企業インタビュー

アウトドア業界から誕生した奇跡の調味料「ほりにし」。開発担当者の“はたらくWell-being”は好きなことを仕事にし、辛いときこそ笑顔でいること

アウトドア業界から誕生した奇跡の調味料「ほりにし」。開発担当者の“はたらくWell-being”は好きなことを仕事にし、辛いときこそ笑顔でいること

連載「“はたらくWell-being”を考えよう」

新R25編集部

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リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。

現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。

そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

2019年、アウトドア業界に突如として現れた「アウトドアスパイスほりにし」をご存じでしょうか。

キャンプイベントでの販売をきっかけに、その万能性や癖になる味わいから瞬く間に口コミやSNSなどでも話題に。発売から1年後には約10万本、累計730万本超を販売する大ヒット商品になりました。

「日清焼そばU.F.O」や近畿エリアのローソンにて商品監修をするなど多様な企業ともコラボを行い、現在は肉・魚・野菜・白米にも合うスパイスとして、アウトドアシーンを飛び出し、一般家庭の常備スパイスとしても普及しています。

そんな「アウトドアスパイスほりにし」は、和歌山県にある「アウトドアショップOrange」を運営する株式会社ミモナの社員、堀西晃弘(ほりにしあきひろ)さんが開発を担当したとのこと。

もともとアウトドア好きだった堀西さんはどのようなキャリアを歩んできたのか、そして「好きなことを仕事にしたこと」で見えた景色の広がりを聞きました。

幼少期からテントを担いで野宿をし、渓流釣りを楽しんだ記憶を持ち、中・高校時代はスケートボードとバスフィッシングに没頭。現在は、アウトドアショップに立ってお客さまにキャンプの楽しみを伝える一方、プライベートではフィッシング三昧の生活を送っている。二児のパパ

異業種からの転職。趣味を仕事にしたことで生きた知識

ーー(編集部)もしかしてあなたが「アウトドアスパイスほりにし」の生みの親、堀西さんですか!?

堀西さん

自分で言うのも照れますが…私が堀西です(笑)。今日はよろしくお願いします。

「ほりにし」の開発を担当した堀西さん

ーー(編集部)よろしくお願いします! 私も日々「アウトドアスパイスほりにし」を愛用させてもらっているのですが、まさか開発者のお名前も堀西さんだとは思いませんでした!

堀西さん

正直、僕もまさかですよ。商品名を決めるときに社長が言った「『ほりにし』でどや!」との一言で、「ほりにし」になりまして。

ーー(編集部)ええ!? その一言で決まったんですか?

堀西さん

自分の名前が商品名になる経験なんて早々ないよな、と思い快諾しましたが、これほど認知いただけるとは…想定以上でしたね

「日本人の舌に合うアウトドアスパイスを目指していたので、名前も和のイメージにしたかったようです」

ーー(編集部)堀西さん自身はもともとアウトドア好きで、キャンプや釣りが趣味なんですよね。

堀西さん

はい。子どものころから、キャンプに行くことが家族の定番でした。

そこから自然と、友人たちとギアを持ち寄って自分たちだけでキャンプに行くようになりましたね。

ーー(編集部)ということは、アウトドア好きが高じて今の会社に入社されたんですか?

堀西さん

いえ、新卒で入社したのは別業界の会社でした

というのも、当時は今ほどアウトドアブームでもなく、キャンプの認知度も低かったので、単純にアウトドアが好きというだけで、それを仕事にする決断に踏み切れなかったんです

ーー(編集部)確かに、アウトドアブームになったのは、コロナ禍がきっかけでしたよね。

堀西さん

だけど仕事をしていると「もっとアウトドア・キャンプのことをずっと考えていたい」と頭のなかでそればかり考えるようになっていて。

好きだけで仕事にしていいのか”と決断できなかったことが、“好きだから仕事にしたい”という思いに変わっていきました。

ーー(編集部)それほどキャンプが好きだった。

堀西さん

そうなんです。というか、もとを正せば僕は好きなことじゃないと続かない性格なんですよ。

意志が固まってからはどうにかしてアウトドアを仕事にできないかと思っていたのですが、たまたま趣味で繋がりのあった今の社長が、アウトドアショップを立ち上げるからと人を探していて、僕からお声かけさせていただきました。

遠回りはしましたが、やっと自分が好きなアウトドアを仕事にすることができたんです

現在、「アウトドアショップOrange」は近畿地方から首都圏まで8店舗を展開し、2つのキャンプ場運営も行っています。

ーー(編集部)すごい…! 趣味からご縁が繋がったんですね。ショップを立ち上げてからは何をされていたんですか?

