企業インタビュー
多様化社会の「共通認識」に。情報の関係性をとらえるインフォグラフィックがWell-beingな理由
見えにくかった“情報の関係性”を、誰もが、わかりやすく。
新R25編集部
はたらくことを通して感じる幸せや満足感、“はたらくWell-being”。 誰もがこれを実感することができれば、個人も会社も、もっと多様で豊かになれるはず。
パーソルグループは昨年、一人ひとりの“はたらくWell-being”について向き合い、ともに考え、行動をするオンラインコミュニティ「はたらくWell-being Lab.」を開設しました。
「はたらくWell-being Lab.」には、年齢や居住地、セクシャリティはもちろん、はたらき方や職種も多様なメンバーが集まっています。
「はたらく幸せ」を、さまざまな角度から考えるために。
「はたらくWell-being Lab.」では、ゲストをお迎えして“はたらくWell-being”を実現するためのトークイベントを開催しています。
こちらの記事では、インフォグラフィックにおける日本の第一人者として活躍されるインフォグラフィック・デザイナー、櫻田潤さんをお迎えしたトークイベントの様子をお届けします!
文字や言葉だけでなく、ビジュアルを用いて表現するインフォグラフィック。たとえば、トイレのマークや交通標識で目にするピクトグラムは、2020年東京オリンピックの開会式でも話題になりました。また、資料等で使用されるグラフなどのチャートや相関図。ほかにも地図や電車の路線図など、インフォグラフィックはすでに日常のさまざまな場面に活用されています。
そんなインフォグラフィックは、今やビジネスパーソンにとって必要不可欠なツール!?「はたらくWell-being Lab.」メンバーで、デザイナーの小野寺美穂さんがインフォグラフィックに迫ります!
(聞き手:小野寺美穂)
櫻田 潤(さくらだ・じゅん)。2010年に、仕事のかたわら、趣味プロジェクトとして、ウェブサイト「ビジュアルシンキング」を立ち上げ、インフォグラフィックに関する情報発信と自主制作を開始。2014年、NewsPicks編集部の立ち上げに参画。インフォグラフィックを用いた記事を多数、制作。2022年より、子ども新聞「NewsPicks for Kids」アートディレクター。個人の活動も継続。「ビジュアルシンキング」をインフォグラフィック専門のコンテンツレーベルと位置付け、日々、オリジナルコンテンツとコラボレーションコンテンツの制作に励む。著書に『インフォグラフィック制作ガイド』 『たのしいインフォグラフィック入門』(ともにビー・エヌ・エヌ)ほか
趣味だったプロジェクトが仕事を生み、本の出版まで!
小野寺さん
先日、『インフォグラフィック制作ガイド』を出されたばかりの櫻田さんにお話を伺っていきます!
櫻田さん
よろしくお願いします…!(小声)
小野寺さん
櫻田さんは、いまや日本のインフォグラフィックの第一人者ですよね。
ところで…そもそもインフォグラフィックってどういうものですか?
櫻田さん
実際に見てもらうのが早いですね。
これは、僕が以前制作した「関ヶ原の戦い兵力比較」のインフォグラフィックです。西軍・東軍の兵力を、ツリーマップで比べました。
小野寺さん
わあ…! 兵力や、差ができたきっかけが一目で分かりますね。最初は意外と五分五分に近かったんだ…!
櫻田さん
そうなんです、合戦が始まった頃は兵力差はあまりなくて。
そこから小早川の裏切りがあったり、戦わなかった武将がいたりして、東軍が有利になりました。
こういったビジュアルを使って情報の関係を表したものを、僕は「インフォグラフィック」と呼んでいます。
小野寺さん
「関ヶ原の戦い兵力比較」は、お仕事として制作されたものですか?
櫻田さん
いや、仕事ではなく趣味や興味の延長で制作したものです(笑)。
仕事のかたわら、趣味プロジェクトとしてインフォグラフィックを制作・発信しつづけていました。
自主制作や発信を続けるうちに、お仕事の依頼をいただくようになり、さらには出版のお声がけをいただいて…
約10年前、2013年に出版した『たのしいインフォグラフィック入門』は、重版12刷のロングセラー作品に!
小野寺さん
趣味が仕事に…! いいな!
櫻田さん
『たのしいインフォグラフィック入門』の出版から10年経って、「インフォグラフィックって何だろう」と改めて考えていると、考え方も変化していて。
アップデートしたものを『インフォグラフィック制作ガイド』として出版しました。
小野寺さん
集大成としての『インフォグラフィック制作ガイド』なんですね。
櫻田さんはいま、経済メディア『NewsPicks』でインフォグラフィックを使ったコンテンツを作られていますよね。どのような経緯だったんですか?
櫻田さん
いただいた依頼の中には『WIRED』や『HuffPost』などの誌面グラフィックや、日本版メディア資料の作成というものがあって。
それらを制作するうちに、だんだんとメディアの仕事に興味を持つようになっていきました。
小野寺さん
趣味だったインフォグラフィックの制作がさまざまな経験を経て、いまのお仕事につながっているんですね…!
インフォグラフィックの「インフォ」とは、単なる情報ではない
小野寺さん
私は、普段デザイナーとしてグラフィックデザインをしています。
グラフィックとインフォグラフィックの違いは、「インフォ(情報)」がつくかつかないかですが、実際はどのような違いがあるのですか?
