企業インタビュー
認知症で「エプロン1枚買えない」事態を防ぐために。親子を守り、社会課題の解決にもつながる“ある方法”
日本初の“家族信託専用アプリ”を提供
新R25編集部
「将来、親が認知症になったら…」
そんな未来のこと、考えたことはありますか?
親はまだ元気だし、ずっと先の話だし、介護用のお金は貯めてあるって言ってたし…いざとなってから考えれば間に合うでしょ!と楽観視してる人も多いのではないでしょうか?
しかし…トリニティ・テクノロジー株式会社の取締役COO兼CTO・大谷真史さんは、こんな警鐘を鳴らしています。
「認知症になると、いわゆる“資産凍結”状態になる可能性があるんです」。
つまり、資産を動かせなくなるから、入院費用や介護費用なども自由に引き出せないってことで…大問題じゃないですか!
どう解決したらいいのか、大谷さんに詳しく教えてもらいました。
〈聞き手=鳥山可南子(新R25編集部)〉
財産はあるのに使えない! 介護費用は子世代の持ち出しに…
鳥山
「将来は自宅を売却して、介護施設に入るつもり」という高齢者の方の話をよく聞くのですが…
大谷さん
保有している資産を介護費用などに当てる予定にしている方は多いですよね。
でも…認知症になり、意思能力が低下または喪失したと判断されると、自宅の売却や預貯金の引き出しなどに制限がかかってしまいます。
鳥山
悪徳業者に狙われたり、不当な契約を結ばされたりすることから守るためですよね?
大谷さん
そう、だから必要なことではあるんです。
ただ、財産を動かせなくなるため、事実上は“資産凍結”の状態に陥ります。
そうなると、今までは自由にできていたお金まわりの手続きができなくなってしまうんです。
具体的には…
• 預金口座からお金を引き出せなくなる
• 所有する不動産の売却や処分ができなくなる
• 生前贈与などの相続対策ができなくなる
大谷さん
そうなって困るのが、ご家族です。
たとえば、病院代や入院費、介護費、介護施設に入居する場合の費用などがすべてお子さんの持ち出しになる、なんてこともあります。
年金や不動産収入、株の配当金などの入金は継続されているのにです。
国が定めた「成年後見制度」は制限が多く使いにくい問題
鳥山
負担が大きすぎます…!
親と自分、さらに孫までいたら、3世代分の生活を子世代がすべてまかなうことになりかねない…
でも、そうならないために「成年後見制度*」があるのでは?
*成年後見制度…認知症などによって判断能力が低下した方を支援するために、財産管理や、生活に必要な契約を代理で行える制度のこと
大谷さん
たしかに、対策をしていない間に資産凍結が起こっても「成年後見制度」を利用すれば財産を動かすことはできます。
ただし、家族の意思だけでは動かせないもどかしさが出てきます。
鳥山
もどかしさ、とは?
大谷さん
たとえば、財産を保護する観点から、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要になるのですが、その許可が下りないこともあります。
また同じ理由で、支出が大きく制限されるため、「親御さんの認知症が進んで食べこぼしが増えたのでエプロンを買おうとしたら、後見人からの許可が出ずに買えなかった」という話も聞いたことがあります。
鳥山
エプロン1枚買うのに、後見人の許可がいるなんて…!
でも、実際にお世話している家族以外が後見人になったら、あり得ない話ではないのかもしれませんね。
家族で柔軟に財産を管理する!「家族信託」とは
大谷さん
そんな資産凍結に陥る前におこなう対策として「家族信託」という方法があります。
家族信託とは、委託者(親)が所有する財産を受託者(子)へ託し、受託者(子)が託された財産の管理・運用を行うという仕組みのことです。
親御さん側は万が一に備えておくことができ、お子さん側はその万が一の事態になってもご自身の生活を守ることができます。
鳥山
なるほど、これなら実際に現状を把握している人物が適切に財産を使用できますね。
大谷さん
でも、家族信託にも課題があります。
家族信託には司法書士や弁護士などの専門家がお手伝いすることが多いのですが、組成まではできても、それ以降のサポートはおこなわれないことがほとんど。
実際に信託を運用開始したあとに専門家など第三者からチェックを受けていないケースが多く…
信託した財産の管理が適切におこなわれているのか、状況が見えにくいために心配になる方もいるんです。
鳥山
たしかに、信託されたお子さん以外の親族は、正しく運用されているか気になるかも。親側も、しっかり管理してくれているのか知りたいはずです。
…というか、家族信託という方法があることから説明し、理解を得ないといけませんね。
大谷さん
そういった課題解決のために、当社が作ったサービスが「おやとこ」なんです。
大谷さん
トリニティグループは、2009年に創業した司法書士事務所がルーツ。
家族信託が広く普及してきた2016年ごろから家族信託のサポートを始め、年間数千件ものお問い合わせに対応してきました。
家族信託をもっと全国に正しく普及させ、資産凍結に悩む人をなくしたい。
そんな想いでスタートアップ企業「トリニティ・テクノロジー」を立ち上げ、2021年に「おやとこ(旧サービス名:スマート家族信託)」のサービスを開始したんです。
鳥山
どういったサービスなのでしょうか?