堀西さん

接客と販売を担当していました。立ち上げ当初はアパレルが中心だったのですが、徐々にお客さまから「ギアも販売してほしい」とのお声をいただき、今ではアウトドア用品全般を取り扱っています。

「アウトドアショップOrange」は、株式会社ミモナの代表が地元・和歌山を活性化させたいという思いから始めたお店

ーー(編集部)もともとアウトドアのご経験があるから、趣味の知識が生きたんじゃないですか?

堀西さん

まさにです。着たことのあるアイテムも、使ったことのあるギアも多かったので、自信を持ってお客さまに勧められましたし、お客さまも納得感を持って選択していただけたと思います。

運営するキャンプ場でお客さまに会ったときに「堀西さんがおススメしてくれたギア、使いやすいね!」と言っていただけたときは嬉しかったなあ。

ーー(編集部)実際に使っている風景が近くで見られるのは、やりがいに繋がりますね!

堀西さん

そうですね。自分の知識が役に立って、そのお客さまの反応をダイレクトにいただけるのは今の仕事のやりがいのひとつです。

自分の何気ない一言からスタートしてしまった、一大プロジェクト!

ーー(編集部)そこからなぜ、アウトドアスパイスを作ることになったのでしょうか?

堀西さん

僕の小さな一言が、引き金になりました

僕がキャンプをするなかでの楽しみは、外でお酒を飲むことなんですけど、お酒を飲むまでの道のりが実は意外と長いんですよ。

キャンプ場にチェックインして、ギアを設営して、焚火を準備して、アテを作ってからようやくお酒を楽しめる。季節によっては、楽しむころには日が暮れてしまっているときもあります。

そこで「もう少し料理の手間が省けたらいいな」「できれば1本で味が決まる調味料があればいいですよね」と、社長に漏らしたんです。

ーー(編集部)ということは…!?

堀西さん

はい、その一言がきっかけで「それなら作ってみよう!」とアウトドアスパイスづくりが始まりました。

ーー(編集部)なんと! キャンパー堀西さんのリアルな悩みから、商品づくりが始まったと。

堀西さん

気がつけば会社をあげてのプロジェクトになり、言い出しっぺの僕がリーダーを務めることになりました。

ーー(編集部)ちなみに、堀西さん自身はそういった食品開発の経験は…?

堀西さん

ありません。さらに、会社としても初の食品づくりだったので、みんなも何も知らない。0からのスタートでした

ーー(編集部)今や看板商品とも言える「アウトドアスパイスほりにし」がそんな形で始まったとは!

堀西さん

なのでもう、とにかく手探り状態で

当時キャンパーたちの間でよく使われているスパイスがあったので、まずはそれをベンチマークにもっと美味しいものを作ることを目標にしました。

市販されているさまざまなスパイスを購入し、調合してテイスティング、調合してテイスティングをひたすら繰り返しましたね。

キャンプ中の楽しみ=お酒を飲む時間を長くしたいと思っていた堀西さん

堀西さん

だけど、何をどうすれば美味しくなるのかがわからず、自分たちでの開発には限界があることに気がついて。

調味料の専門家に依頼して、サンプルを作ってもらうようにしたんです。

ーー(編集部)まずは自分たちで挑戦してみるという熱意がすごすぎます。専門家が見つかったあとはどうやって「こういう味にしたい」を伝えていくんですか? だんだん味がわかるようになってきたとか?