櫻田さん
作り手が情報の関係を意識してデザインする点では、どちらも同じですね。大きな違いは、受け手が情報の関係を意識するか、しないかです。
たとえば、名刺であれば、名前と肩書きを近くに配置する。名前のほうが大事だから大きくする。メールアドレスや住所、電話番号などは連絡先として近くにまとめるといったことをしています。
それに対し、名刺を受け取った人はいちいち、この要素とこの要素はどういう関係かなどは気にしません。作り手が意識した内容を無意識で処理します。
櫻田さん提供資料
小野寺さん
そうですね。デザイナーは見る人が違和感を抱かないような情報の整理を心がけています。
櫻田さん
一方、「インフォグラフィック」は、受け手も情報の関係を意識するんです。
たとえば路線図。点と点が結ばれていている路線図を見たとき、「出発地から目的地への行き方」というように、視覚的に情報の関係やつながりを意識しませんか?
小野寺さん
たしかに! 慣れない場所でも路線図を見れば、ここで乗り換えをして、この線に乗って…、と目的地までの行き方を自分で考えます。
櫻田さん
インフォグラフィックの「インフォ」は、単なる情報ではなく「情報の関係」を表しているんです。
櫻田さん提供資料
小野寺さん
情報の関係! そうか、たとえば本の表紙デザインは受け手が情報の関係を考えることがないから「グラフィック」。
路線図は、目的地までの行き方を考えるから「インフォグラフィック」。
情報の関係ということを踏まえて考えてみると、区別がつきますね。
櫻田さん
情報の関係が見えにくい状態を、関係が分かる状態にする。情報の関係を捉え直すことで、見えにくかった物事の関係を分かるようにする。
それが、インフォグラフィックですね。
多様化する社会で大きくなる、インフォグラフィックの可能性
小野寺さん
インフォグラフィックはどんな場面で使えるかな、と考えてみると、日常の多くにある気がしています。
櫻田さん
そうですね。情報が複雑化しているからこそ、インフォグラフィックは今後とても役に立つと思っています。
説明書や交通案内などのビジュアルガイドや、サービス紹介、提案書など、生活や仕事のさまざまな場面で活用できます。
僕が主に制作している解説記事や教育としてのビジュアルコンテンツもそうですね。
ビジュアルシンキングサイトより
小野寺さん
インフォグラフィックを実際の生活や、仕事にどう生かせるか考えてみると、活用の幅は広がりそうですね。
具体的には、どんなところから始めるといいですか?
櫻田さん
たとえば仕事だと、顧客とのコミュニケーションがいいかもしれません。
オンラインコミュニケーションが増えるなかで、口頭だけで済ませてしまうことって多くないですか?
小野寺さん
たしかに、わざわざ資料を準備しなくてもと思ってしまって、つい喋りだけ済ませることがあるかも…
櫻田さん
よく話す人なら、口頭だけでも十分伝わり、理解してもらえるかもしれません。
でも、取引先の人や、初対面の人だとどうでしょう。インフォグラフィックのようなビジュアルがあると、何より話しやすいし、相手に理解してもらいやすくなると思います。
たしかに、櫻田さんのセミナーやイベントには、ビジュアルを用いた資料が必ずある!
櫻田さん
とくに、決裁や商談、取り組みの説明時には効果的です。口頭だけだと、その場では受け手が理解できていても、後から振り返ったり、社内で共有したりする時にスッと出てこないことも…
それでは意味がないですよね。
小野寺さん
打ち合わせのあと「そういえばあれってどういうことだっけ…?」となること、あります…!
櫻田さん
それに、さまざまな背景を持つ人たちがともに働き、生活していることを考えれば、インフォグラフィックを共通言語とまでいかないまでも、ひとつの共通認識と位置付けて、それを軸にコミュニケーションをとることができるかもしれません。
小野寺さん
たしかに。そもそもインフォグラフィックが使われていると、興味を引きますよね。
ちょっと遠く感じる政治や経済の話題でも、インフォグラフィックだと自然と見てしまう気がします…!
櫻田さん
情報の量もスピードも加速しているいまだからこそ、インフォグラフィックは、コミュニケーションにおいてひとつの解決策になるんじゃないかなと思っていて。
小野寺さん
考えれば考えるほど、インフォグラフィックってめちゃくちゃWell-beingな存在ですね。もう、単なる図解の域じゃない…!
櫻田さん
情報格差や非対称性があるなかで、理解や反応をしなければいけない受け手には、コミュニケーション上の負担が大きくなっているんです。
だからこそ、発信者に求められるのは、受け手のことを最大限に考えた行動だと思っています。
イベントの内容をまとめたビジュアルレポート
インフォグラフィックを使う人、作る人、すべての人が知りたいことが一冊に詰まった、櫻田さんの新刊『インフォグラフィック制作ガイド』。
これから「インフォグラフィック」を使おう、作ろうという人は、ぜひ読んでみてください!
櫻田さんの公式X(旧Twitter)や公式Instagramでは、インフォグラフィックの制作過程も発信されています。チェックしてみてくださいね。
「はたらくWell-being Lab.」は、これからも“はたらくWell-being”を考え、向き合う場をつくっていきます。
オンラインコミュニティ「はたらくWell-being Lab.」への参加申請はこちらから。どなたでも参加いただけます!
〈執筆・ビジュアルレポート制作=野元萌乃佳/写真提供=池田実加〉
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