柴山
起業家のなかには、苦労した経験からハングリー精神を持って事業に取り組むという方もいますが、久保さんからはそういう感じを受けなくて。意外と、普通のご家庭で育ってきたというか…。
久保さん
そうですね。僕の地元は海からすぐ近くの港町で、県立の小中高に通って…ごくごく普通の家庭や環境で育ってきたと思います。
柴山
そんな久保さんが立ち上げたABABAの起業理念には、「隣人を助けよ。」とありますよね。この理念はどこから…?
久保さん
「困っている人がいるなら助ける。」
これは、昔からの両親の教えですね。僕は田舎で育ち、ABABAとともに東京に来て、これまでいろいろな人に出会ってきました。
そのなかで感じるのは、みんな育ってきた環境も背景も違うので、本当に多くの考え方や価値観があるなということ。それらを、まずは受け入れる。そこから対話してみたらいいかなと思っています。
柴山
素敵な考え方ですね…!
実は、私の会社とABABAのオフィスはご近所なんですよね。共通の知り合いがいることもあり、以前、久保さんを弊社オフィスでのランチに誘ったら、忙しい合間を縫って来てくれたんですよね。しかも、ご馳走になるからと手にみかんを握りしめて…! なんて素敵な人だろうと思いました。
久保さん
みかん1個じゃないですか(笑)!
柴山
いやいや、素敵なエピソードです。いつも笑顔だし、朗らかだし。
そんな仏のような久保さんのABABAでは、どんな人たちにはたらいてほしいと考えていますか?
久保さん
まず、ABABAの仕事を好きでいてほしいですね。あと、ABABAはとにかくいい人が多いです。「いい人」という言葉の定義は難しいですが、困っている人がいたら手を差し伸べるとか、ゴミ箱がいっぱいなら替えておくとか。
そういう気づかいができる人が集まっているし、そういう人に向いている組織だと思います。
柴山
めっちゃ雰囲気が良さそうですね。
久保さん
定期的に役員が面談をしているのですが、メンバーのモチベーションは高いですね!
そうでないと、はたらいていても楽しくないと思うので。僕たちのサービス自体、社会性があり、自信を持って説明できるものなので、やりがいがあると感じているメンバーは多いと思います。
柴山
ABABAは、就職活動を頑張る学生さんの助けになるのはもちろん、採用担当者にもうれしいサービスですよね。
担当者も、採用の枠やいろいろな条件から「お祈りメール」を出さざるを得ないわけで。そのメールが応援になるなら、採用担当者もすごく救われますよね!
久保さん
そうなんです。ABABAの初期ユーザーさまも、ここに共感してくれる方がほとんどでした。ビジネスの基本である、三方良しなサービスにできたらと。
成功報酬型なので企業側の導入デメリットもほとんどないから、営業チームも「僕らのサービス使うしかないでしょ!」と自信を持ってやってくれていますね。
営業職が辛い、みたいな話を聞いたこともありますが、僕たちはあまりないかもしれないです。もしかしたら、本質的な営業力はつかないかもしれませんが(笑)。
ハードワークが、今の自分にとっての心地よいはたらき方
柴山
久保さんは、はたらいていて心が折れそうになったり、もう無理だと感じたりしたことはありますか?
久保さん
折れそうになったことは…いや、ないかも。これまでの人生のなかで一番辛かったのは、浪人期間でした。それ以上に辛かったという経験は、今のところないかもしれません。
通っていた高校はそれなりの進学校で、半分くらいが医学部や旧帝大にストレートで進学するようなクラスでした。みんな進路が決まっていくなかで、自分だけ決まらないというのは辛かったですね。
もちろん、起業もしんどいですよ。講演会とかで「起業はしんどいですか?」と聞かれたら、素直に「しんどいのでやめておいた方がいいです」と言っちゃうこともあります。ABABAをつくりながら蕁麻疹も出ましたし、逆流性食道炎もやりましたし。
柴山
蕁麻疹…!
久保さん
睡眠時間を削ることもありましたし、僕はハードワーカーなんだと思います。でも、僕にとっては、これが心地いい状態なので(笑)。
柴山
それは、やりたいことと仕事がフィットしているからですか?
久保さん
そうですね。はたらく人って、それぞれ事業内容も工程も違うわけじゃないですか。だから、はたらく時間も当然違うわけで。それなのに法律や規制で一律で「労働時間は何時間まで」と決めてしまうのは、本当に適切なのかなと危機感を感じることがあります。
日本の産業が伸びていた時代は、みなさんものすごくはたらいていたし、このままでは日本は衰退してしまうんじゃないかという危機感を持っています。
柴山
確かに。久保さんは、日本全体のことも見ているんですね。
久保さん
日本が成長するためにも、今はまず自分がしっかりとはたらくしかないかなと思っているんです。もちろん、全員がそうというわけではなく、それぞれの心地よいかたちを探していいと思います。
休むことはもちろん大切ですし、家族やお子さんがいるメンバーもいます。それぞれのはたらきやすさは大切にしつつ、もっとはたらきたいという人がいれば、ちゃんとはたらけるようにしていきたいですね。
柴山
「もっとはたらきたいのにはたらけない」という新卒の声があると聞いたことがあります。
久保さん
まさに。ABABAもテレビやニュースなどメディア出演が増えると、問い合わせ量が一気に増えて、メンバーの負担も大きくなってしまいます。
それでも期待に応えたいと頑張るメンバーがいるので、そこは僕も応援して一緒に頑張りたいなって。もうやるしかないぞ! と。
役職関係なく、ユーザーのためにチームで向き合う
柴山
久保さんが一緒に頑張ってくれるのは、メンバーも心強いですよね!
久保さん
今は、とにかくABABAに全力投球して大きくしていかないといけないので。
これまでたくさんの人に応援していただき、サポートしてもらってきたと思っていて、いい意味で責任も感じています。
やっぱりまだ、地方の国公立大学から起業している人は少ないんです。だからこそ、地方からでもやれるんだぞという一つの道を示さなきゃなと思っています。この先の日本は、地方が盛り上がらないといけないですから。
柴山
こうやって頑張っている久保さんの姿は、岡山の方にとってきっとうれしくて誇らしいですよね。
久保さん
岡山に帰ると、ものすごく喜んでもらえますね! だからこそ、ちゃんと貢献しなきゃなと。
個人的には、田舎でゆっくりしたいのですが(笑)。でも、みんながそれをしてしまうと、日本が後退してしまうので…いったん、自分が頑張ってみようと。
柴山
久保さんのような若者がいてくれること、すごく勇気づけられますね。私は久保さんよりずっと年上ですが、もっと頑張ろうと思えました…!
久保さん
いやいや…! 先輩方がいてくださってこそ、頑張れるんです。僕らもしっかり盛り上げていきます。
はたらきながら“しあわせ”を感じられる人が増えるように、はたらく入り口となる就職活動の仕組みを、ABABAで充実させていきたいですね。
「はたらくWell-being Lab.」は、これからも“はたらくWell-being”を考え、向き合う場をつくっていきます。
オンラインコミュニティ「はたらくWell-being Lab.」への参加申請はこちらから。どなたでも参加いただけます!
<執筆=野元萌乃佳/写真提供:ABABA>
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