

ホームレス経験から経営者へ! 泥臭く誠実に向き合う“はたらくWell-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

「朝10秒で即クビレ」「#元鈴木さんのコルセット」として一躍話題になった、日本製コルセットブランドEnchanted Corset(エンチャンテッドコルセット)をご存じでしょうか?

それまで海外製が多かったため、日本製のコルセットは多くの女性を魅了し、2017年の初販売はわずか5分で数百着が完売。「自分を好きになる魔法」をテーマに、現在は水着と組み合わせられるタイプやバストリフトのついたタイプなど、多様なシリーズがあります。
このEnchanted Corsetの立ち上げ・企画・販売を行っているのが、Xのフォロワー数15万人超(2025年2月時点)の元鈴木さんこと、大橋茉莉花さんです。
コルセットブランド以外にも、「CINEMATIQ(シネマティック)」「SERPENTINA(セルペンティナ)」というアパレルブランドを展開しています。アパレル未経験の彼女がどのように商品企画を行っているのか、そして今年で9期目を迎える経営者としての“はたらくWell-being”を聞きました。
1988年生まれ。獨協大学外国語学部を卒業後、アルバイトなどをしながら26歳までその日暮らしをした後、Webの美容ライター、エッセイストとなる。29歳でAlyoを設立。600mlボトルが入るマジカルポケット付きアパレルの「CINEMATIQ」「SERPENTINA」、驚くほどくびれて10秒で着脱可能なコルセットブランド「Enchanted Corset」、2024年にはナチュラルスキンケアの「Juwan」を展開中。「はたらくWell-being AWARDS 2025」ビジネス・行政部門を受賞
デザイン×機能性×解決力! 元鈴木さんのモノづくり哲学

田邉
2017年に発売されたEnchanted Corsetは、「#元鈴木さんのコルセット」として大きな話題になりましたよね!

大橋さん
私、販売前日は「売れなかったらどうしよう~!」って夫に泣きついたんですよ(笑)。
日本製にこだわって制作したので資金を使い果たしていましたし、発売前夜は数百着のコルセットが家に積み上がっていて…お腹が痛くなりましたね。

田邉
今は会社として、コルセット以外にもブランドを展開されているんですよね。

大橋さん
はい。アパレルブランドと、ナチュラルオイルブランドを運営しています。

田邉
ということは、今日のお洋服も!?
新作の「カシュクールシャツワンピ」。素敵。

大橋さん
そうなんです! このワンピースはアパレルブランド「SERPENTINA」の新作で、上品なドレープがエレガントな印象のシャツワンピースで、ウエストゴム入りで、サイドファスナー付き。
さらに、シワになりにくくアイロンいらずのイージーケアで楽しんでいただけます!
また、「CINEMATIQ」では「毎日を快適に、女優のようにエレガントに」をコンセプトに、機能性とデザイン性を兼ね備えたお洋服を販売しています。
ほとんどのアイテムに、伸縮性がありシワになりにくい生地を採用し、さらに自宅でガシガシ洗濯もOK! 一般的な体型の方から、グラマーさん、妊婦さんまでご着用いただける工夫をしています。


田邉
って、ええ!? ポケットから酒瓶が出ているのですが!?

大橋さん
この600mlボトルが入る大容量ポケット、通称“マジカルポケット”がブランドの代名詞なんです!
ワンピースやパンツ、スカートなどほとんどのアイテムについています♡

田邉
女性向けのアイテムってポケットがないことも多いから、これはうれしい!

大橋さん
実はこのマジカルポケット、SNSで「男性向けのアイテムにはポケットがついていてスマホも財布も入るのに、女性向けのアイテムにはポケットがない」という投稿を見かけたことがきっかけで生まれました。
その投稿を見て、「ないなら、私が作っちゃおう!」と企画したんです。

田邉
SNSでのリアルな声が、企画の出発点だった!

大橋さん
マジカルポケットに限らず、私のモノづくりは常にお客さまの声からインスピレーションを得ています。なのでアイテムを作るというより、「解決策を作る」という気持ちに近いんですよね。
「スカートにスマホや財布が入れられなくて困る」という課題に対して、「それなら酒瓶も入るポケットを作ろう!」、「ジムにいかないと素敵な体型が手に入らない」という悩み対して、「そんなことない! コルセットをつけたら-10㎝になるよ!」というふうに。

田邉
だから痒いところに手が届く、「これがほしかった!」なアイテムが生まれるんですね!

大橋さん
デザイン性や着心地といったファッションのベースを叶えながら、困り事を解決できるモノづくりをすることが私のモットーなんです!
「ないなら作る!」日本製コルセットが誕生したワケ

田邉
これだけ企画力と展開力があるということは、長くアパレル業界でお仕事されていたんですね。

大橋さん
いえ、アパレル業界ではたらいたこと、ないんです。
えっ…え???

大橋さん
私が会社を立ち上げたのは2017年、日本製コルセットの販売を決めた29歳のときでした。
それまでの私は、アルバイト漬けの生活でグラビア、神社の巫女、地下アイドルなど…いろんな職を転々としていました。
一時期は金銭的に困窮して、ホームレス状態になったこともありましたね(笑)。

田邉
アパレル業界未経験で、ホームレス生活まで!?
そうした状況のなかで、どうしてコルセットの販売を? そもそもふつうに生活していたら、出会わないアイテムですよね。

大橋さん
きっかけは、イベントコンパニオンの仕事でした。当時、モーターショーやゲームショーで華やかな衣装を着て商品をPRしたり、イベントの司会進行をしたりする仕事をしていたのですが、案件ごとにオーディションがあるんですね。
イベントコンパニオンは人から見られる仕事なので、見た目も重要な要素のひとつ。でも私は、ジムも筋トレも苦手で体型維持に苦戦していて。

