企業インタビュー
“はたらくWell-being”はひとつじゃない。移りゆく自分の本音を見逃さないために必要なこと
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」 「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
今回紹介するのは、大澤あつみさんです。
トヨタ自動車株式会社に新卒入社し13年間勤務した後、世界中どこでもはたらける「海外ノマドワーカー」になるべくフリーランスの道へ。大きな決断の裏には、30代以降うっすらと感じ始めた「この会社を出たら、自分自身に価値があるのだろうか」という不安がありました。
独立から2年、目標であった海外ノマドワーカーのはたらき方を実現し、かつての自分が抱いていたのと同じ悩みを持つ方々に向けて、「大企業スキル勉強会」を主宰。3つのステップで自分の本音と向き合う場を提供している大澤さんに、今のご自身にとっての“はたらくWell-being”を聞きました。
東京都出身。早稲田大学卒業後、トヨタ自動車(株)へ入社。法人営業で官公庁担当を経て、2015年より広告宣伝に携わる。車種コミュニケーション戦略立案、制作、施策展開まで国内の販促企画業務全般に従事。世界を自由に飛び回りたいと海外ノマドワーカーになるべく2022年に退職。現在はフリーランスとしてマーケティングのアドバイザーやコミュニティ運営などをしている。大企業で培ったスキルの活かし方を考える「大企業スキル勉強会」主宰。
大企業にいるのに自信がない!? Well-beingの根本となる「自分を知る」ための勉強会
飯室
早速ですが、主宰されている「大企業スキル勉強会」では、どのような活動をしているんですか?
大澤さん
1社の大企業で5年以上勤務された経験を持った方たちが集まり、参加者同士の交流やワークを通じて、自身のスキルの棚卸しや言語化していく活動をしています。
飯室
スキルの棚卸しや言語化ですか?
大澤さん
はい。具体的にワークの内容は大きく3つあります。
①自分のスキルを認識する
②自分にとっての理想的なはたらき方を考える
③その理想的なはたらき方はどの環境でどうしたら叶うかを考える
3工程で、自分自身への理解を深めていきます。
飯室
自分自身への理解を深める!?
大澤さん
大企業勤めの方には、「自分のスキルがわからない」といったお悩みや、漠然とした将来へのもやもやを抱えている人が、実は多いんです。
飯室
大企業勤務と聞くと、安定していていいなあと羨ましく思っていたので、そういった悩みを持っている方が多いとは意外です! 参加者は、どのような業種・職種の方が多いんですか?
大澤さん
多種多様ですよ!業種で言えば自動車・化粧品・アパレルなどのメーカー、IT系・メディア系の方がいらっしゃいますし、職種も営業・SE・マーケティング・クリエイティブなどですね。
飯室
本当に多様ですね! 年齢はどれくらいの方が多いのでしょうか?
大澤さん
30代〜40代が多いです。
これまでに10回開催し、のべ125名が参加してくださいました。
「大企業」をフックに、日常では接点が少ない業界同士の方々との交流が生まれています。
飯室
ちなみに、「大企業」に絞ったのはなぜなんですか?
大澤さん
個人的には大企業に限らず、「自分のスキルを正しく認識して、自信を持ってはたらく人を増やしたい」という目標があります。そこに向かって、まずは自分も経験のある「大企業」という枠組みから取り組んでいるという感じですね。
飯室
大澤さんご自身も、自動車メーカーで13年という勤務経験をお持ちですよね。
大きな目標に向けた、第一歩なんですね!
大澤さん
ある程度バックグラウンドが似通っていることで、参加者同士の交流が円滑になるという効果もあるんですよね。
仕事内容は違えど、「大企業あるある」な悩みってあって、共感し合えることで関係構築がスムーズになります。
飯室
なるほど。
勉強会に参加するだけではなく、そこに集う方々とのつながりもできるんですね。
大澤さん
勉強会の参加者向けにコミュニティをつくっているのですが、似たバックグラウンドを持ちながらも、多様な経験を持っている人が集うから、楽しいんです。
転職経験がある人もいれば、私のように独立している人もいる。
大企業勤務経験者のなかで多様なロールモデルを知る機会があれば、どうはたらくか? はもっと柔軟に考えられると思うんですよね。
飯室
はたらき方に迷ったとき、相談したい人がいる環境っていい!
