企業インタビュー
きっかけは「83歳のアーリーアダプター」。高齢者の健康をloTでサポートする“今が楽しくなる”サービス
誰もが“生きがい”を持てる社会に
新R25編集部
超高齢化社会の課題に向き合うべく、楽しく元気に暮らす高齢者をサポートする“高齢者向けヘルスケアサービス”が広島県呉市で展開されています。
その名も「STARTWELL(スタートウェル)」。なんでも、一見高齢者とは縁の遠そうな「IoT」を駆使しているそうなんですが…
運営元のNurse and Craft株式会社のビジネス開発事業部長・吉田有宏さんに、その全貌と期待できるメリットを聞いてみました。
〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉
「自宅で暮らしつづけられる」を当たり前に
吉田さん
Nurse and Craft株式会社は、訪問看護サービスや高齢者のヘルスケアサービスをおこなう会社です。
特に「STARTWELL(スタートウェル)」というサービスに力を入れています。
IoTを最大限に活用していて…利用者の方に、これを付けてもらうんです。
石川
スマートウォッチだ!ご高齢の方が着けているんですね。
吉田さん
心拍数の変化や血中酸素濃度などの身体データを計測できるスマートウォッチは、若い方はもちろん、高齢者の健康維持にもぴったりだと思うんです。
これらの最新テクノロジーの活用に加えて、看護師がご自宅に定期的に伺うことで、楽しいヘルスケア体験をご提供しています。
日本財団の調査*によると、人生の最期を迎えたい場所として58.8%の方が「住み慣れた自宅」と答えたそうなんです。
その願いを叶え、自宅で暮らしつづけられる方をひとりでも増やすために、「STARTWELL」が始まりました。
*出典:人生の最期の迎え方に関する全国調査(日本財団)
吉田さん
具体的には、以下の3つのサービスが受けられます。
①看護師による定期訪問
吉田さん
まず、月に一度のペースで30分、看護師がご自宅を訪問し、健康維持のアドバイスをおこないます。
石川
よくある訪問サービスとは違うんでしょうか?
吉田さん
訪問サービスのように「高齢者のお世話をする」というよりは、「伴走する」ようなイメージです。
また、医療とも異なるので、なるべく多くの話をすることを心がけています。それにより、ささいなことでも相談しやすい関係を構築しています。
ふたりとも楽しそう
②身体データの計測
吉田さん
2つめは身体データの計測。スマートウォッチはこのために着けていただきます。
心拍数の変化や血中酸素濃度、毎日の歩数や睡眠状況などを測定し、結果にあわせて、個人に合った健康維持の方法をお伝えすることができるんです。
石川
日々のデータが記録できるのは便利ですね!
吉田さん
ちなみに機種は「Fitbit」の「Chargeシリーズ」を推奨しているのですが…
ご自身で購入していただいてもいいですし、当社が代理購入をすることも可能です。
レンタルもありますから、「買うのはちょっと…」という方も無理なくご利用いただけますよ。
③体内栄養素の計測
吉田さん
3つめは、簡易尿検査キットを使用した体内の栄養状態の計測です。
これは試験紙に尿をかけ、スマートフォンのアプリで撮影するだけ。およそ2分で、11項目の体内栄養素がわかるんです。
検査も簡単。たったの3ステップで計測できます。
吉田さん
これで不足している栄養素を調べ、その方に合う、バランスのとれた食生活をご提案しています。
石川
今は尿検査もスマホでできる時代なんですね…!
吉田さん
日常的に栄養状態を把握するためには、病院で行う血液検査が一般的だったんですが…継続して病院に通うのは根気がいりますよね。
でもこれなら、自宅にいながら簡単に栄養状態が確認できます。
ちなみにこの検査キットは、株式会社ユーリアという、東京大学との共同研究で立ち上がったヘルスケア企業が開発したものを使用しています。
尿中の成分に応答するバイオマーカーや、独自のカメラ解析技術「ユーリアAI」を活用して、スマホでの検査を実現させたそうなんです。
石川
AIまで駆使しているんですね!最先端だ…
ちなみに利用料はどのくらいなんですか?
吉田さん
プランが3つあり、ご希望に合わせてお選びいただけます。
1万円以下のエントリープランから少し高価なプレミアムプランまで、誰でもご利用いただける料金に設定しています。
選べる3つのプラン
①エントリープラン
月に一度の看護師の訪問と、スマートウォッチで計測したデータを基にした健康維持の方法をお伝えするコース
②スタンダードプラン
月に一度の看護師の訪問に加えて、スマートウォッチと簡易尿検査キットで健康維持に大切な要素を網羅できるコース
③プレミアムプラン
スタンダードプランに看護師の訪問をもう一日追加した、より安心感を求めた特別なコース
吉田さん
高齢者の方が、日々健康的な習慣を実践しようとしても、ひとりで維持して頑張るのは大変です。だからこそ、「STARTWELL」がお役に立てればと。
立ち上げのきっかけは「83歳のアーリーアダプター」
石川
そもそも、このサービスを始めたきっかけは何だったんでしょう?
吉田さん
私が、ある83歳の女性に出会ったことがきっかけでした。
当社は2020年1月から、広島県呉市にある大崎下島を中心に訪問介護事業をおこなっていたのですが…このエリアは人口約1,700人に対し、高齢者の割合は約65%。
石川
半数以上が高齢者の方なんですね。
吉田さん
明らかに医療や介護の資源が足りていない状況です。でもそんな状況だからか、健康意識の高い高齢者が多くて。
ある日、83歳の女性が「自分の健康を管理するために、スマートウォッチが欲しい」と事務所に来て私に言ったんです。
石川
それは意外すぎる…!
吉田さん
「こんなところにアーリーアダプターがいたのか!」と驚いたのが始まりでした。
私たちは「ここなら新しい挑戦ができるのではないか」と思ったんです。
石川
でも、高齢者の方がスマートウォッチやスマホを使いこなせるんでしょうか?
吉田さん
私たちが丁寧にサポートしているので、その点は問題ありません。
ガジェットの使い方をはじめ、健康情報や病気についても学べるよう、健康教室も毎月開催しているんですよ。
吉田さん
それに、スマホやインターネット、新しいアプリに興味がある方は結構多いんです。
そんな好奇心を奪わないことも、生きがいのある暮らしにつながると感じています。
石川
素敵な考えだ…!
言われてみると「お年寄りはスマホが苦手」というのも若い世代が勝手に決めてることなのかもしれないですよね。
吉田さん
私たちは、ただ単に長生きすればいいと考えているわけではありません。
今が一番楽しいって思えることこそが、本当の幸せだと思うんです。
医療で病気は治せても、健康にすることはできない。
持病があってもなくても、一人暮らしでもそうでなくても、毎日安心して、誰もが生きがいをもって暮らしていける世界にできればと思っています。
石川
今後、エリアの拡大などは考えているんでしょうか?
吉田さん
ちょうど今、他のエリアでの運用パートナーを募集しているところなんです。
現在は広島県呉市だけで展開していますが、住民の健康寿命を延ばしたいと考えている自治体や企業との話が進んでいたりもします。
ぜひ私たちと一緒に先端のテクノロジーを活用し、日本を元気にしていきましょう!
高齢者とIoT。一見、相反するように思われますが、超高齢化社会だからこそテクノロジーが必要不可欠になっていくのかも。
まずは資料請求も可能とのこと。サービスに興味を持った方や、導入を検討したい自治体や介護事業者の方は、ぜひお問い合わせを…!
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