企業インタビュー
「いいじゃん!やってみようよ」で事業展開。「Think globally, act locally」を実践するクラビズの挑戦
合言葉は「最近、失敗した?」
新R25編集部
いま、都会よりも地方に熱視線を注ぐ人が増えているとよく聞きます。
株式会社クラビズの代表取締役・秋葉優一さんも、そのひとり。
大学で上京し、人材・IT業界のスタートアップなどでバリバリ働いていたのに、30歳で地元・岡山県倉敷市にUターンして、さまざまな事業を手がけているそうで…
地元の課題を解決し、未来につながるビジネスなら「なんでもやってみる」という秋葉さんが、地方でチャレンジする理由とは?
〈聞き手=鳥山可南子(新R25編集部)〉
面白そうなことは「やってみよう!」でやっちゃう会社
秋葉さん
株式会社クラビズは「手の届く場所から未来を変える」をパーパスとし、世の中にワクワクを提供する企画会社です。
たった3人で「倉敷ビジネスセンター」として始まった会社は、地域のブランディング支援やものづくり事業などを手がけて、現在60人にまで成長しました。
鳥山
具体的には、どういった事業を?
秋葉さん
当社は「地方から世界に」をコンセプトに、WEB事業・クリエイティブ事業・ポスティング事業・自社ブランドEC事業・飲食事業・アート事業などを展開しています。
自社ブランドEC事業で展開しているブランドの数も少しずつ増えてきました。冷えとり靴下や天然素材の肌着を展開する「くらしきぬ」や、ドライフラワーの専門店「土と風の植物園」、バスグッズブランド「tatoubi」などがあります。
鳥山
さらっと言っていますが…幅広いですね…
秋葉さん
面白そうなことは「やってみよう!」でやっちゃう会社で。
正直、一言で何の会社かを言い表すのが難しいほど、事業が多岐に渡るんです(笑)。
鳥山
たった3人で始まった会社とのことですが、創業はいつなんですか?
秋葉さん
1972年です。
もともとは私の父がつくった地元密着型の広告会社で、2007年に私がUターンして継ぎました。
鳥山
元々、将来はUターンする予定だったんですか?
秋葉さん
いえ、明確に考えていたわけではなくて…
私は大学進学で上京して、そのまま東京で社会人として働いていたのですが、私が30歳のときに父が体調を崩したのを機に会社を畳もうとしていたんです。
その話を聞いたとき、自分がしっかり育ててもらえたのは、その会社があったおかげだと思って。そこで現在の妻と倉敷に戻り、会社を継ぎました。
継いだとはいっても、当初は毎日を暮らすのが精一杯。情報誌を発行したり、WEBサイト制作をしたりするなか、妻のアイデアがきっかけで岡山発の肌着ブランド「くらしきぬ」が生まれました。
「くらしきぬ」HP
秋葉さん
自分がやりたいことを叶えて、買ってくれる人も喜んでくれて…と、みんなが幸せになれる事業ができたのは新鮮な体験で。
鳥山
ゼロから人の役に立つモノを作って、手応えがあったと。
秋葉さん
はい。そのとき、マーケットなんて気にせずに、自分がほしい、面白いと思ったことを自分たちの手で売れるような会社になりたいと思ったんです。
靴下、バスグッズ、カフェ…幅広すぎる事業
鳥山
これまでに手掛けた、代表的な事業を教えてください。
秋葉さん
自社ブランドとしては、靴下や肌着の「くらしきぬ」や、バスグッズ「tatoubi」などがあります。
秋葉さん
「くらしきぬ」は、出産後の妻が“冷えとり”を始めたものの、理想の靴下がなくて。「ないなら、作ろう」と始めた事業なんです。
シルクやウールなど天然素材にこだわった「冷えとり靴下」や、腹巻きとパンツが一体となった「はらぱん」など、肌着の企画・販売・EC運営を行っています。
冷えとりとは…
・全身の血流の巡りを良くするために、春夏秋冬を通して、上半身と下半身の温度差をなるべく小さくする健康習慣のこと。
・人間の体温は上半身よりも下半身の方が5℃ほど低いため、靴下や半身浴などで下半身を温かく保ち、上半身を涼しくする「頭寒足熱」を心がけることが大切と言われている。
・「冷えとり靴下」は、人間の肌に最も近い繊維だというシルクと、天然繊維の靴下を交互に重ねて履く靴下のこと。
「くらしきぬ」の冷えとり靴下とはらぱん
秋葉さん
製品はすべて日本製。倉敷美観地区内に直営店を構え、その他全国の卸先で販売しています。
著名な女優さんやモデルさんにもたくさんご愛用いただいていて、ありがたい限りです。
倉敷の美観地区にある「くらしきぬ倉敷本店」
鳥山
ブランド立ち上げは、地元経済の活性化にもつながりますよね。
秋葉さん
「tatoubi」は、瀬戸内に息づくもので作られたバスグッズブランド。無香料・無着色・防腐剤無添加の「瀬戸内エプソムソルト」をはじめ、塩石鹸やヘチマスポンジなどを販売しています。
地元から世界に挑めるブランドを作れるのは、私たちの誇りです。
「tatoubi」の瀬戸内エプソムソルト
秋葉さん
ほかにもいろいろありますよ。