大澤さん
そうですよね。あと、意外に大企業に絞ったコミュニティって少ないんです。
ベンチャーやスタートアップは積極的に社外のつながりをつくって情報交換しているイメージがありますが、大企業は人とのつながりも情報流通もある程度社内で完結できるので、わざわざ外に出ていく人自体も少ない印象があって。
飯室
たくさんの人や情報には触れるけれど、まったく異なる価値観に触れる機会は少ない?
大澤さん
社内教育など環境が整っていますし、価値観の似た人たちが集まりやすいのかもしれないですね。
私の場合、会社員時代に社外セミナーやオンラインサロンに参加したことがきっかけで、多様な価値観に触れ、自分の世界が広がる感覚がありました。
だからこそ、企業に所属しながら外の世界とつながる場をつくり、一人ひとりにとってのはたらき方の選択肢を増やせたらいいなと思っています。
飯室
選択肢を増やす。
大澤さん
一昔前であれば、大企業に入れば定年まで安泰と思われていましたが、終身雇用の維持が困難であったり、副業解禁する企業が増えてきたり、時代の流れによってはたらき方が多様になっているじゃないですか。
私自身、大企業ではたらいていたけれど、「もし自分が他のはたらき方をするなら?」と考えたときに、自信を持てなかったんです。
自分が持っているスキルは他の場所でも通用するのかわからなくて。
そして、そもそも自分がどうはたらきたいかも、まったく見えていなかった。
そのもやもやが辛くて長い間キャリア迷子になったのですが、実は同じ悩みを持つ方は多かったんですよね。
「わたしは、どうはたらきたい?」本音を知るのが一番難しかった
飯室
大澤さんが企業勤めのときに感じていたもやもやは、どういったものだったんですか?
大澤さん
入社して10年目くらいですかね、ふと「このままでいいのかな?」と思い始めて。
飯室
むしろ10年間は、何も不安がなかった?
大澤さん
なかったんです! 定年まではたらくと思っていたし、会社も人も仕事も好きでした!
「今でも退職したことに自分が一番びっくりしてます」
飯室
漠然とした不安が生まれてから、どう対峙していったんですか?
大澤さん
コーチングを受け始めたのですが、「自分にとってのはたらくって何?」にたどり着くのに、2年かかりました。
私の場合は、本音がなかなか出てこなくて。
飯室
自分のことなのに、本音が出ない!?
大澤さん
本音に蓋をしたまま、長くはたらいてきてしまったんですよね。
人から評価されるレールを歩もうとして、自分の感情よりも人からどう思われるか、多くの人が望む人生を歩むことを優先してしまっていたんです。
飯室
努力されて、入社されているんですもんね。
大澤さん
就職したからには、一生懸命はたらこうという気持ちですね。
その結果、他者目線を気にする自分はコーチが納得できる答えを出そうとしちゃうんです。
本音にたどり着く前に、求められていそうな答えを口が勝手に(笑)。
飯室
本音に気づくって実はめちゃくちゃ難しいんですね。
大澤さん
話してみては「あれ? 違うな?」を繰り返して2年。
その過程でわかったことは、私は「世界中を飛び回って好きなときに、好きな場所ではたらきたい」という目標でした。
そして、なぜ10年目でもやもやし始めたかもわかったんです。
飯室
原因は、なんだったんですか?