田邉
それは悩ましいですね。

大橋さん
そんなときに出会ったのが、コルセットだったんです! つけるだけでキュッとくびれができて、簡単にスタイルがよく見える。
コルセットをつけ始めてから、見た目にインパクトが出たことで、オーディションも通るようになりました。でも、当時のコルセットは海外製がほとんど。
海外製のものは、その国の人の体型に合わせて作られているので日本人の体型には合わず、金具が当たって痛かったり、着方が難しかったりしたんです。

田邉
身体に密着するものなのに、フィット感が少ないのは辛いです。

大橋さん
同じように感じていた方も多くいらっしゃったみたいで、SNSでそういった声を見て、「それなら私が日本製のコルセットを作ろう!」と思い、会社を立ち上げました。


田邉
そもそものモノづくりのスタートが、お客さまの悩みを解決することから始まっていたんですね!

大橋さん
そうなんです。モノづくりをする者として、せっかく作るなら世の中の役に立ちたいと思っていて。得意なSNSを活用してリアルなお客さまの声をすくい上げ、商品企画に生かしたり、お客さまの声をもとに改良を重ねたりしていますね。
私は経営者ではありますが、ブランド運営に関して「コトは現場で起こっている」と考えていて、POP UPイベントやインスタライブには今も必ず出ています。
どんなお客さまがいらっしゃって、どんなコメントをいただくのか。泥臭いかもしれませんが、直接自分の目で見たいと思っているんです!
“自由”から“責任”へ。20代のときとは違う、“はたらくWell-being”

田邉
2017年に立ち上げた会社は、今年で8年目。
アルバイト漬けだった生活から経営者になり、キャリア観に変化はありましたか?

大橋さん
ようやく、20代の私が描いていた「こうだったら人生楽しいのにな」という理想に近づいてきた感覚ですね。

田邉
理想に近づいてきた!

大橋さん
私はものすごい飽き性で、「やりたい」と思ったこと以外、集中力がまったく続かないタイプなんです。
だけど今は、支えてくれる会社のメンバーがいて、家族がいて、応援してくれるお客さまがいる。
得意な商品企画や広報を担い、無理なくはたらけている今、“はたらくWell-being”がとても高いですね。
「私が1日かけていた業務も、メンバーに任せたら30分で終わったことがありました(笑)」

大橋さん
そして、もうひとつの変化として、遅すぎるかもしれませんが社会人としての自覚が芽生えましたね。

田邉
社会人としての自覚?

大橋さん
義務と権利のバランスといいますか。私、経営者になるまで、まわりに対して何の責任も負ったことがなかったんですよ。20代のころは、その日稼げなかったら困るのは自分だけ。
私がしたことは、全部私にだけ返ってくるわけじゃないですか。でも今は、会社として社会的な責務を果たしながら、従業員の権利を守る立場です。
企業に勤めた経験がなかったので、多くのビジネスパーソンがどんな気持ちではたらき、どんな義務を果たし、どのように権利を認識しているのか、ということへの解像度がとても低かったんです。

田邉
なるほど。社員を雇うということは、金銭的にも生活的にも、人生を背負うという側面もありますよね。

大橋さん
そうなんです。雇う立場になって、人を採用する難しさを痛感しましたね。
以前「なんとなくすごそう!」と採用した方に、会社を乗っ取られかけたこともあってですね…

田邉
乗っ取られかけた!?

大橋さん
私自身オフィスワークをしたことがなかったので、どんな人を採用すべきか経験がなかったのがいけなかったと思っています。
結果的にその方は離れ、今は心強いメンバーが集まってくれています。ありがたいことに4月からは新卒メンバーも加わり、6人の社員が一緒にはたらいてくれています。
私自身の“はたらくWell-being”はもちろんですが、社員一人ひとりの“はたらくWell-being”を作っていくのも私の役目。そう思うと、身が引き締まる思いですね。

田邉
20代のころには見えなかった景色が今、大橋さんには見えているんですね。
自分に正直に生きる──誤魔化さないことがWell-beingの始まり

田邉
お話を伺っていると、モノづくりにも経営にも、とても誠実に向き合われている印象を受けます。
経験を積むほど、それだけ「偉くなった!」と思ってしまいそうですが…
田邉「私なら、ふんぞり返っちゃいそうです」

大橋さん
お恥ずかしながら、カッコつけても大体その通りにいかないのが私なんですよ! いいアイテムの着画が撮れたと思ったら、よく見ると飼っている猫の毛だらけだったこともありますし(笑)。
だからこそ私にできるのは、お客さまにも、社員にも、家族にも、それから仕事にも、ただただ誠実でいることなんです。

田邉
すごく素敵です。そんなふうに素直に生きていくためにはどうしたらいいんだろう。

大橋さん
自分自身と対話することが大切だと思いますね。
さっきはカッコいいことを言いましたが、私もかつては自分を誤魔化して、不相応に大きく見せようとしていたことがありました。

田邉
え! 大橋さんにも、そんな時期が?

大橋さん
そりゃあ。ありますよ! でも、それでは満足できる人生からどんどん遠ざかってしまいますよね。
だからこそ、まわりの目を気にせずに「どうあると自分は幸せなのか」「どう生きていきたいのか」、逆に「ストレスは何?」「どうあると不幸なの?」を自分に聞いてあげないといけない。
それがわからないままだと、結局自分を誤魔化し続けて、しんどい状態が続いてしまうと経験上思います。忙しくても大変でも、まずは自分ととことん向き合うこと。そこからWell-beingは始まるんじゃないかな。

<取材・文=田邉 なつほ>
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