企業インタビュー

選べなさも抱き締めて、自分の人生を選んでいく。若者向けキャリア教育、就労支援を行うHASSYADAI social三浦宗一郎の歩んできた道

選べなさも抱き締めて、自分の人生を選んでいく。若者向けキャリア教育、就労支援を行うHASSYADAI social三浦宗一郎の歩んできた道

連載「“はたらくWell-being”を考えよう」

新R25編集部

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リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。

現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。

そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

2022年4月1日、民法が改正され成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。子どもから大人へと移り変わる若者たちに向けた取り組みとしてSNSで話題になったのが、「CHOOSE YOUR LIFE FES#18歳の成人式」です。クラウドファンディングで約700名の方から1000万円以上の支援を受け、参加費無料、全国からの交通費補助を実現しました。

発起人は、一般社団法人HASSYADAI social(ハッシャダイソーシャル)の代表理事、三浦宗一郎さん

三浦さんは高校卒業後、トヨタ自動車の企業内訓練校「トヨタ工業学園」へ進み、工場員として勤務していました。入社3年目のときに、内閣府のプロジェクト「世界青年の船」に参加したことをきっかけに退職し、前身となる株式会社ハッシャダイへ入社。スピンオフする形で一般社団法人HASSYADAI socialを立ち上げました。

それでもなお、人生は選べる」を胸にさまざまな活動を行う三浦さんに、“はたらくWell-being”に何が必要なのか、そして「情熱のスケジュール化」を聞きました。

1995年生まれ。愛知県出身。中学卒業後、トヨタ自動車の企業内訓練校・トヨタ工業学園に進学。卒業後、トヨタ自動車に就職し、自動車製造にかかわる。2017年に内閣府「世界青年の船」日本代表に選出。その後、トヨタ自動車を退職し、約20カ国を旅する。2018年より株式会社ハッシャダイ入社、ヤンキーインターンの講師を務め、2020年より一般社団法人HASSYADAI.socialを設立し、共同代表理事に就任

若者たちが「自分の人生を自分で選ぶ」ために、走り回るHASSYADAI social

三浦さん

すみません! 前の打ち合わせが長引いちゃって…!

ーー(編集部)とんでもないです! お忙しいところありがとうございます。まずは、息を整えてください!

「ありがとうございます!飲みます!」と三浦さん。長引いた理由は、のちほど紹介

ーー(編集部)では改めて、一般社団法人HASSYADAI socialがどのような取り組みをしているのか教えていただいてもいいですか?

三浦さん

はい!HASSYADAI socialは、おもに全国の高校、少年院、児童養護施設などにいる若者たちに向けて、「Choose Your Life!」を合言葉に「自分の人生を、どう自分で選んでいくのか」を軸に事業を展開しています。

ーー(編集部)具体的にどのような事業があるのでしょうか?

三浦さん

メインの活動として、僕やメンバーが全国を回り「どんな環境からでも、あなたの人生は選べる」というメッセージを伝える講演活動があります。その他に、教育プログラムや対話型プログラムなども展開しています。


さらに成人年齢が18歳になったことを受けて「これから先の“人生のお守り”を手渡したい」との想いから、2023年より「CHOOSE YOUR LIFE FES#18歳の成人式」の企画・運営をしています。

ーー(編集部)「CHOOSE YOUR LIFE FES#18歳の成人式」は、SNSやメディアでも話題になり、2025年度の開催も決定されていますよね。

三浦さん

本当にありがたい限りです!第1回の開催では約800人の新成人が参加してくれて、回数を重ねるごとに規模もどんどん拡大しています。

そしてもうひとつ、成人年齢の引き下げを受けて「騙されない為の教科書」という消費者教育プロジェクトもスタートしました。

ーー(編集部)騙されない為の教科書?

三浦さん

昨今、若者の詐欺被害が増加しているんです。というのも、親の同意なく契約が結べることもあり、詐欺の対象が18歳にまで広がっているんですね。

実際、僕のSNSにも「詐欺られました」「10万円取られました」といったメッセージがよく届くほどで。

ーー(編集部)なるほど…ニュースでも話題になることがありますよね。

三浦さん

将来に対する社会不安があったり、国が投資を進めたりしていることも影響しているのかなと思います。

若者たちが、自らの可能性を搾取されないための知識として「騙されない為の教科書」というパンフレットを全国の自治体や高校と連携し、無料配布しています。

騙されない為の教科書

大切なのは、「気持ちいい図々しい奴でいる」という自分のスタンス

ーー(編集部)三浦さんは、一般社団法人HASSYADAI socialを立ち上げるまでトヨタ自動車に勤められていたんですよね。その後、内閣府のプロジェクトへ参加したり、世界各地を旅されたり、株式会社ハッシャダイに入社したり…と、多彩なご経験をお持ちですよね。

三浦さん

いやいや、人との出会いと運に恵まれたおかげです。あ、でも、挨拶は意識してるかな。

ーー(編集部)挨拶ですか。確かに三浦さんの声はよく通るというか、聞き心地が良いです。

三浦さん

そう言われると嬉しいっすね!

