企業インタビュー
「コンテンツマーケの風潮は変わりつつある」世界的な映画をつくる映像会社が提唱する“ドキュメンタリーPR”
AI時代の“ブランディング最新版”
新R25編集部
押し寄せるAIの波。
そんななか、AIが絶対に生み出せないのは、人々の背景にあるリアルな想いやストーリー…つまり「ドキュメンタリー」です。
「ドキュメンタリー映像」を軸にブランディング支援をおこなう株式会社Rim Entertainmentの代表取締役・Jeong Yeongsu(ジョン・ヨンス)さんに、AI時代の企業ブランディングに必須の要素を教わりました。
〈聞き手=山田三奈(新R25編集部)〉
「ドキュメンタリーブランディング」が差別化のカギになる
ジョンさん
「株式会社Rim Entertainment」は、真実性・リアリティ・社会性を追求した作品づくりをする独立系の映画会社です。
ジョンさん
「ドキュメンタリー」の価値を再定義し、社会に影響を与えることをミッションに掲げています。
山田
ドキュメンタリーの価値を再定義…というと?
ジョンさん
今は、AI時代じゃないですか。
今後、企業でもAIによるクリエイティブ制作がどんどん進むと予想されていますし、映像領域においてもすでに大きな影響が出始めています。
山田
これからもっと高性能になっていきそうな気がします…
ジョンさん
ただ…そんなAI時代にあっても、「ドキュメンタリー」はAIに代替されない唯一のクリエイティブ領域だと思うんですよ。
人の想いと物語、感性から生まれるクリエイティビティには大きなポテンシャルがあるはず。
企業ブランディングやプロモーション領域においても、今後は「ドキュメンタリー」による発信力が差別化のカギになっていくと思っています。
国際的に評価される「ドキュメンタリー映画・映像」を制作
山田
具体的には、どのようなドキュメンタリー作品を制作されているんでしょうか?
ジョンさん
たとえば、世界でもっとも細い織物の紐・真田紐(さなだひも)を紹介した「Sanada Cords」という作品は、今年2月、NHK WORLD JAPANで世界160カ国に放送されました。
戦国武将・真田幸村により考案され、千利休も愛用。約450年紡がれてきた「真田紐」に密着した証言ドキュメンタリーです。
山田
証言ドキュメンタリー…歴史に残る資料のような価値もありそうですね。
ジョンさん
後世に残るような作品でいうと、「タイムカプセルプロジェクト」にも取り組んでいます。
薄れゆく過去の記録・記憶・文化・想いを“歴史アーカイブ”として映像で記録し、次世代へと残すことで未来に繋げるWebドキュメンタリーです。
ジョンさん
「広島被爆体験証言者」を題材にした証言ドキュメントや、「東日本大震災から10〜11年の被災地を追った短編ドキュメント」などを制作しています。
山田
社会的意義のある作品ですね。
ジョンさん
また、Amazonプライム・ビデオにも映画やドキュメンタリーの映像作品を配信支援しています。
たとえば、葛飾北斎生誕260年を記念して制作した舞台芸術作品「The Life of HOKUSAI」では、最先端プロジェクションマッピングの映像とともに葛飾北斎の生涯を表現。
英国「エジンバラ芸術祭フリンジ」で、日本出品作品で唯一の“4つ星評価”を獲得しました。
すごい
ジョンさん
現在、映画情報を紹介するWebメディア「シネマライブラリ」も運営中です。
映画の背景解説や考察などのコンテンツが充実しているので、ぜひ覗いてみてください!
“記憶に残る映像”で、企業のブランディング支援も
ジョンさん
2024年度からは、企業のブランディング支援にも力を入れています。
冒頭でも言ったように、今後はクリエイターに代わってAIが多くの企業のコンテンツを制作する時代がくる。
すると何が起こるかというと…すべてのクリエイティブが均質化され、似たような映像や広告が乱立する世界が誕生すると思うんです。
山田
企業の差別化が今以上に難しくなっていくと。
ジョンさん
そんな時代において企業が差別化できる要素は、その企業のストーリーや想い、社員です。
その企業にしかないオリジナルなストーリーは、強い共感⼒とブランディング価値があります。
逆にいえば、商品やサービスには⾃信があるのになかなか企業の魅⼒が伝わらないのは、ストーリーが不⾜しているからなんですよ。
山田
でも…企業ストーリーを伝えるのに、なぜ“映像”が効果的なのでしょうか?