大澤さん
私にとってのはたらく楽しさは、「知らないことを知り、自分自身の成長を感じられること」。
大企業に入り、ありがたくも教育制度がしっかりしているなかで、20代は部署異動や担当変更によって新たな学びも多かったですし、手がけるプロジェクトの規模もだんだん大きくなることで成長実感がありました。
もちろん辛いこともあるけれど、それよりも楽しかったんですよね。
飯室
ある程度経験を積むことで成長曲線が緩やかになると、もやもやしてきてしまうかも。
大澤さん
原因は、そこだったんですよね。
これは会社が悪いわけではなくて、私自身の好みの話。「違う世界を見たい」という欲求はずっとあったのに、蓋をし続けていたんです。
コーチングを通じて自分の本音に辿り着けたとき、それでも会社を辞めるかは迷い続けましたが(笑)、決断できたきっかけはコロナ禍で日常が一変したことでした。
いつでも世界に旅立てるわけじゃない、不測の事態は起こるんだと知ったときに、それなら一歩踏み出そうと。
飯室
ようやく決断ができたんですね。
大澤さん
フリーランスになって、もしうまくいかなかったらまた会社員に戻ればいいんだって自分の背中を押しました。
それまでの私は、ひとつ選択をしたら、最後までやり遂げなければいけないと思っていました。
だけど、キャリア選択に「間違えた」はない。今の自分が何を優先したいのか? にようやく目を向けられました。
飯室
確かに、「キャリア選択は間違えちゃいけない」って思い込んでたけど、間違いってなんだ? って感じですね。
大澤さん
はたらくことによってどういう充実感を得たいのかって、答えはひとつじゃないと思うんです。
その時々できっと変化しているし、変化していいものだよなと。
今の私は、知らないことを知るために世界中を飛び回りたいという欲求を叶えてあげることが最優先だと知れたからこそ、決断ができたんです。
一人では見つけるのが難しいのなら、コミュニティの力を使って
飯室
はたらくWell-beingは変化してもいい。新たな発見でした。
でも、そこにたどり着くまでのキーワードとなる「自分の本音」。
ご自身の経験を踏まえると、この本音を引き出すのが難しくて、しかも繰り返し問う必要がありそうですね。
大澤さん
もちろん人によって難しさは違うと思いますが、私自身が苦戦したからこそ、継続的に自分と向き合う機会があったり、一緒に取り組む仲間がいるといいなと思うんですよね。
「なんて言ったって、私本音にたどり着くのに2年かかってますからね」
飯室
そうか、だからコミュニティなんですね!
大澤さん
そうですそうです! 自分自身のことを知りたいと思ったときに、じっと一人で内省するという方法もありますが、そのなかで答えを見つけ出すって並大抵のことじゃないと思うんです。
①自分のスキルを認識する
②自分にとっての理想的なはたらき方を考える
③その理想的なはたらき方はどの環境でどうしたら叶うかを考える
根本となる①は、案外第三者的な視点も大事で、誰かから「これ得意だよね」と声をかけてもらえるからこそ気づく自分のスキルもある。
「この人に言われると嬉しい!」と思えるような信頼できる仲間とともに、みんなで徐々にWell-beingに近づいていけたらいいですよね。
飯室
最後に、大澤さんの今後の展望を教えてください。
大澤さん
キャリアってわからないからこそ、選択肢をたくさん知って最適解を選んでほしい。
その選択肢を増やすための場づくりを、続けていきます。
企業に所属するでもよし、フリーランスになるでもよし、形はどれでも良いんです。
自分の持っているスキルを認識し、そのスキルを活かせる場所を見つけて、自信を持って生き生きとはたらく人を増やしたいです!
飯室
あの、今日のお話を聞いて、ワークショップに参加したくなった場合はどうしたら良いですか? 私大企業の経験がなくて...!
大澤さん
一人で自分と向き合うのは難しいと思う方は、ぜひ一緒に取り組みましょう。
普段出会えない人と、お互いのキャリアを交差させて視野を広げることをコンセプトに、どなたでも参加できる「キャリアクロッシング」というワークショップを、パーソルホールディングスさんと一緒に開催するので、活用してみてください。
2024年7月8日(月)の夜、どなたでもご参加いただけますので、キャリア迷子になっている方は詳細を見てみてくださいね!
「キャリアクロッシング」セミナーを主宰する大澤あつみさんを講師に迎え、“はたらくWell-being”について、参加者同士で学び、より深く考えるための「新たな視点で自分のスキルを知るワークショップ」を開催します!
第一回目のワークショップでは、キャリアに関する不安を参加者同士の交流を通して解消し、自分一人では気づくことができないスキルを可視化し、明言できる状態を目指します!
同じ悩みを持つ人とつながって、異なる視点から自分の可能性に気がつくきっかけにしましょう!!
【こんな方におすすめ】
・キャリアやスキルに不安を感じている方
・キャリアにおける自分の可能性について考えたい方
・“はたらくWell-being”について考えを深めたい方
日時:2024年7月8日(月)19時~21時(受付開始18時30分)
場所:パーソルキャリア大手町オフィス(東京都千代田区大手町1丁目6-1大手町ビル5F)
参加費:無料
【参加方法】下記ボタンより、パーソルホールディングスが主宰するFacebookコミュニティ「はたらくWell-beingLab.」に入会申請いただいた後、入会後にコミュニティ内のイベントページよりお申し込みください。
<取材・文=飯室佐世子>
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