企業インタビュー
「発信の初期はこれ。むしろこれしかやっちゃダメ」バディカ中野の“SNSを経営に活かす”手法
新連載「メディ活アワード」
新R25編集部
あなたの企業は、「メディ活」できてますか?
企業からの情報が消費者に届きにくくなっている時代に、“企業発信”も変革する必要があるはず。「メディアから取材されたらラッキー」 「取り上げられて終わり」のような受け身ではなく、能動的にメディアを活用し、掲載事例を事業成長につなげていくべきなのかも…。
新R25の新連載「メディ活アワード」では、メディアを活用したアクティブ企業発信「メディ活」を取り上げ、企業発信のありかたをアップデートしていきます。
今回は、株式会社BUDDICA | BUDDICA • DIRECT株式会社の代表取締役・中野優作さんに、お話を聞いてきました。
大手中古車販売会社に約9年勤めたのち、2017年に株式会社BUDDICAを設立。今や中野さんのYouTubeや著書などが大人気で、先日発表した“車の通販”サービス、BUDDICA • DIRECTも話題となりました。
「広告宣伝費にお金をかけない」をモットーに、SNSを最大限に活用して業績を伸ばしてきた中野さんに、そのメディ活戦略を聞いてきました。
〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉
中野さんの“メディ活”第一歩は?
宮内
バディカといえば、今SNS上でかなり注目を集めてますよね。初期から、発信には力を入れてたんですか?
中野さん
いや、2017年に会社を設立して、YouTubeは2022年9月から始めたんですけど、最初は全然知見がなかったんで、2カ月くらい様子を見てたんですよ。
そうしたら「どうも企業チャンネルは回らないぞ」と気づいて。
最初は「BUDDICA」としてやろうと思ってたんですけど、「中野優作」でスタートすることにしました。
宮内
個人のバイネームで。大きな決断ですね。
中野さん
そう。それで次に、僕自身を出すとしたら、“どこ”を切り取るのが世のなかに対して価値がデカいのか。
そこを、すごく考えましたね。
中野さん
みんな自分の商品を宣伝したがるんですけど、僕は1回もうちの車を出したことない。
あえて、やらない。
宮内
あえて…では、なにを発信しようと?
中野さん
お客さまと話しているときに一番キラキラしてくれる、「それマジ?」という話を、僕のリズムでひたすら話して、出したんです。
たとえば「車屋さんって何乗ってんの?」って、めっちゃ気になりません?
宮内
気になります!
中野さん
でしょ?それを発信してる人が、じつはいなかったんですよね。
ちなみに僕は、愛車を出して“新車”を勧めるところから始めました。「新車を買ったほうがいいよ」 「ローンは銀行で組んだほうがいいよ」とか。
宮内
え、新車? 中古車販売の社長なのにいいんですか?
中野さん
そう、意図的に。借り物の言葉じゃなくて自分の言葉で話す。
初期は絶対、これです。むしろ、これしかやっちゃいけない。
みんなできあがった人気動画を見すぎて「こんなのがウケるんでしょ?」って、同じことをやっちゃうんですよ。
似たようなフォーマット、似たような言葉…それは絶対バレるので。
宮内
新R25もYouTubeチャンネルの企画で四苦八苦したので耳が痛い…
中野さん
だから、「自分が信じてる情報」が一番いいんです。
僕はフォロワー20万人まで「忖度なしの車屋社長」という肩書きを使って、「営業マンが自分では付けないオプションシリーズ」とか、「車屋の社員駐車場には何が止まっているのか」とかの内容を上げてました。
それがそのまま信用につながるし、なにより面白いから。
宮内
たしかに、どれも知りたい内容…「車屋社長」×「忖度なし」で情報価値も高そうです。
中野さん
まず極限まで自分の領域でつけられるマイクロの肩書きをつける。そして領域内での価値ある情報を発信していく、というのが大事ってことですね。
これは、新R25と縁の深い箕輪厚介さんに教えてもらったことなんですけど、「インフォメーション→オピニオン→ダイアリー」の順で進めました。
たぶん、教えの源流はけんすうさん。
フォロワーの少ない、何者かもわからないヤツの「ランチなう」いらないよ、って話です。
間違いない。いらないです
宮内
そういえば、中野さんが発信され始めた当初、「すごい有益な車情報を投稿している、何者かわからないインフルエンサーがいる」と話題になりましたよね。
…もしかして、狙ってました?
中野さん
そうです。
フォロワーが少ないうちに自己開示しすぎると、視聴者が冷めちゃうんですよね。「新しく世界を変える!」とか言っても、「いやいやフォロワー100人やん」って。
だから自分主語の発信は、1万人を超えるまでは封印しました。
フォロワーをつくるために、“退路を断つ”。こんな泥臭いことまでしていたとは…
宮内
ちなみに、反応がなくて心が折れたりとかは?
中野さん
YouTubeは別のゲームだけど、Xは明確にフォロワーを増やすコツがあると思っていて…
あれは、ナンパと同じです。一人ひとりめくっていくしかない。
宮内
めくっていく…?
中野さん
ひとりずつフォロワーを増やすために、反応をくれた方にとにかく絡みに行く。
「いいね」とリプライは、1万人ぐらいまでは全員に返してました。
YouTubeも登録数20万人までは全件返答しています。300件ぐらいやってましたね。
宮内
え、スタッフじゃなくて、中野さん自ら!?
