企業インタビュー
シリーズ累計2,000万個!ガチャガチャ界の革命「コップのフチ子」制作者が語る、ヒット商品の生み出し方
キンケシ、フチ子に次ぐ“ガチャガチャスター”は、デジタルネイティブ世代にかかっている?
新R25編集部
「あれ? 以前あったお店が、ガチャガチャ専門店に変わってる…」
そんな経験をしたことがある人、多いのでは?
日本カプセルトイ協会によると、2023年度の市場規模(製造出荷ベース)は約1,150億円で、前年の720億円から60%も増加しているという、拡大著しい市場なのだとか。
そこで「企業トピ」にて展開する「新R25書籍トピックス局」では、小野尾勝彦さん著『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)に注目。
ビジネス視点から考える、ガチャガチャの魅力とは…?
〈聞き手=鳥山可南子(新R25編集部)〉
※以下、『ガチャガチャの経済学』(小野尾勝彦)より
フロントランナーに聞く、ガチャガチャビジネスで成功する方法
現在のガチャガチャ業界は、バンダイとタカラトミーアーツというツートップに対し、多くの中小メーカーが独創的な商品で挑むという図式になっています。
その源流をつくったのが、2012年にリリースされて現在までにシリーズ累計2,000万個という、ガチャガチャ業界史に残るエポックメイキングとなった「コップのフチ子」です。
同社代表の古屋さんに経営スタイルおよび業界の今後の見通しを聞いてみました。
1975年埼玉県生まれ。株式会社ユージン(現タカラトミーアーツ)でカプセルトイを学び、2006年に独立して株式会社奇譚クラブを設立。他社に負けない独創的なアイデアとクオリティで次々とヒット商品を手がけている。
シリーズ累計2,000万個「コップのフチ子」生みの親が語るガチャガチャビジネスの未来
「売上目標はつくらない」
小野尾さん
奇譚クラブは今年(2024年)で創立何周年になりますか。
古屋さん
2006年創立ですから18年目です。あと数年で20年ですね。
小野尾さん
「奇譚クラブは売上を気にしていない」と、以前メディアのインタビューでよくおっしゃっていましたが、それは今でも変わりませんか。
古屋さん
売上目標がないのは変わらないですね。
小野尾さん
普通の会社は売上目標を立てるじゃないですか。それはしないんですか。
古屋さん
うちの目標が1つあるとしたら、毎月運転するために必要な資金3,000万円を確実に稼ぐことくらいですね。
運転資金だけキープしておくという自転車操業を18年間続けています。
ショールームに展示されている数々のヒット作。「どこにも無いアイデアとクオリティをモットーに愛のあるモノづくりをする。」が共通する価値観
小野尾さん
それで困ったことはない?
古屋さん
私なりのロジックは一応あるんです。
その年の売上の背骨となる手堅いアイテムを1年間の中に何個か仕込んでおきます。その上で、来年以降の稼ぎ頭となる新しくて面白いアイテムを仕込んでいくわけです。
小野尾さん
現在の売上はどのぐらいですか?
古屋さん
30億円前後ですね。今年はライセンスものですが「ちいかわ」が好調でした。
第二、第三の「フチ子」はどこから生まれる?
