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“不完全”が織りなす完璧な美学。「HUIS」が伝える、遠州織物が世界を魅了する理由

“不完全”が織りなす完璧な美学。「HUIS」が伝える、遠州織物が世界を魅了する理由

評価の背景にある遠州織物の歴史とは

新R25編集部

株式会社HUIS

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静岡県の遠州地方で、こだわりをもってつくり続けられている高級生地「遠州織物」。

“メイド・イン・ジャパン”の価値は世界的にも評価され続けており、職人による伝統的な手仕事の価値も近年さらに高まっています。

世界的なメゾンが熱視線を送る遠州織物。経済効率性とは正反対の方向性で技術力、品質ともに高めてきた遠州産地の特殊性に、その理由が秘められているそうです。

アパレルブランド「HUIS.(ハウス)」オーナー・松下昌樹さんに、「世界が遠州織物に注目する理由」を伺いました。

〈聞き手=古川裕子(新R25編集部)〉

世界を魅了する、日本の織物技術

松下さん

静岡県西部の遠州地域は、古くから綿花の栽培で栄えてきた織物産地です。

世界的な有名ブランドでも使われるような高級コットンやリネン生地を中心に、多様な生地がつくられています。

日本ではあまり知られていませんが、パリやミラノで行われている世界最高峰の生地展示会に、実は遠州の機屋さんが日本代表として出展しているんですよ。

PV Paris プルミエール・ヴィジョン

古川

おお、日本の地方産業がそこまでグローバルに活躍しているとは。

松下さん

今年はミラノの「イタリア・ミラノウニカ」にタケミクロスさん、パリの「フランス・プルミエールヴィジョン」に古橋織布さんが出展しました。

どちらも「HUIS.」の生地を織っていただいている会社さんです。

いずれも、出たいと思って出られるような展示会ではありません。こちらの展示会には、名だたるメゾンブランドのデザイナーさんやバイヤーさんが生地を買い付けにいらっしゃいます。

古川

遠州織物が世界的に評価されているのは昔からなんですか?

松下さん

そうです。最近注目が集まってきた、というわけではなく昔から。

こうした海外での展示会に遠州の機屋さんは以前から出展していて、世界最高峰の綿織物と言えば「遠州」ということは業界では普通に知られているんです。

MILANO UNICA ミラノ・ウニカ

古川

でもなぜ、遠州が世界から評価されるほど高品質な生地を生み出せる産地になり得たんでしょう?

松下さん

その理由は、遠州の歴史を紐解くとわかります。

遠州で繊維産業が栄えたわけ

松下さん

今年8月から、entranceの活動*の一環で、遠州のテキスタイルアイテムを集めたコンセプトショップを期間限定で「イオンモール浜松市野」のなかにオープンしました。

このイオンモール浜松市野は、近藤紡績という紡績工場の跡地なんです。

*遠州織物のプロジェクトチーム。機屋から染色加工、販売など、幅広い職種で遠州織物に関わる若手メンバーたち約30名を中心に、会社や業種の枠を超え横のつながりをつくることで、産地の活性化を目指している

古川

規模の大きさがうかがえますね。

松下さん

ここに紡績工場があったということをイメージしていただくと、遠州がいかに繊維産地として栄えた場所だったかを感じられるのではないでしょうか。

当時、浜松市にあった東洋紡績工場の様子

松下さん

かつて、浜松には「十大紡」と呼ばれた、日本の大きな紡績会社のすべてが存在していました。国内に繊維産地は多くあれど、十大紡すべてが工場を構えていた産地は遠州だけです

ちなみに、十大紡と呼ばれていた企業は以下のとおりです。かつての日本の大手紡績企業は、産業構造の転換にともない、今では他業種や他素材の生産に移行しています。今のカネボウ化粧品は、もともと鐘淵紡績。「クレラップ」で有名なクレハは、呉羽紡績の一部門が独立してできた会社です。

古川

これらが全部、浜松に集まっていた理由は何ですか?

松下さん

遠州は当時、自動織機メーカーが集積していた地域で、より品質の高い生地を織りたい、最高品質の生地を織るために織機を改良し続ける職人が多くいたからだと言われています

トヨタグループの元は「豊田自動織機」という織機を発明していた会社で、創設者の豊田佐吉は遠州の出身です。浜松に本社を構える自動車メーカーのスズキも、元は「鈴木式織機製作所」という会社。ホンダの本田宗一郎も浜松市の出身。エンジニアたちが集う発明の街だったのです。

そのため、遠州には日本の織物産業にまつわる高度な技術や人材が集まり、職人気質、今までにないものをつくりたいという機運も高まっていました。

古川

トヨタにスズキ、ホンダとは…名だたる企業ばかりですね。

松下さん

機織り機械の会社が、今の自動車メーカーに移り変わっていったということは、意外と知られていないですよね。

たとえばトヨタは、創業者の豊田佐吉氏が小幅力織機を発明したことから織機メーカーとして発展し、その動力機構を自動車のエンジンへと応用して、現在の世界的な自動車メーカーとなっています。

このように、当時の起業家精神やものづくり精神は確実に今の日本にも息づいています

古川

なるほど。そんな地域だったから、紡績企業が集まってきたんですね。

松下さん

昔から、アパレルにおける高級生地っていうのは基本的に「細い糸を高密度に織ったブロード生地」のことを指すんです。

つまり、紡績企業にとっては「いかに細い高級糸を生み出すか」が技術の見せ所で、各社が競い合って切磋琢磨していたわけなんですが、その生み出した細い糸も、織ることができなければ生地にならないわけです。