堀西さん

そんなことはありません(笑)。

なので、ほとんど感覚です。できあがったサンプル調味料をテイスティングして「もう少しマイルドな感じがいい」「もう少しアクセントがほしい」という感じに。これがめちゃくちゃ大変でした。

販売合格ラインとして、ミモナの全社員のうち8割が「美味しい」と評価したら商品化するという基準がありました。

ですが、テイスティングを繰り返すと同じサンプルを渡しても、食べる順番によって味の感じ方が変わり、食べる人のコンディションによっても意見が変わってしまうんですよね。

ーー(編集部)確かに、お腹が空いたときに食べると何でも美味しく感じたり、逆に疲れていると刺激のあるものはあまり美味しく感じられなかったりします。

堀西さん

また、ベンチマークはあるものの「それよりも美味しいスパイスを!」という目標だったので、明確な答えがあるわけでもない。

どこまでいったら終わりなんだろう…と気が遠くなることもありました

ーー(編集部)そんな苦労があったとは…食品開発って途方もないですね。

堀西さん

最終的に試作したサンプルは70種類以上、テイスティングテストは全社をあげて130回以上しました。

商品づくりを始めて5年、ようやく合格ラインを超えて「ほりにし」が生まれました。

ーー(編集部)そんなに!? よく諦めなかったですね!?

ついに完成した「アウトドアスパイスほりにし」

堀西さん

やっぱり、会社の一大プロジェクトでしたから

会社として「いいスパイスを作りたい!」という想いを持ってみんなで取り組んでいたので、何とかやり遂げられました。

完成したときは、とにかくホッとしたなあ。ようやく決まった!という安堵が大きかったです。

ーー(編集部)その後、商品名も「ほりにし」に決まり、発売に向けて準備が進められたのですね。

堀西さん

はい。発売初日は、大きなキャンプイベントへの出店でした。

5年の歳月をかけて妥協せず作ったからこそ、発売初日は自信を持ってお客さまに勧められましたし、「美味しい」の言葉を聞けたときは、感慨深いものがありました

人前に出るのも、話すのも苦手。だけど「好き」が原動力に

ーー(編集部)「アウトドアスパイスほりにし」プロジェクトをリーダーとして推進されていたと思うのですが、堀西さんは前に出たり、チームを率いたりするのは得意なほうなんですか?

堀西さん

いや、もう、これがぜんっぜんで…正直、こうして取材を受けたり、人前で話すのも苦手なんですよ。

もう勘弁してください、と今も密かに思っています。すみません(笑)。

ーー(編集部)意外です! 商品名も「アウトドアスパイスほりにし」なので、注目を集めるのが嫌じゃない方なのかなと勝手に想像していました。

堀西さん

いやいや!「『ほりにし』でどや!」と言われたときも、最初は「え~!何言うてるんですか!?」でしたし、思った以上に自分の名前が広がっていくのはめちゃめちゃ恥ずかしかった

ーー(編集部)恥ずかしさがあったんですね。

堀西さん

そりゃあ、ありますよ! むちゃくちゃありました!

堀西さん

店舗にいるときも、お客さまが「あ、ほりにしや」「これが、ほりにしか」と話しているのを聞くと、「自分のこと呼んでるんかな」と気が気じゃなかったです。

だけどお客さまは僕の名前を知らないから、「あ、スパイスのことか…」と思い直して。

ーー(編集部)今、その恥ずかしさは、どのように変化していますか?

堀西さん

慣れ、ですかね。それから、「『アウトドアスパイスほりにし』と、俺は別もの」と分けて考えるようにしています。「あ、ほりにしや」の声を耳にしたときも、「あれはスパイスのこと」と自分に言い聞かせるというか(笑)。

ーー(編集部)お話をお伺いしていて、経験したことのない食品開発に取り組めたり、苦手ながらもリーダーをされたりと、一歩踏み出せるのはどうしてなんですか?

堀西さん

うーん、そうですね。やっぱり「好きなこと」だからです。好きだから、苦手なことも未経験であることも乗り越えていけるし、好きだから楽しめる。

そうやって自分が楽しんでいると、その気持ちが周りにも伝播して、みんなも楽しめる

好きじゃないことをして、「なんでこんな仕事してんねやろ」と思っている人と一緒にはたらくのって、一緒にはたらく側も良い気持ちにはならないですよね。

ーー(編集部)でも、「好き」を仕事にすることに迷う人も多いですよね。

堀西さん

確かに、正直僕も仕事にすることで境界線がわからなくなることもあります

プライベートで遊びに行ったキャンプ場でたまたまお客さまに会うと、嬉しい反面、仕事モードにはなります。

でも僕は、それも楽しめるというか。公私が「好き」で繋がってるから、良い意味で影響し合えるんですよね。

ーー(編集部)公私が「好き」で繋がってる、素敵です。堀西さんのように仕事にしても良いと思える「好き」が私に見つけられるかな…。

堀西さん

自分に合うか合わないか、好きになれるかなれないかは置いといて、まずはチャレンジしてみたらいいと思いますね。

ーー(編集部)合う・合わない、好きになる・ならないも、置いといていいんですか?