ジョンさん
映像は、伝わる情報量が圧倒的に多いコンテンツだからです。
社長や社員の表情や話し方、オフィスの様子など、多角的にメッセージを伝えられます。
さらに「ドキュメンタリー映像」にすることで、メッセージを“記憶に残る感情的な体験”として伝えられるんです。
ドキュメンタリーと相性の良い領域
ジョンさん
一度制作したドキュメンタリー素材は、その後も多⽅⾯で流⽤できます。
⻑期間にわたる資産としても有用です。
ジョンさん
僕は、「コンテンツマーケティング」の風潮が変わりつつあると思っているんですよ。
山田
というと…?
ジョンさん
これまでは広告やマスメディアで発信するのが当たり前でしたが…すでに「大量生産・大量消費」の時代は終わりました。
今は“いかに商品を売るか”より、“いかに企業ブランドを⾼めるか”が大事。
そこに気づいた企業は、⾃社メディアやSNSで⾃ら制作をしたコンテンツを発信して、コアなファンとの深い関係性を構築しはじめています。
山田
ブランド訴求には、自社発信が強いと。
ジョンさん
そうですね。
弊社はドキュメンタリーを頂点としたブランディングとして、Web制作・メディア・広告運⽤など、Web領域の幅広い⽀援が可能です。
“点”で訴求するコンテンツマーケティングではなく、“面”で訴求する「ブランドジャーナリズム*」で企業価値を高めます。
*ブランドジャーナリズム…ブランドや企業が自らジャーナリズム(報道活動)の視点を持ち、自社メディアで情報を展開して認知度を高めていくこと
ジョンさん
ストーリー主体のドキュメンタリーを頂点にブランディング活動をしていくことは、国内の広報PRにも活きてきます。
各メディアの編集部門、いわゆる編集長の方々は、自社メディアに取り上げるためのネタ(ストーリー性があるネタ)を日々探しています。
ストーリーがない状態でメディアにアプローチしてもメディア掲載になかなか繋がりにくいのが現実です。
なので、上流からブランディングしていくという発想を持つことが大事だと思います。
「海外PR」や「教育領域」も視野。今後の展望
山田
「ドキュメンタリー」の可能性は大きそうですが…今後は、どのような展望があるんでしょうか?
ジョンさん
映画を制作していて思うのは、「ドキュメンタリー」って海外向けのプロモーションとしても強いんです。
僕は韓国人で、日本を“外国人”という視点から客観視できる点が強みだと考えています。
だから次は、日本人にとって身近すぎて気付いていない“当たり前の価値”を、海外に持っていきたいですね。
山田
たとえばどんな…?
ジョンさん
伝統文化や日本食はすでに人気がありますが…もっともっと眠っているものがあるはずです。
そこを模索しつつ、2024年4月には韓国法人を立ち上げて、韓国方面にも事業を展開していきます。
あと…教育に「ドキュメンタリー」を取り入れる文化をつくりたいとも考えているんです。
山田
教育に?
ジョンさん
先ほど紹介した「タイムカプセルプロジェクト」のように、歴史や伝統、社会、その時代を生きていた人々の想いをドキュメンタリーとして残して、教育の分野で活用してもらいたいなと。
歴史に想いを馳せ、考え続けることが、次世代に繋がると信じています。
AI時代だからこそ取り組む意義と可能性がある「ドキュメンタリー」で、世界に活動を広げながら“人のストーリー”を伝えつづけていきたいです。
今後、企業が他社と差別化を図るためのカギになりそうな「ドキュメンタリーブランディング」。
映像でストーリーを伝えて企業価値を高め、“AIには生み出せない未来”をつくりたい方は、ジョンさんに相談してみては?
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