泥臭すぎ
中野さん
最近はさすがに、両方で4、500件ぐらい来てパンクしましたけど…でも必ず全部見てます。
もしフォローしていただいたら、その人のまわりにも届くので。コミュニティを作っていくのが大事なんです。
宮内
中野さんでも、そんな泥臭いことするんですね。
中野さん
営業なので。絶対「いいね」押します。
僕はいいねかブロックしかしない(笑)。
宮内
それってすごい時間を取られるんじゃないですか?
中野さん
1日2時間ぐらいかな。朝起きたときに、すべてのSNSの確認が終わるまでベッドから出ない、というルーティンにしてるんです。
全部のリアクションをして、やっとベッドから出られる、それで1日の業務が始まる。夜も全部リセットして0にならないと、寝ない。
“退路を断つ”のは大事ですから。
バイネームで車が売れる。給料に還元できるSNS戦略
宮内
SNSでのメディ活が“事業に跳ね返ってきた”と感じたのはいつごろなんですか?
中野さん
YouTubeで初投稿したのが2022年9月で、12月には登録数が約3万人になりました。
Xは、フォロワー2〜3,000人くらい。
そのころには「売れてきたな」と。毎月右肩上がりに何台も売れるようになりました。
宮内
じゃあ3カ月ぐらいで…? その時点で費用対効果はかなり高そうです。
中野さん
社員もXで個人アカウントから発信をしていて、X経由で車が売れることもあって、かなり恩恵を受けています。
強制ではないので、やっている人とやっていない人がいて、毎日発信しているのはそのうちの1、2割。あとは週1回くらいの発信ですが…
宮内
それでも効果があると。
中野さん
そうなんです。
何がいいかというと、「BUDDICAで車が買いたい」となったとき、じゃあ次に“誰から買うか”を選べること。
過去の投稿を見れば大体人となりがわかる。好みの営業を探せるんですよ。
宮内
たしかに、車とか、家とか、大きな買い物をするときは、「誰から買うか」も結構重要なポイントかも…
中野さん
一番ミスマッチが少ないんですよね。
多い人ではSNS経由で月3、4台。それ以上の人もいます。
だからこそ「この人から買いたくない」と思われるような投稿はやめようね、という話をしています。スナックで飲んだくれてる写真とかは、プライベートのアカウントでやろう、と。
宮内
リスク回避のために?
中野さん
うーん、でも「僕は絶対炎上するからね」って社員に言ってるんです。
炎上は、あまりリスクとは考えてなくて。
宮内
え、いいんですか?
中野さん
炎上するってことは、世間が合っていて、僕が間違っているってこと。
「タダで監視してくれるんだからよくね?」って。炎上は僕にとっては辛いけど、BUDDICAにとってはいいことだ、と。
もちろん、炎上したいわけではないので気を遣っていますけど、そういう風に決めてるので、リスクじゃないんじゃないかと。
宮内
なるほど!
そう考えると、SNSで事業が伸びるって、すごく夢がありますね!
中野さん
採用もそうです。
僕らみたいな社員70人くらいのベンチャーで、毎日エントリーがくるなんて、普通に考えて無理じゃないですか。
すごいお金かけて採用活動をしている企業もあるなかで、僕ら0円でやってますから。
宮内
じゃあ、SNSを活用したメディ活で、事業も採用もすべてが加速したと。
中野さん
そうです。YouTubeではお金をもらいながらね。
その分、社員みんなの給料に還元できますから。
「“自分の売り物”を自分で語っちゃダメ」。企業発信の真価とは
中野さん
そういえば、新R25の『企業インタビュー』で、新規事業を紹介させてもらった記事がランキング1位になったみたいで…うれしいですね。
宮内
今1位ですね。記事にまとめさせていただきましたけど、どうでしたか?
中野さん
めちゃくちゃ楽でよかったですね。
記者会見の動画が40分ぐらいあったんですが、それをまとめてもらった『企業インタビュー』の記事は5分ぐらいで読めちゃって。まとまっているんですよね。
内容を削るのってけっこう大変じゃないですか。
でも、僕はURL投げて修正ボタン押すだけでできたので、制作に関わった時間が多分5分ぐらいなんですよ。
メディアとして拡散性もでかいし、そこも考えるとシンプルにいいなって思いました。
宮内
「箕輪さんが企業インタビューを使われていたときの記事で見た」とおっしゃってたのですが、そのときはどんな点がいいなと思っていただいてたんですか?
中野さん
「10万円って、安!!」って思いましたよ。
あとは、“自分の売り物”を自分で語っちゃダメなんですよ。基本的には“聞かれて答える”かたちじゃないと。
だから、『新R25』の編集者の人たちが質問してくれて、「どこを出すべきか」っていう編集をやってくれるっていうのが、“コンサル”的な視点も入ってるのでいいですよね。
宮内
サムネイルとかタイトルに我々編集部がつけたキャッチコピーが入ってくるんですけど、そこにも価値を感じてくださってる方も多かったりして。
取り上げる会社の色が出せるような作り方をしてるっていうのがポイントかもしれないですね。
『新R25』が、バックグラウンドとしては「SNSで話題になる記事」を作ってきた背景があるので、読まれやすいものを作れているんじゃないかと。
最初の印象でアテンションを取る…というところはこだわってやってきたメディアなので、そこはお任せいただければなと考えています。
中野さん
なるほど。絶対そうっすね。
2022年の初投稿から、またたく間にSNSを席巻した中野さん。
その裏には、研究を重ね、綿密に練られた戦略がありました。
独りよがりではなく、何が求められ、何が事業につながるのか…。企業発信を考えるベンチャーの方は、ぜひ一度考えてみてください。
連載「メディ活アワード」では、これからも、アクティブな企業発信を事業につなげている人々を取材していきます!乞うご期待。
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