企業インタビュー
SDGs研修に取り組む企業の社長が提言。「SDGs=慈善事業だと思っている企業は置いていかれます」
学びと実践で日本はもう一度、返り咲ける。
新R25編集部
世界の人々が抱える課題を解消して“持続可能な社会”を目指す「SDGs」。
「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「海の豊かさを守ろう」など、17の目標があります。
たしかに、そういう取り組みが大事なのはわかっているけど…
自分がやっている仕事にどう落とし込めばいいのか、いまいちわからなくないですか?
そこで、企業のSDGs推進に取り組むSoZo株式会社の代表取締役・あつみゆりかさんのもとへ。
私たちがいつまでもSDGsを自分ごと化できない原因のひとつには、日本企業がかかえる“根本的な問題”があるみたいです。(経営層にも届いてほしい…)
初っ端から耳の痛い話もありますが…みなさん、ついてきてください!
〈聞き手=山田三奈(企業トピ編集部)〉
“後回し”では淘汰される…SDGsがすべてのビジパに必要な理由
あつみさん
最初にはっきり言っておくと…
SDGsを「ただの慈善活動」と思って後回しにしているビジネスパーソンや企業は、今後生き残れません。
SDGsは、ITやDXと同じような“ビジネスにおけるルールチェンジ”だと思ったほうがいいです。
山田
そのくらい不可逆なものということですか?
あつみさん
はい。「世界の人々が抱える課題」が17もあるということは、それだけ世界中に“ニーズ”があり“市場”もあるということ。
すでに海外では、SDGsに配慮した製品やサービスを生み、いわゆる“ユニコーン企業”にまで成長した会社も続々と生まれています。
「ただの慈善活動」だと思って取り組まないでいると、経済成長が見込めず、機会損失することになります。
山田
でも…今は日本でも、SDGsに取り組む企業が増えてきてますよね?
あつみさん
じつは、やってるつもりで“表面的な取り組み”しかしていない企業も多いんです。
というのも、日本企業は「CSR」の方針が主流になっているので。
山田
CSR…?
あつみさん
従業員・消費者・投資者・環境への配慮・社会貢献などに対して、企業が社会的存在として果たすべき責任のことです。
日本企業の多くは「CSR部」を設けて、そこに所属するメンバーだけでCSRの課題解決に取り組んでいるんですよ。
一方で、世界では今、全社員が“社会課題の解決”をビジネスの主軸に置いて価値創造をする「SDGs経営」が主流になりつつあります。
あつみさん
SDGsに配慮した製品やサービスを生み出せるのはもちろんのこと、ビジネスにおけるメリットも多いのが特徴で…
SDGs経営のメリット
✔️ SDGsに課題を感じる企業とのビジネスチャンスにつながる
✔️ ステークホルダーとの関係性向上
✔️ 企業のブランディングに効果的
✔️ 優秀な人材の採用が有利になる
✔️ ESG投資が重視されるなか、資金調達が有利になる…など
あつみさん
日本企業も「SDGs経営」への切り替えが急がれますが、現状はスピード感も優先度も足りていません。
このままだと、ITやDXの敗戦国となっているように“SDGsの敗戦国”となって、日本は世界に置いていかれますよ。
「SDGsに疎い企業は、学生も離れてしまう」
あつみさん
それに昨今、企業は“人的資本経営*”といって新卒採用にお金をかけていますが…
SDGsに疎い企業からは、学生も離れてしまいます。
*人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方
山田
SDGsが新卒採用とどう関係するんですか?
あつみさん
弊社では昨年、大学生・大学院生の男女601名を対象に“Z世代の働き方に関するアンケート”を実施。
その結果をまとめた「Z世代 SDGsシューカツ解体白書」を発表したんですが…
あつみさん
Z世代は企業選びのときに、「社会的意義のあるサービス」や「企業の将来性」を判断基準にしている傾向にあることがわかりました。
そして、将来性のある企業=あらゆるSDGsのゴールに取り組んでいる企業と類推される結果が出たんです。
*母数を601としたときの割合/**母数を「サービスや商品の将来性」と回答した328としたときの割合
山田
そうなんですか…!
今の学生たちって、何でそんなにSDGsに取り組む企業に好感を持つのでしょうか?
あつみさん
それについても、面白いデータが出ています。
…山田さんは「自分らしく働く」っていうと、どんなイメージがありますか?
山田
自分の時間を大事にしながら、ワークライフバランスをとって働く…みたいな?