古川

良い糸をつくるだけでなく、それを生かせる織りの技術も必要ってことですね。

松下さん

はい。紡績企業にとって「糸づくりの力」を示すためには、高い機織りの技術が必要だったんです。

細い高級糸になるほど織るのは難しく、技術力が必要になります。さらに高密度に織るとなれば、なおさらです。そうした技術をもった機屋さんが集結していた地域が、遠州だったわけです。

古川

糸づくりだけでなく、織る技術も磨かれてきたんですね。

松下さん

紡績企業が高級な細い糸をつくる

機屋がその細い糸を高密度に織る

こうして生まれる最高級の生地が、日本の産業の技術力を示すものでもあったのです。

古川

日本の経済、工業発展の背景に、遠州の技術があったとは。

松下さん

いかに細い高級糸を生み出すか、そしてその糸をいかに素晴らしい生地に織り上げるか…

遠州織物は、かつての繊維産業に関わる職人たちの技術の結集です。そしてその歩みは、世界に誇る日本の高級生地が生産されてきた歴史なんです。

残念ながら、なかなか知られていないのが現状ですけどね。

松下さん

近代繊維業の発展の礎となる織機メーカーが集中していた遠州だからこそ、旧式の織機を操る職人技術も蓄積され、現在も細番手の高級糸を高密度に織った最高品質の生地がつくられています。

その高度な技術と職人志向は、現在の繊維業界においても浸透しています

「不完全ならではの価値」見直される手仕事の魅力

古川

以前、コーデュロイの製造工程を聞いた際も、工程が細かくてかなり手間がかかっていましたよね。

松下さん

そうですね。そもそも遠州織物は、一社ではつくることはできません

糸から生地になるまでその生産工程が分業化しているのが遠州産地の特徴なんです。

それぞれに独立している各工程の職人さんたちは、効率化や合理化よりも品質を重視し、すべて昔ながらの技術や設備を用いて生産されています。

古川

たとえば、どのぐらい細かいんでしょう?

松下さん

織物に関する部分だけでも、以下のような工程があります。

・糊付け(摩擦で切れないように糸の表面に糊を付ける)

・整経(規格に合わせて経糸の本数や長さをそろえる)

・経通し(織機で織るための各部品に手作業で糸を通す)

・織布(生地を織る)

・晒し(染色しやすいようにいちど真っ白にする)

・染色(発注の色に染める)

これらには、どれか一つでも欠けたら今のような生地づくりができなくなるという、「その人にしかできない、こだわりの技」があるんです。

古川

一社でやったほうが効率がいいですよね? まるで時代を逆行しているような…

松下さん

ほかの織物産地と比べても、遠州織物は昔ながらの貴重な道具や機械が多く残っているのが大きな特徴です。

効率を重視する製造方法とは真逆で、伝統的な機械を扱う職人の熟練した技術を必要とします。

こうした工程を一社ですべて担うとなると、どうしても企業理論として、だんだん効率化を求める方向に変容していってしまいがちなんですよね。そうならないよう、遠州産地はこだわりの職人たちの分業制にこだわってきた。

丁寧に手間ひまかけてできあがる生地は、ほかにはない優しい質感と、使うほどに馴染む独特の風合いの良さを持っています。

松下さん

今、“風合い”のお話をしましたが、「HUIS.」が生地を使わせていただいている古橋織布さんは、旧式の「シャトル織機」を使うことでその特別な風合いを生み出しています。

古い織機で織った生地は、ほかにはない着心地や風合いを生み出しますが、一方で織傷や綿の飛び込み、シワや染めムラといったものがどうしてもつきまといます

古川

手仕事ならではの味わいが出るんですね。

松下さん

そうですね。

ただ、一般的なアパレルの販売現場では「傷やシワがある生地」は売り物にならないとされてしまうのが普通です。

そのため広くアパレル業界では、大量生産のための高速化とともに、生地の欠点をなくすような最新機械が開発されてきました。

古川

個性よりも安定した品質を重視する流れになってますもんね…

松下さん

そのとおりなんです。

でも一方で、冒頭でご紹介した世界的な展示会に来るバイヤーさんたちの多くは、「私たちは“インパーフェクト(Imperfect)”なものを求めているんだ」と言われるんです。

ハイエンドな生地を求めるメゾンブランドほど、こうした本質的な生地の価値を理解してくれているんですね。

古川

インパーフェクト…不完全なということですか?

松下さん

僕はその言葉には、たくさんの意味が込められていると解釈しています。

人間の手を多く介するものだからこそ、不完全な部分を含んでいる。均一化された生地にはない、特別な価値を持っているということをよく理解されているのではないかと。

一般的なアパレルの販売現場で嫌われてしまう生地の傷というのは、旧式の織機だから生まれる、そして多くの職人たちの手が関わってるからこそ生まれるものであって、本来は大切にしたいと思えるはずの“個性”だと思うんです

松下さん

こうした話を聞いてもらうと、遠州の機屋さんたちが、海外の世界的な展示会に昔から出展してきたという理由がよくわかるのではないかと思います。

価値をわかってもらえる場所に赴き、そこできちんと評価されてきた。これは自然なことなのです。

遠州織物は、日本人にとって誇るべき大切な資産です。浜松の方だけでなく、日本のみなさんにも、もっと誇りに感じてもらいたいと思っています。

ぜひ手にとって、その風合いを感じてみてくださいね。

手仕事にしか生み出せない生地には、手仕事でしか伝えられない歴史とメッセージが込められているように感じました。

「HUIS.」の製品を手に取ると、その温もりと質感から、長年受け継がれてきた技術の深さを感じることができるはず。気になる方は、ぜひ実際に体感してみてください。

〈執筆=吉河未布/編集=古川裕子〉

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