企業インタビュー
大阪・関西万博を“拡張”すれば、未来が変わる。奈良県の調査研究事業が目指す「共創」活動とは
「拡張万博」で、経済波及効果はMAX6,000億円増!
新R25編集部
2025年大阪・関西万博(2025年4月13日開幕)が、いよいよ近づいてきました。
会場となる大阪では着々と準備が進められているところですが…
万博は開催地だけでなく、周辺地域にとっても経済効果を得る大きなチャンス。
奈良県の中小企業診断士事務所・Office Walk on代表の梶 純子さんは、万博をきっかけに奈良の未来を創造する調査研究事業を始動させたそうです。
万博の高次元での活用法や、それによって未来がどう変わるのかをお聞きしました。
〈聞き手=鳥山可南子(新R25編集部)〉
奈良の未来を創る、調査研究事業を開始
梶さん
Office Walk onは、奈良県にある中小企業診断士事務所です。
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家なのですが…
日々、県内企業の未来のためにさまざまな成長戦略を策定するなかで、自分たちの手でより良い未来を創造しつつ、企業の発展に貢献できないかと考えるようになりました。
鳥山
未来に対して、よりアグレッシブに。
梶さん
そのとおりです。そこで、一般社団法人奈良県中小企業診断士会に所属する中小企業診断士7名で、調査研究事業を開始したんです。
一般社団法人奈良県中小企業診断士会に所属する有志で構成された2024年度調査研究事業メンバーは、梶さんのほか、リーダーの上野浩二さん、林 大祐さん、上村拓也さん、柴田竜二さん、増田紘之さん、北島誠士さんの7名
鳥山
調査研究事業とは、具体的に何をするんですか?
梶さん
まずは2025年、大阪市の夢洲地区で開催される「大阪・関西万博」の関連団体などにお伺いして、“対話”をするところから始めています。
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。コンセプトは「未来社会の実験場」です。
私たちも「こうあるべきだ」という正義ではなく、対話・実践に重きを置いて、各企業・団体などの資質や経験、人脈を知ろう、と。
活動のキーワードは「共創」です。
EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイトより
梶さん
万博開催時には、奈良県にも多くの経済効果がもたらされるでしょう。
ただ、それを一時的に享受するだけではなく、その後も万博というビッグイベントがもたらしたパワーや恩恵をフルに活用できるよう、奈良の未来に向けて活動を推進していく必要があります。
鳥山
万博が、未来に向けた大きな転機になる可能性を秘めていると。
梶さん
まさにそうだと思います。
私たちは、万博は184日間だけのものではないと捉え、「万博を活用することにより、奈良県の地域課題解決や経済発展等の取り組みをどう加速化させていくか」について、調査研究を進めます。
奈良はかつてシルクロードの終着地でした。だからこそ、奈良から“未来への道”をつくりたい。
万博のテーマにも通じる“いのちをつなげる、分断のない未来”をつくるにはどうしたらいいのか。中小企業診断士の視点で考え、事業者と共創したいと考えています。
経済効果を最大限に高める「拡張万博」とは
梶さん
「拡張万博」っていう言葉をご存知ですか?
鳥山
拡張万博…どういう意味ですか?
梶さん
「拡張万博」とは、近畿経済産業局が提唱している、万博における経済効果を最大限に高める取り組みのことを指します。
万博の空間・時間・テーマという3つの軸を“拡張”し、多種多様な経済活動を展開するという考え方です。
2024年度調査研究事業リーダー・上野さん
鳥山
軸を“拡張”とは?
梶さん
まず、空間的拡張は、万博と連携した活動を関西一円のみならず全国に拡張すること。関西全体をパビリオンに見立て、かつ全国各地で万博と関連する活動を展開します。
続いて時間的拡張とは、万博会期中だけではなく、会期前から万博終了後も続くような活動を推進すること。
そしてテーマの拡張とは、「いのち輝く未来社会」や「SDGs・Society5.0」といった万博のテーマやコンセプトを、いろいろな活動を通して表現することになります。
「拡張万博」は万博の概念をこの3軸で拡張し、万博開催を活用しつくす戦略*です。
参照:経済産業省 近畿経済産業局 (https://www.kansai.meti.go.jp/1-2_2025next/index.html)
鳥山
万博の効果をずっと活用し続ける戦略を、今から考えておくんですね。
梶さん
万博開催は、関西経済、ひいては日本経済の反転に向けての大チャンスです。
このチャンスを逃さず、新たな概念である「拡張万博」を意識し取り入れることで、より大きな成果が生まれるはずです。
最大で6,000億円も!「拡張万博」の経済波及効果
鳥山
拡張万博を取り入れると、どのぐらいの経済効果が見込まれるのでしょうか。
梶さん
一般財団法人アジア太平洋研究所の試算*では、万博の経済波及効果は2兆7,457億円とされています。
ただ、「拡張万博」を高次元で取り組むことができれば、その効果は3兆3,667億円にもなるとしています。
*一般財団法人アジア太平洋研究所「大阪・関西万博の経済波及効果 -最新データを踏まえた試算と拡張万博の経済効果-」(https://www.apir.or.jp/research/post15592/)
鳥山
6,000億円も変わってくる!
たとえばどのような「拡張」の可能性が考えられますか?
梶さん
会場となる夢洲以外のイベントが実現すれば、国内客はもちろん、訪日外国人たちの宿泊日数が増えますよね。さらに、国内の日帰り客も増えることが想定されます。
鳥山
周辺イベントをやるかやらないかで、人の流れがだいぶ変わりますもんね。
近畿経済産業局 総務企画部 2025NEXT関西企画室 室長補佐の植田将斗さん(写真右)と、同じく近畿経済産業局 総務企画部の沼本和輝さん(写真左)
梶さん
近畿経済産業局の担当者の方にお話を伺ったところ、「拡張万博」では、万博に関係なく活動している方も含めて考えているとのこと。
鳥山
関係なくても?
梶さん
たとえば万博のテーマに“SDGs”がありますが、これまで行ってきたものづくりに「持続性」をかけあわせたビジネスにチャレンジするとか。
あるいは公式キャラクターの愛称「ミャクミャク」のように、脈々と受け継がれてきたものをさらに受け継ごうとする活動とか。
鳥山
なるほど。解釈を広げるだけで、めっちゃビジネスが広がりますね!
梶さん
そうなんです。
経済産業省では、「360°EXPO拡張マップ~万博と共に注目すべき関西の活動群~」として、これまでの取り組みをまとめて公表しています。
三木金物鉋鰹節削り器(兵庫県三木市)と指宿鰹節(鹿児島県指宿市)のコラボ企画 「最高の鰹節をあなたの手で」や、彦根商工会議所による「世界遺産登録でつながる近隣市町との連携による新たなツアー」など…
新たな共創空間や活動ビジネスが盛りだくさんに紹介されています。
鳥山
自治体の共創は面白いですね。
万博をきっかけに伝統・観光など、新たな魅力を発見できそう…!
奈良県の魅力を広める活動に貢献したい
梶さん
「拡張万博」という概念を踏まえると、旅行・宿泊をともなうイベントをはじめ、各自治体での盛り上げも重要になってきます。
私たちも奈良県の企業が魅力的なコンテンツ開発をする一助となり、経済波及効果を高められるように貢献したいと考えています。
万博の“その後”を見越して、“今”共創に取り組むことが、まちの未来をつくる助力になるという「拡張万博」の考え方。
さまざまな視点から生まれるユニークな取り組みに期待大です!
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