あつみさん
そんなイメージですよね。
でも、Z世代が思う「自分らしく働く」というのは、「教育で型を学んで」「ワークライフバランスを考慮し」「差別なく平等に」働けることを指すんです。
つまり、「自分だけでなく、他人が“自分らしくいられる環境”も守りたい」と思う傾向にあるんですよ。
Z世代…やさしい…
あつみさん
この考え方こそが、企業にSDGsの取り組みを求める理由につながっているんじゃないかなと思うんです。
アクティブな消費を担うZ世代を捉える意味でも、人材確保の意味でも、SDGsに取り組まない企業の“企業力”はダウンしていくんじゃないでしょうか。
解決策は、社内で“SDGsの共通言語”をつくること
山田
企業がSDGsの取り組みを加速させるためには、まず何から手をつければいいのでしょう…?
あつみさん
基礎知識を学ぶことから始めてください。
まずは経営層や売上を出している事業部に“SDGsネイティブな人”をつくって、社内に共通言語をつくる。
そこから全社員に浸透させていくのがスムーズだと思います。
私たちはそのお手伝いをするために、SDGsや脱炭素をビジネス文脈で考える動画研修「SDGsビジネスラーニング」を提供しているんです。
山田
これは…eラーニング的な教材ですか?
あつみさん
はい、動画で学べるセミナー研修です。
SDGsの基本を押さえる10分程度の動画40本に加えて、最新の企業事例を中心とした2〜3本の動画を毎月お届けします。
講義テーマの一例
貧困・飢餓・教育・ジェンダー・クリーンエネルギー・経済・産業・不平等・まちづくり・パートナーシップなど
あつみさん
動画だから社員のみなさんはスマホでどこからでも履修できますし、管理者は各社員の履修状況を管理画面で適宜確認できます。
山田
なるほど。
でもこういうのって、難しかったり退屈だったりして、みんな離脱しないでしょうか…?
あつみさん
身近な事例で自分ごと化できるから、わかりやすいし楽しいと思いますよ!
たとえば「フェアトレード」について学ぶパートでは、「トールサイズのコーヒー」を例に、コーヒー農家・輸出業者・カフェなどそれぞれの取り分を考えたりします。
山田
たしかにそれならイメージが湧きやすいかも。
あつみさん
こういった知識をエビデンスとして知っておくと、ビジネスシーンで解決方法を導く手助けにもなると思うんです。
実際、セールス担当者や工場開発の担当者からは、こんな声もあって…
利用した社員の声
✔️ ペーパーレス化、リモートワーク推進等のテーマでITツールを提案するケースでも、それ自体が「SDGs」貢献に繋がるので、営業トークのバリエーションになると感じました。(セールス)
✔️ 製造時に発生するロスを減らせるよう今後意識して業務にあたっていきたいと思った。(工場開発)
あつみさん
学びをさっそく実務に活かせている方も多いです。
さらに学んで終わりではなく、「会議ファシリテート用の動画」も配布しているので、具体的な戦略策定にもお役立ていただけます。
こうしたフォローサービスも好評で、サービス開始わずか2カ月で1.6万人に受講いただいているんです。
山田
1.6万人…すごいですね!
あつみさん
ただ…
プライム市場上場企業でさえ、SDGsに関して学ぶ意欲はまだまだ低いと感じます。
提案していても、「部長だけさくっと1時間だけ研修すればいい」とか「研修時間があったら営業電話をかけたい」といった理由から、後回しにされてしまうことがあって。
山田
そうなんですか…
あつみさん
「日本のビジネスパーソンは世界一学んでいない」という衝撃的な調査結果*もあるくらい、日本人は学ばなさすぎるんですよ!
そういう経営層や現場で手を動かす個人の“学びを後回しにするスタンス”って、製品やサービスにそのままあらわれると思うんです。
自分たちの仕事にプライドを持つ意味でも、まずは知識のインプットから始めてほしいですね。
*世界38カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)が2019年におこなった調査
あつみさんの熱いメッセージ、届きましたか…?
言われてみれば筆者も、お買い物をするときは企業の取り組みを調べてから商品やサービスを選ぶことが増えてきた気がします。
年々目が肥えていくユーザーに選ばれつづけるためには、学びを後回しにせずに商品やサービスづくりにつねに反映することが大事そうです。
SDGsを何からどう考えたらいいのか、どうビジネスに活かしていけばいいのかわからない企業は、「SDGsビジネスラーニング」を受けてみては?
社員全員がSDGsを自分ごと化して考えるきっかけになるはずです。
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