小野尾さん
奇譚クラブさんといえば、漫画家のタナカカツキさんと組んで2012年にリリースした「コップのフチ子」がシリーズ累計2,000万個というメガヒットとなり、現在のオリジナルガチャガチャ隆盛の基盤となり、同時に新興のメーカーが増えるきっかけともなりました。
今ガチャガチャメーカーは50社近くまで増えましたが、先達として現在の状況をどう思われますか。
古屋さん
メーカー間の競争はシビアになっていますが、消費者にとっては商品のバリエーションが増えて、さらに楽しいガチャガチャの世界が広がっているのではないでしょうか。
特に最近見ていて感じるのは、「フチ子」で育った若いクリエイターたちが現在メーカー各社でユニークな企画をしていることですね。
以前はキャラクターのパワーに頼っていたり、他社のパクリみたいな商品が散見されましたが、目新しいものが増えてきたように思う。まだまだパクリも多いですが…
最大のヒット作「コップのフチ子」。「どうすれば売れるか」よりも「どうすれば面白がってもらえるか」を考えたという
小野尾さん
確かに各社の最近の商品は、どこもそれぞれの特徴が出てきたと思います。
古屋さん
「フチ子」は12年前に我々が生み出したけど、若い世代のクリエイターが第二、第三の「フチ子」みたいなものを生んでくれたら嬉しいですね。
そうすると、こちらも刺激を受けますから。
SNSのつながりから新たなスターが誕生する
小野尾さん
これからガチャガチャ業界に参入したい人や企業に対して、メーカーの立場からのアドバイスはありますか。
古屋さん
基本的にそんなに大きくは儲からないと思ったほうがいいです(笑)。
小野尾さん
でも奇譚クラブさんは儲かっているわけじゃないですか。どういうふうにしたら儲けられるかを多分みんな知りたいと思います。
古屋さん
一番簡単な方法は、メジャーなキャラクターのライセンスを押さえることですが、これは歴史の浅い新規参入会社にとってはなかなか高いハードルです。
一方、オリジナルは素人が考えたキャラクターがSNSを通じていきなりバズるかもしれない可能性を秘めています。
そういった意味では、まだ誰も知らない「ダイヤの原石」とも言える人材をいち早くキャッチすることができれば、成功できる可能性はあります。
もちろん、その原石を花開かせられるかどうかは、メーカーのプロデューサーの腕次第ですが、新しいウェーブがいつ、どこから生まれてくるのか楽しみではありますね。
私が期待しているのは、それまで素人同然の、一方は絵が上手で、もう一方はプロデュース力に長けている二人組が、何かのきっかけでSNS上で知り合って、我々の世代が感知しないようなところからブームをつくって、ガチャガチャはもちろんキャラクター業界全体をかき回すようなことになることです。
そうなったらめちゃくちゃ面白いですね。
小野尾さん
やっぱりSNSがガチャガチャに与えた影響は大きいですよね。「コップのフチ子」もSNSで火がつきましたから。
では、第二、第三の「フチ子」もSNSで生まれるかもしれませんね。
古屋さん
その可能性はあります。
ただ、それは本当に奇跡だと思います。簡単にできるのだったら、第二、第三の「フチ子」がとっくに生まれていいはずです。
だって、「キンケシ(キン肉マン消しゴム)」が流行った後、「フチ子」が出るまでに30年近くが経っているわけで、確率的には奇跡だと思うんです。
だから、第二、第三の「フチ子」を自分たちでつくろうという気構えでは、かえって生まれないだろうと思う。
小野尾さん
もっと若い世代の中から、面白いものが生まれるというわけですね。
古屋さん
そう。今会社にいるメンバーというよりも、これから新しく入ってくる社員がそういうものを生むのではないかと思います。
小野尾さん
テレビを観ずにSNSだけで生きているような世代だから、今までとはまた違うユニークなものが出てきそうですよね。
古屋さん
彼らにはデジタルが最初からあるわけで、生きていくための下地が我々とは全然違いますからね。
デジタルでガチャガチャはどう変わる?
小野尾さん
ガチャガチャ業界にとって、キャッシュレスなどのデジタルも別の意味で新たな可能性を秘めていると思われますが、古屋さんはどのように見ていらっしゃいますか。
古屋さん
デジタルはものすごい可能性を秘めていると思います。
現在はリアルなモノを買うことが大前提となっていますが、デジタルコンテンツを買うことができるようになれば、音楽でも、アニメーション、コント、アートでもなんでも販売することができるようになる。
しかもスマホさえあれば、そこで完結する。そこがポイントだと思います。
小野尾さん
なるほど、色々な可能性がありそうですね。
だけど、ガチャガチャへの応用には色々とハードルがありそうな気がします。
古屋さん
ベースとなる仮想通貨やNFT(非代替トークン。ブロックチェーン技術を活用した偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのこと)自体がまだ一般的ではないですよね。
これがある程度普及してもっと簡単にいろんなことができるようにならないと、コストが合わず、現実のビジネスにはあまり広がらない気がします。
小野尾さん
私たちの世代にデジタルは今ひとつピンとこないですが、若い世代はこれまでのガチャガチャの座組みにとらわれないので、すごいものが出てくるかもしれませんね。
古屋さん
「フチ子」の発売当時10歳だった子どもが今年は就職しようとしています。
だからこの先、10年は面白くなると思いますね。
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