大谷さん
「おやとこ」は、コンサルティングとSaaSプロダクトを掛け合わせた日本初のサービス。
家族信託の組成コンサルティングを専門家がおこなうだけでなく、信託したお⾦や資産をアプリで簡単に管理することができます。
「おやとこ」のメリットを挙げながら、詳しく紹介させてください。
①国内トップクラスの実績を持つ専門家が丁寧に対応
大谷さん
家族信託は、信託契約を締結してからが本当のスタート。
当社はリーディングカンパニーとして、責任を持って専門家がずっと伴走します。
当社では家族信託専用の財産管理システムを開発・提供。そのシステムを通じて、リアルタイムでモニタリング・サポートをおこなえる環境を整えています。
②リーズナブルな料金設定
大谷さん
日本では、2050年には認知症患者の割合が全人口の10人に1人になるそうです*。
だからこそ、家族信託を誰でも利用しやすく、高品質かつ安価に提供することを目指しています。
当グループの従来のサービスと比較しても、初期費用を大きく抑えることに成功しました。
*「
日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究
」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業九州大学二宮教授)
③ご家族への説明に同席
大谷さん
家族信託を始めるときに悩むのが、親御さんや親族への説明です。
私たちは、正しく家族信託を知ってもらえるよう、必要があれば面談に同席して、全員が納得するまで説明をおこないます。
④専用アプリで簡単・完全に運用
大谷さん
家族信託は信託法に基づく法的制度。
信託法37条では、家族信託の運用が始まると、受託者(お子さんの場合が多い)に帳簿作成・領収書保存・年度報告書類の作成などが義務付けられています。
この事務作業が、受託者の大きな負担になっていたんです。
鳥山
書類作成は面倒そうですね…
大谷さん
これが最大の特徴なのですが…
「おやとこ」では、日本初の家族信託専用アプリを開発・提供し、この事務作業の負担を大幅に軽減させました。
銀行とのAPI連携や、レシートの自動読み込み機能などで、帳簿や報告書を自動生成する機能も搭載。
家族にも財産状況を自動共有することができ、資産管理の状況がわかるので、家族信託を簡単・安心に運用することができます。
家族信託の認知率は約20%。社会課題の解決策を知ってほしい
大谷さん
日本はいま、超高齢社会が到来しています。
高齢者数の増加と平均寿命の増加が相まって、2020年時点で約630万人の認知症患者は、2050年には1,000万人を超えると推計されています。
また、2030年には国民総資産の約10%(約200兆円)が認知症患者の保有資産になる*と言われているんです。
*「
認知症患者の金融資産 200 兆円の未来
」(第一生命経済研究所)
鳥山
それは…大変な問題ですね…
大谷さん
資産の流動性を著しく棄損することから、資産凍結問題はいまや日本が抱える大きな社会課題となっています。
ですが、当社の調査によると、高齢の親を持つ方の「家族信託」の認知率は残念ながら20%と低い状態。
この「資産凍結」というリスクと、「家族信託」という解決策をもっと知ってほしいというのが、当社がこのサービスに込めた願いです。
まだまだ先の話だと思っていた、親の認知症と資産の問題。
いざ必要になったときに考えても、できることが限られてしまうため、早めの計画と対策が大切なようでした。
「おやとこ」では、家族信託や認知症による資産凍結について無料相談をしているとのこと。
まずは電話やメールで専門家に相談してみてはいかがですか?
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