冒頭の「すみません!」もスカッとしていて気持ちよかった

三浦さん

高校時代の名残だと思うんですけど、高校生のときは先輩が通りかかったら一人ひとりに挨拶しなきゃいけないルールで、6人一緒にいたら6回「こんにちは!」と言ってたんですよ(笑)。

ーー(編集部)6人一緒にいるのに6回⁉︎ 人知れず挨拶力が鍛えられそうですね。

三浦さん

そうそう! 社会に出てから意識してるので言うと、気持ちいい図々しい奴でいる、ですかね。

ーー(編集部)気持ちいい図々しい奴?

三浦さん

僕の経験上ですけど、人付き合いは図々しくてもいいんじゃないかなと思うんです。

年齢関係なく全員オリジナルの人生を生きているわけだから、相手が見たことない景色を自分は絶対に見たことがあって、だから話せることがある。「目上の人だから」と自分を卑下したり、謙遜したりするのは超もったいない!と思ってます。

ーー(編集部)でも、「図々しさ」は「失礼」と紙一重で、そのバランスが難しくないですか?

三浦さん

確かに確かに。それもめっちゃわかります。僕も客観的には「自分って図々しいな」と思いますし「失礼かもしれない」という不安もあります。

とはいえ、遠慮していたら物事は進まないんですよね。「俺、図々しいやつだな~」と思いながらも、失礼かどうかを決めるのは相手だから自分のスタンスとして対等に話すことを意識しています。

ーー(編集部)言われてみると、「失礼かも」って勝手に尻込みしてるのは、自分自身ですよね。

三浦さん

そうそう! 今日も、前の打ち合わせが人気アーティストのプロデューサーで、最初はやっぱり緊張していたんです。でも、せっかく会えるならたくさん話をしたくて。

「そんな機会、もうないかもしれないじゃないですか!」

三浦さん

「図々しいな俺〜」と思いながら、「でも、自分はこう思う」って対等な目線で話していたんですね。すると相手も「でも僕は」と返してくださり、話がどんどん広がっていきました。

だから結局2時間半も話しちゃって…遅れてすみません!

ーー(編集部)「気持ちいい図々しい奴」でいたからこそ、だったのですね!

三浦さん

対等だと相手も興味を持って面白がってくれるので、礼儀は守りつつも気持ちいい図々しい奴でいるようにしています!

決断するときは、宣言、納得、行動の3段階がある

ーー(編集部)これまでキャリアでも人生でもたくさんの転換点があったかなと思うのですが、一歩踏み出す決断ができたのはどうしてなんですか?

三浦さん

振り返ってみて思うのは、決断までには3段階あったなと思っていて。

ーー(編集部)3段階。

三浦さん

たとえばトヨタ自動車の退職を決めたとき、僕はまず世界各地から18〜30歳の青年が集まり、1カ月共同生活をする「世界青年の船」の最終日に全員の前で宣言したんです。「帰国したら、会社を辞めます!」と。

まずは大勢の前で宣言して、自分をやるしかない気持ちにさせるんですね。

ーー(編集部)2段階目は?

三浦さん

その決断の納得感を高めていきます。「なぜ自分はその決断をするのか」「どうしてその決断をしたいと思うのか」を徹底的に見つめ直しました。

なぜその選択肢が出てきたのかを順に紐解いていくと「ここに行ったのはあの人に会ったから」「あの人に会ったのは、この人との出会いがあったから」と、だんだん「この選択肢は生まれるべくして生まれたのかもしれない」という感覚になるんです。

三浦さん

「今、この選択肢が自分の中に現れたということが、自分がその選択をする最も大きな理由かもしれない」と納得感が高まったら最終段階、行動ですね。

ーー(編集部)最終段階は、行動。

三浦さん

上司に「辞めます!」と言うんです。すると、周りが僕を旅立たせてくれる体制になるじゃないですか。

結局はこの行動がすべてなんですけど、この最終段階への勇気を持つために1、2段階が僕には必要でした。

ーー(編集部)宣言して、納得したうえで、行動に移す。その3段階なんですね。

三浦さん

…って、今だからかっこよく言ってますけど「宣言しちゃったからやらなきゃ」の気持ちが大いに決断の後押しになりました。僕の宣言を聞いていた証人がたくさんいて、先に自分で自分の足元を壊したからには「あれ?あいつやってないな」と思われたくないんですよ(笑)。

「言ったからにはやらなきゃ」という気持ちがエンジンになるので、今でも何かアイデアがあるときには周りへの宣言から始めますね。

情熱は萎んでしまうから。その前に、情熱をスケジュール化する

ーー(編集部)そう思うと、三浦さんが“はたらくWell-being” を感じるためには、まず宣言することが大切なのかもしれないですね。

三浦さん

そうですね、僕は特にそうだと思います! 情熱はスケジュール化しないと、なくなっちゃいますから

ーー(編集部)ど、どういうことですか? 情熱をスケジュール化?