倉敷駅前に構える「Cafe&Bar KAG」では、“食とアートで世界を刺激する”をテーマに、オリジナルメニューの開発から、音楽イベントやワークショップ、 アーティスト作品の展示など、さまざまなイベントを企画・開催しています。
世界中の旬な音楽・アートを紹介し、地域のハブとして、さまざまな価値観を持つ人が行き交う場所となっています。
Cafe&Bar KAG
秋葉さん
グループ会社である街づくり会社KOMAでは、各分野の多様な方々をお招きし、市民に向けた公開講座「街場の学校」を開講。学びの場を提供しています。
また、2023年8月にオープンしたばかりの「立ち呑み ura」は、「スキーマ建築計画」の長坂常さんが建築を手がけ、素材を活かした自由な空間に。訪れた人がオープンな心で混じりあうことを目指しています。
鳥山
学びやコミュニケーション活性の場を、次々と…
秋葉さん
地元の企業と一緒に立ち上げた企画もあります。
「岡山もったいない祭り」は、地元企業と協力してB品や端材など本来捨てられてしまうはずの“もったいないもの”を販売するイベント。
友人の経営者2人とともに企画をし、他社の方々とも協力しながら、社内の社会貢献委員会のメンバーが主体となって実施してくれました。
売上の約10%を、支援を必要とする団体に寄付しています。
大盛況だった2023年の「もったいない祭り」
鳥山
常に“地元のためになるかどうか”がベースにあることがうかがえます。
秋葉さん
じつは社員の4分の1は移住者なんですよ。
私のようにUターン・Iターンの社員もたくさんいますが、出身地問わず、倉敷という土地に惹かれた人が集まっています。
鳥山
4分の1が県外というのは興味深い!
秋葉さん
当社は、人材紹介事業として人と地方のマッチングプラットフォームも手掛けているんです。
当社に来てくれた社員たちのように、まだ出会っていない人と企業が交わることで、お互いに触発され、可能性が開花することもありますから。
次世代へ「どうつなげていくか」を考える
秋葉さん
人間の一生って、しょせん80歳とか、長くても100歳ぐらいなわけですよ。
そんなの、地球規模ではものすごく小さいこと。100年で地球が良くなることはまずないし、仮に超優秀な人がいたとしても、ひとりでは何もできません。
だから私は、“地球を救おう”のように大きく構えるのではなく、“次の世代にどうつなげていくか”ということを考えています。
2018年10月にオープンしたドライフラワーやアレンジメントの販売店舗「土と風の植物園」
秋葉さん
東京から地元に戻ってきて、さまざまなことに対しての“解像度”が高くなりました。
たとえば、いままで見えなかった子どもの貧困問題や、差別の問題、障害者が置き去りにされていることの問題など…身近にたくさんあるんですよね。
鳥山
東京にいたときは、見えづらかったものが。
秋葉さん
はい。「世界の貧困」や「世界の差別」を変えることはできないけれど、目の前の問題には手を伸ばすことができます。
「土と風の植物園」では、ドライフラワーの定期便を障がい者就労継続支援事業所で働く方々にご協力いただきながら、一緒にお届けしています。
秋葉さん
クラビズという会社が成長し、利益を多く出すことによって、地域の社会課題の解決が進んでいく…
そんなことができれば、地域のなかで同じように考えてくれる経営者が増えていき、どんどん地域の社会課題が解決されていくのではないかと思うんです。
世界でも注目される瀬戸内地方
秋葉さん
クラビズのカルチャーは、CLAP(Creative、Love、Action、Professional)。
果敢な挑戦を称賛する文化が醸成されているため、行動を起こした結果の「失敗」をむやみに責めません。「最近、失敗してる?」という問いは、むしろポジティブな意味合いを持っています。
鳥山
まずはチャレンジすることが大事、ということですね。
秋葉さん
そのとおりです。
地方にはまだまだ可能性が秘められています。そして面白いものがたくさん眠っています。
秋葉さん
岡山も含めた瀬戸内地域は、現在世界でも注目されているスポットです。
コロナ前の2019年には、「The New York Times」が発表した「52Places to Go in 2019」に“Setouchi Islands”が日本で唯一ランクインし、第7位に選ばれました。
また、3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭は国内外から注目を集めていますし、岡山は関西、四国、九州からのアクセスも非常に良いんです。
私たちは「倉敷」という地方都市から、日本や世界に面白いサービスやプロダクトを発信していくことで、この素晴らしい地域を盛り上げていきたいです。
地方だからこそ見えるものがあり、地方だからこそ戦える環境があるのかも。
「いいじゃん!それやってみようよ!」が、クラビズの合言葉。ユニークな挑戦を続けるクラビズの事業展開に、目が離せません。
〈執筆=吉河未布/編集=鳥山可南子〉
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