堀西さん

そりゃあ、やってみないとわからないから。選り好みや食わず嫌いはせずに、まずは挑戦してみる

その先で合うなら好きになればいいし、合わないならまた別のことをしてみたらいいんじゃないかな。

インドアも網羅。「アウトドアスパイスほりにし」の勢いは止まらない!

ーー(編集部)「アウトドアスパイスほりにし」発売前後で、仕事観に変化はありましたか?

堀西さん

以前に増して、お客さまに喜んでいただきたいと思うようになりました。始まりは、僕の超個人的な「お酒を楽しみたい」という気持ちから開発がスタートしましたが、多くのお客さまに「美味しい」と笑顔になっていただくためにはどうしたらいいだろうと考えています。

加えて、より広範囲のお客さまのことも考えられるようになって。というのも、最初はアウトドアをする人がメインターゲットでしたが、途中でご家庭の料理時間の時短にも貢献できていると知り、「インドアでも使えたんか!」という発見があったんです。

アウトドア・インドア関係なく、「アウトドアスパイスほりにし」で日本の食生活が豊かになったらいいなと思っています。

ーー(編集部)そう思うと、視野の広がり方がすごいですね。

堀西さん

ほんとですね。何気ない一言から食品開発をさせてもらえて、自分では想像しなかった景色を見れたのは、会社をあげてのプロジェクトとして進んできたからこそ。

もし僕一人だったら、ここまで辿り着けなかったかもしれないなと思います。

株式会社ミモナのみなさん。写真右が堀西さん

ーー(編集部)確かに企業だと、個人では成しえない規模の挑戦の機会もありますよね。企業ってすごい。

堀西さん

「アウトドアスパイスほりにし」も社員の8割が「美味しい」と言ってくれたから、自信を持っていいものができた! と思えましたもんね。

ーー(編集部)あらためて、堀西さんが“はたらくWell-being”になるために必要なことはなんだと思いますか?

堀西さん

やっぱり、好きなことをして自分自身が楽しんでいることですね。そして、その楽しさを会社の仲間やお客さま、取引先、さらには家族、友人も含めて周りの人に共感してもらうこと。

自分一人だけが楽しくて周りはそうじゃなかったら、それは“はたらくWell-being”じゃないですよね。

ーー(編集部)でも、仕事をしていると楽しめることばかりじゃないですよね。

堀西さん

それはそうですよ! 楽しめないことがあって当たり前だし、僕も含めて気持ちが下がることって絶対にあると思います。

だけど、そんなときこそ「笑顔でいる」ことを意識していますね。自分の失敗や、やってしまったことは起こった瞬間から過去になっているじゃないですか。

だから、心のなかでは猛烈に反省しつつも、笑顔でいるとだんだん気持ちも切り替わっていくと思うんですよね。

ーー(編集部)戦略的笑顔、ですね(笑)。

堀西さん

そんな感じです。形から入ることで、自分の気持ちも明るくなっていくんじゃないかな。

ーー(編集部)「好き」が、堀西さんの強い原動力になっているんですね。最後に、今後の「アウトドアスパイスほりにし」の展望を教えてください。

堀西さん

「アウトドアスパイスほりにし」はおかげさまでご家庭にも広がってきているので、この手軽さをより多くの方に知ってもらいたいと思っています。

アウトドア・インドアに限らず、塩コショウや醤油と同じくらい当たり前の調味料になれたらいいですよね。

海外進出も計画しているので、日本発のアウトドアスパイスを国外の方にも届けられたらと思っています。

ーー(編集部)海外まで!? ついに、国境を超えていくんですね。これからが楽しみです!

<取材・文=田邉なつほ>

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