三浦さん

つまり、「やりたい!」「面白そう!」と思う気持ちって風船と似ていて、今日はパンパンに膨らんでいたとしても、1週間後には萎んでしまいがちじゃないですか?

ーー(編集部)言われてみれば確かに、「やりたい!」と思ったことが実現したことって少ないかも…。

三浦さん

情熱やパッションって、気化してなかったものになりやすいと思っているんです。さらに僕は、もともと飽き性でエネルギーの持久力も弱い。

情熱やパッションは風船に似てる。とてもわかりやすい例え

三浦さん

だから、パンパンのうちに破裂させておくことが超大事。周りに宣言して、「あの人に会ったら話が進むかも」と思ったら、その場ですぐに連絡します。

フェス開催のときも先に会場を押さえたり、イベント運営に詳しそうな人にアポとったり。そういうふうに、情熱を現実化するために次の予定をどんどん組み込んでいきます

ーー(編集部)やらざるを得ない状況をつくって、自分をコントロールしていくんですね。

三浦さん

そうです。この「情熱のスケジュール化」は昔からけっこう意識していて、20代のときは飲み会で「ニュージーランドいいよ!」と言われたら、その場で航空券を押さえてました(笑)。

出発日が近づいてくると、「行きたくねえな」「めんどくせえな」って気持ちも生まれてくるんですけど、もう決まってるから行くしかないと。でも、行けば最高なんですよ。

ーー(編集部)自分を常に、背水の陣状態にしておく。

三浦さん

まさにです!

選べないことも含めて自分の人生を、なお選び取っていく

ーー(編集部)HASSYADAI socialの活動のモチベーションはどういったところにあるのでしょうか?

三浦さん

モチベーションというか…今の事業をしているのは、“衝動”に近いかもしれません。言葉にしにくいんですけど、「やりたい」とか「やりたくない」とか考えるよりももっと手前で身体が動いているような。

ーー(編集部)“衝動”。

三浦さん

僕、子どもの頃は学校の先生になりたかったんです。先生になるためには大学にいかなきゃいけないと思うんですけど、それは家計の経済的に難しかったんですね。

そこで紹介してもらったのがトヨタの企業内訓練校、という経緯があるんです。

三浦さん

そういうこともあって、子どもの頃は「あいつの家に生まれてたら」と考えたこともありました。

だけど生まれる場所は選べないし、もっと言えば人生は選べないことのほうが多いと思うんです。

ーー(編集部)最近だと、自分で選べないことを指す「親ガチャ」「上司ガチャ」なんて言葉もありますよね。

三浦さん

だからこそ、それが僕の“衝動”の源泉でもあるのかなと思います。選べないことも多い人生の中で、それでも「選べた」と感じてほしい。僕自身も、そして若者たちにも「選べなかったことがあったから、今選べた」と思ってほしい衝動から、今の活動をしているような気がします。

そう思うと、合理的に考える前に身体が動いてしまう衝動って誰にでもあると思っていて。

ーー(編集部)誰にでも、ですか。

三浦さん

衝動という言葉だけだと、ガンガン進んでいくイメージを持つと思いますが、すでに自分のなかに衝動があって、能動的に突き進めるならそれはそれで正解です。

一方、受動的な姿勢で、置かれた環境、周りの人、今の状況を受け入れて、自分の人生の声に耳を澄ませる中で沸き立つ衝動もきっとあるはずで。

ーー(編集部)能動的な衝動が“剛”とすると、受動的な衝動は“柔”で、性質は違うかもしれないけど、どちらも衝動ですよね。

三浦さん

だから僕らハッシャダイは、選べないことが多い若者たちに向けて衝動が湧き出てくる体験や機会、きっかけを創出することで、「それでもなお、人生は選べる」と伝えていきたい。

そのための事業をこれからもっと拡大させたいし、今ある事業もより最大化させていきたいですね。

ーー(編集部)選べないことも抱えて、自分の人生を自分で選ぶために。

三浦さん

振り返ったときに「そういえば、自分で選んできたことっていっぱいあったんだよな」と解釈によって自分の過去を変えられたら、最高ですよね。

<取材・文=田邉 なつほ>

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